#5 〈みえないもん!〉
「ま、待って下さい! やはり、危ないのでは?」
リアは要塞を前に心配してくれてるみたいだ。けど……
「リア、説明したと思うけど私達はここを通してもらえないの」
俺は罪人ってこともあるが、この要塞は王国への侵入を防ぐためのもの。はなから入国させる気はないのだ。
(この先には獣人の国があるだけだし、オズワルド王国としては向こう側には国に入れたくないものばかりだよな)
獣人達には悪いが、王国にとっては魔物にしても獣人にしても入ってきて欲しくないという点においては同じなのだ。
「なら、私の名前で……」
「それも止めたほうが良いって婆ちゃんが言ってたぞ」
リアの命令なら要塞が開く可能性はあるだろう。だが、その場合、リアが生きていることが分かってしまう。すると、さらなる追手がかかるだろう。
(とにかくカートレット将軍のところへ行くまでは生死不明にしとかないとな)
という訳でこの要塞はぶっ潰して進まなくてはならない訳だが……
「ぶっ潰すといっても半ば力ずくで通るってだけさ。別に本気で壊すつもりじゃないから」
まあ、自分達を鼓舞するために強い言葉を使ってるのだ。何せ要塞に詰めてる兵士は千を超えるんだしな……
「分かりました。私も頑張ります!」
そう言うとリアは腰の剣に僅かに触れた。リア自身もかなりの剣士だ。いざとなれば頼るのもありかもしれない。
「で、どうする? まずはアレだよな。それから……」
「まあまあ、シデン。私に説明させてよ」
俺の言葉にサラは片目をつぶって答えた。
※
「こ、こんな道具が……」
砦の近くでサラが取り出したのは”みえないもん!“という便利グッズだ。被ると姿我透明になるこの道具で砦に近づこうというのだが……
(流石に狭いな)
元々一人用のマントに三人も入ってるんだから当たり前だ。しかも、やたら密着しなきゃいけないので、何かこう……気を使う。
“シデン、もっと近づいて”
サラにそう注意を受けるが……参ったな
(そりゃ、こんな時に変なことを考える俺が悪いんだろうけど……)
俺だっていい年だから、妹みたいに思っているサラや別世界の美少女リアにあれこれ考えることはない。だか、弁解させて貰えれば……本当に距離が近いのだ。
(兵士達は高い場所から見てるから上から俺達の姿が見えなければいい……とはいえ、元は一人用だもんな)
この道具はここに来てまだ間もない頃、異常に感覚が鋭いミストディアという鹿のような魔物を狩るのに苦戦していた時にサラが作ってくれたのだ……って今はそんな話はどうでもいい
(というか、リアもくっつき過ぎじゃ……)
今、俺が腕を掲げて持っている“みえないもん!”にリアとサラが俺の体にくっつきつつ入っているのだが、色々遠慮したり、申し訳なく思っている俺に対して二人からはあまり躊躇を感じない。
(とにかく無心でいくしかないな)
そうだ、それだ! 素振りの時のようなメンタルになれば良いんだ! よし、それなら……
※
(サラ視点)
(効果あったかな……)
途中からシデンが何の反応もしなくなったからよく分からない。
(女の子として意識して貰うためについてきたんだもん、頑張らなきゃ!)
辺境では三人で協力して生きてきたからその関係性は家族に近い。そのせいもあってか、シデンは私を妹みたいにしか見てくれないのだ。
(でも、別の場所に行けば……)
単純な考えかもしれない。けど、エリザベス婆ちゃんも“色んな場所へ行って色んな顔のシデンを見て来い”って言ってくれた。辺境での生活は嫌いじゃないけど、確かに過酷で余裕はない。
(……! 要塞の入口が近づいてきた)
何はともあれシデンの役に立たないと! 私がシデンの隣に立つのに相応しい力を持っているところを見てもらわないとね!
(よし、頑張るぞ!)
シデン「………」
サラ (効果ないのかな……もっとくっついで……)
シデン「……(心を閉じすぎて既に意識がない)」
こんなことになっているとかいないとか(笑)
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