#54 決闘
とにかくその場を収めた俺はクレアと共に皆を追いかけた。俺達が森で過ごしていた間も軍勢はバンラック要塞へと進軍中だからな。
(もうちょっとで追いつきそうだな)
そう思ったその時、俺は妙な雰囲気になっていることに気がついた。
(一体何だ?)
騒がしいというか、浮足立ってるというか……
「ふむ。何だが賑やかじゃな」
隣で走るクレアが楽しそうな声を出すが……いやいや、絶対厄介なことが起こったんだって!
(とにかく急ぐか)
留守はサラやヘンリエッタさんに任せてあるとはいえ、もしかしたら隊長の俺がしなきゃいけないことがあるかも知れないしな!
*
カートレット将軍の天幕へ帰還の報告をしに行くと、何とそこは軍議の真っ最中だった。
「あ、シデンお帰り」
サラがそう声をかけてくれるがいつもとは違い、少し思い詰めた感じだ。何かあったのだろうか。
「戻ったか。そちらの話も聞きたいが、まずはこちらの話を聞いてくれるか?」
「はい。一体何が……」
「実は……」
カートレット将軍の部下の騎士によれば、何とプラシドがサラに決闘を申し込んで来たらしいのだ。
(決闘って……何でだ?)
何でも自分の部下がサラの才能と技術にメロメロになっているのが許せないらしい。とんだとばっちりだが、こんな馬鹿げた話を無視できない理由があるらしい。
(勝てば魔導砲を自由に使える……か)
実は既にサラは魔導砲の仕組みを完全に理解しており、実は若干のカスタマイズさえしてある。どうも彼女はバンラック要塞の攻略に役立てるつもりをしているようなのだが……
(俺に勝たないと魔導砲は使わせないだって!?)
この魔導砲は本来ヴェルナール家の秘宝とも言える魔道具であり、その使用については自分達の許可がいるとプラシドは主張しているらしいのだ。
(プラシドは今捕虜なんだけどな……)
俺が考えた通り、実際にはこう言う状況の場合、こんな主張が通ることはないらしい。が、ヴェルナール家はあまりに大家であること、これから第三王子派と争わなければならないことを考えると穏便に出来ればそれに越したことはない……という状況らしい。
(けど、だからと言ってサラが決闘するなんて……)
サラは俺と一緒にリアを助けるためにここにいるが、兵士でも戦士でもない。それに……
「確かにヴェルナール家は敵に回したくない相手です。が、そのためにサラ殿の身を危険に晒すのは反対です!」
「そうです! 大体年端もいかない少女に大の男が決闘を申し込むなど言語道断の蛮行! 我らの手で根性を叩き直してやるべきです!」
目を瞑るカートレット将軍の前でああでもないこうでもないと議論をかわす部下の騎士達。だが、そのほとんどはプラシドの主張を否定するものだ。
(どうしたものかな……)
サラに決闘なんてさせる訳には行かない。が、このままプラシドを無視する訳にも行かないか……
*
という訳で俺はプラシドに会いに行った。
「き、貴様は!」
俺の顔を見るなり、プラシドは恐怖半分、憎しみ半分といった表情を浮かべた。まあ、魔導砲については俺が破ったように見えるだろうから無理もないが。
「一度勝ったくらいでいい気になるなよ! 我がヴェルナール家には長い栄光の歴史があるのだ!」
プラシドがツバを飛ばしながら力説する。口を挟むことさえ出来ない勢いだ。
「良いか、よく覚えておけ! お前のような田舎剣士がまぐれ勝ちしたところで我らの優位は変わらないのだ!」
いやまあ、確かに一度勝ったからといって次も勝てるとは言えないよな。
(それに俺が田舎ものであるのも事実だし)
つまり、プラシドは自分の技に凄く自信があるんだな。まあ、悪いことではないな。
(あ、なら……)
俺はふと妙案を思いついた。
「確かに勝負は時の運って言うしな。次やれば負けるのは俺かもな」
「当たり前だ! 次にやれば勝つのは俺だ! 貴様の剣技などただのまやかし! 貴様の技など田舎でしか通じないのだ!」
よしよし。乗ってきた……
「なら、勝負してみよう。それなら勝ち負けがハッキリするだろ?」
「いいだろう。身の程を思い知らせてやる!」
プラシドが目をギラつかせる。よしよし、これで……
「俺が負ければお前の魔法の方が優れていることを認める。負けたら……」
「負けはせん! だが、万が一そんなことがあれば何でも言うことを聞いてやるわ!」
よし!
「だが、改めて言っておくぞ! お前のいた田舎で生まれたものなど何の価値もない! お前の剣も、あの小娘の魔道具もどきもな! それをこの一戦で証明してやる!」
何かムカつく物言いだが、まあ良い。勝って証明してやれば良いんだからな。
(とにかくこれでサラが戦う必要はなくなったよな)
俺がそう思った瞬間、サラが俺達がいた天幕に入って来た!
「待って! その勝負私が受けるわ!」
サラ!?
「黙って聞いていれば、私だけでなくシデンのことまで馬鹿にして! 絶対に許さないんだから!」
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




