#53 同調
「という訳でシデン行くぞ!」
軍議の後、どう言う訳か俺はクレアとピクニックに行くことになった。
(これが例の“心を同調させる”ために必要なことなのか?)
クレアの口から出たのは、前に彼女が言っていた竜騎士計画(?)だった。
(確かに空を飛べば城壁を越えられるかも知れないが……)
俺一人が飛んでどうするのかと思ったが、クレアに岩を落としてもらったり、皆を壁の向こうに降ろしたりとやれることは色々あるらしい。だが……
(龍の姿に戻ると思考が龍に近くなる……つまり、俺達の思い通りに動いてくれるかどうか分からなくなるって言ってたな)
体が変われば心も変わる。クレア曰く、俺への態度は変わらないだろうが、それ以外の人間に対しては分からないとのことだった。
(で、心を同調させる必要があるってことか)
つまり、クレアと心が繋がっていれば、龍の姿をしていても人の姿の時の心を保ってられるという理屈らしい。
(で、ピクニック……なのか?)
ここからが俺にはよく分からない。が、ピクニックと言ってもこの森に住む魔物の生息調査も兼ねているから完全に遊びという訳でもないが……
「ふむ……あまり大した奴はおらんみたいじゃな」
「どんな魔物がいるのか分かるのか?」
「妾が縄張りに入った時の怯え具合で何となく……という感じじゃ」
そう言うとクレアはその“何となく”から分かった魔物の強さや種類を教えてくれた。
(狙い目はホーンラビットやグリーンディア、ハミングバード辺りかな……)
当たり前だが、どんな魔物でも魔物食に向いている訳じゃない。しかも、今は辺境の頃とは違って量もいるから食べれる部位の量や下処理にかかる手間等を考える必要がある。その辺りを考えると、さっき挙げた奴らが候補になるだろう。
(……って言ってもエリザベス婆ちゃんから教わっただけで見たことはないけどな)
辺境には基本最上位種の魔物しかいないと婆ちゃんは言っていた。同じ種類の魔物でも下位種か上位種かで強さは勿論、姿も違う。が、この辺りの知識は解体のために教わっていたため、クレアの話を聞いて当たりをつけられるのだ。
「それにしても、流石古龍だよな。縄張りに入っただけで魔物が怯えるなんて」
俺がそう言うと、クレアは得意気に鼻を鳴らした。
「ふふふんっ! じゃろ? まあ、この姿じゃと発揮できる力が限られてる分、魔物共に与えるプレッシャーも弱まってはおるがの」
「じゃあ、元の姿ならどうなってたんだ?」
「森から魔物が消えているな。ダラク山脈でも魔物は街道や砦には出なかったはずじゃ。妾の縄張りじゃと知っておったはずじゃからな」
そうなのか。俺が出会ったダラクウルフは何か──多分怒っているクレア──から逃げている最中だったからな。例外中の例外なんだろう。
(それにしてもさすが古龍だな……)
近くに来ただけで魔物が逃げ出すなんて聞いたことさえないよ。それだけクレアの存在感が大きいってことだな。
「クレアはダラク山脈ではどんな生活をしてたんだ?」
「ん? なんじゃ急に?」
「いや、そう言えば聞いたことなかったからさ」
俺は今までクレアのことを知ったつもりになっていたけど、それはあくまでも人化した彼女の一面だけ。龍としてのクレアのことはほとんど理解出来てないことに今更ながら気付かされたよ。
「そうじゃなあ。例えば……」
クレアが語るいつもの生活に俺はしばらく静かに……しかし、内心びっくりしながら耳を傾けた。
*
「そろそろ帰る時間じゃなの」
「ああ」
獲った魔物と持ってきた携帯食を昼食にしてしばらくすると、いい時間になってきた。そろそろ出発しないと晩までにカートレット将軍達に合流出来なくなってしまう。
(成果は上々だな!)
クレアのおかげでこの森のことはよく分かった。バンラック要塞までには同じような森がいくつかあるなら魔物の肉を補充しながら行軍できるな。
「では、最後に今日の成果を確認するかの」
「成果……?」
俺が首を傾げると、クレアは突然上着を脱ぎ、なんと俺の前で四つん這いになった!
「さ、乗ってみるのじゃ」
「は?」
乗るって……?
「いきなり龍の姿で試すわけにはいくまい? まずは予行練習じゃ。上手く行けば人化を少しづつ解いていくのじゃ」
お、おおっ……そう言うことか。
(でも……良いのか、これ?)
理屈は合ってる。だが、何だが絵的にヤバい気がするんだが……
「そうか! 服じゃな?」
は……?
「確かに龍の時には服を着ておらん! 服があっては予行練習にならんということじゃな?」
「違っ……って、やめろ、クレアぁぁぁ!」
相手を理解するって難しいもんだな……
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