#75 再会
「お父様ッ」
「済まなかった、リア……」
リアが将軍と共に王都に着いたのはそれから一週間後。リアは王の顔を見るなり、まるで子どものように抱きつき、泣きじゃくった。
(こちらのことは知らせてあったが、不安だったんだろうな……)
無理もない。危篤と聞いた父を助けた直後に訪れた突然の別れ……いくら気丈なリアでも限界だろう。
「うっ……あああッ!」
「……心配をかけたな」
「お父様の馬鹿ッ! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ッ!」
当分終わりそうにない嗚咽を聞きながら、俺達はそっと部屋を出た。
「リアは王にもっと怒るかと思ったが……」
「いや、あれは大分怒ってるよ」
クレアの言葉に俺はそう答える。リアが父親──しかも国王に向かって“馬鹿“なんて言うとは想像もしなかったよ。
「私達、最初からいない方が良かったかな」
「それじゃ王がリアに怒られるところが見られぬではないか」
サラが呟くとクレアがそう言って口を尖らせる。悪気はないんだろうが……
「いや、最初から二人だったら帰って思いっきり泣けなかったかもしれない」
確信はない。が、優しいリアのことだ。俺達があの場にいなければ無事を確認したがったに違いない。多分、リアは“もう大丈夫”、”もう終わったんだ“と思えたから泣けたんだ……
「……シデンはリアのことよく分かってるんだね」
「?」
意味がよく分からずサラの方を向くが、返事はない。どうしたんだろう……
「ふむ。新たな火種……じゃな」
「どう言う意味だ?」
問い返すが、可笑しそうにニヤニヤするだけでこちらも答えない。
(いつも通り……ってことはもう元気なのかな)
サラからは心配ないと聞いていたが、あの黒い竜との戦いではクレアにも相当な負荷がかかったはずだからな……
「クレア、体調は大丈夫そうだな」
「ありがとうなのじゃ。シデンも大丈夫そうじゃな」
龍と化したクレアの背に乗って戦っていた時には感覚を共有していたが、今はそうではないから相手のことを知るにはこうして言葉にしなくてはならない。まあ、これが当たり前なんだけど……
(……不思議な体験だったな)
そう言えば、最後の一撃ではクレアの角から剣のような光が出ていたな。あれは何だったんだろう。
「クレア、これって……」
「ああ。龍の角は折った相手と妾を繋ぐ力があるのじゃ。今まではそのままじゃったが……いつも身につけるものに加工するのも良いかもしれんの」
そ、そんな力があったのか……
「クレアの角にはそんな力があったなんて……そう言えば、何千年も生きた竜の角には個体ごとに特別な魔力が宿ることがあるって聞いたことがあったけど」
「ほう……まさかそのことを知っている人間がまだいたとはの」
サラのつぶやきを聞いてクレアが感心した声を上げる。サラにそのことを教えたのはエリザベスばあちゃんだろう。エリザベスばあちゃんは本当に物知りだからな……
「とりあえず他の人には黙っておくね」
「まあ、その方が良いじゃろうな。何せその話を知った人間達が角を狩ろうとして竜の怒りを買ったことがあったからの」
げっ、それって結局どうなったんだろう。知りたいような、知りたくないような……
「まっ、とにかく将軍に会いに行くのじゃ。夜は宴じゃと聞いたが、きっともう始めておるじゃろ!」
そう言うと、クレアは俺とサラの背中を押した。
*
(イタタタ……)
昼から次の日の朝まで続く宴会のおかげで俺は二日酔いで痛む頭に悩みながら、軍議で将軍の部下の報告を聞く羽目になった。
(ってか、将軍は平気な顔してる! 俺以上に飲んでたのに……)
絶対おかしい。ってか、他の騎士達も平然としてるのも納得いかないな……
「王都を占拠していたゲパルト第三王子は既に幽閉しましたが、リア様やシデン隊長が会ったという魔道士は行方不明です」
「ううむ……空間転移の魔法を使うのだったな。簡単には捕らえらないか」
将軍が唸るのも無理はない。今回の黒幕は間違いなく奴だ。これじゃ、”試合に勝って勝負に負けた“って奴だな。
「ならシデンが捕らえた黒い兜の騎士から色々聞き出すしかないな……だが、まだ意識が戻らないという話だったな」
「はい。治療は今も施していますが」
だが、意識を取り戻したとしてアイツが素直に話してくれるかどうか……というか、アイツそもそも何か知ってるのかな?
「た、大変ですッ!」
「どうした、騒々しい!」
慌てた様子で天幕に入って来た兵士を騎士が叱る。が、あの様子……ただ事じゃないな。
「例の囚人が……黒い兜の騎士が消えました!」
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




