#44 魔導砲
(シデン達に遠距離魔法攻撃を仕掛けた魔法使い視点)
「あっはっは! 大した事ないな、あいつら!」
「ああ! 尻尾巻いて逃げたしやがったぞ!」
周りにいる雑兵共がやかましく騒ぐ。全くうるさい奴らだ。
(俺の魔法に手も足も出ないなんてのは当たり前のことだろうが)
何せ俺はオズワルド国一番の魔術家系、ヴェルナール家の嫡子なんだからな。
「流石の戦果ですな、プラシド様」
そう言って声をかけてくるのは軍の指揮をとっている緑翼騎士団の団長だ。この男は身分はさほど高くないが、功績を上げたとかで団長になったらしいが……
(成り上がりの癖にこの俺に対等な口を聞くとは……いい根性してるぜ)
だが、真のエリートである俺は羽虫が調子づいたからと言って怒ったりはしない。所詮住む次元が違うんだ。俺の凄さが分からなくても仕方がないさ。
「……まだ戦は終わってない」
「いやいや、プラシド様がいてくだされば勝利は確実でしょう」
当たり前のことを口にしてどうするんだ、コイツは。だから、お前は羽虫なんだよ。
「……魔導砲のチェックをしてくる」
俺はそう言って席を外す。ふぅぅ……羽虫のレベルに合わせて会話するのは疲れるぜ。
(さて、整備はもう済んだかな)
俺が遠距離魔法攻撃を放つのに使ったのは魔導砲という魔道具だ。見た目は大砲に似ているが、打ち出すのは俺の魔法だ。つまり、強力な魔法を使える者でないと使いこなせない魔道具なのだ。
(魔導砲の整備は……まだ終わってないのか!)
魔導砲は一度使うと、部品交換などの整備が必要になる。それを家から連れてきた家臣に任せていたのだが……
「プラシド様。まもなく終──はぐっ!」
跪いてそう報告してきた家臣の顔を俺は殴りつけた。何故なら……
「貴様はもういらん。名誉あるヴェルナール家の面汚しだ」
「なっ……そんな!」
みっともなく追いすがる家臣……いや元家臣に俺はさらに殴りつけた。
(馬鹿が! まだ分からないのか!)
与えられた仕事をテキパキとこなせない癖に名誉あるヴェルナール家の一員でいて良いはずがないだろうが!
「無能はヴェルナール家にはいらん。そんな当たり前のことさえも分からぬようなら生きてる価値さえないな」
俺が杖を構えると家臣は青ざめた。こんなボンクラでもこの杖から放たれる魔法の威力は分かっているんだろう。そして、俺が本気であることも。
「せめて死に方は選ばせてやろう。火に焼かれたいか? それとも……」
「ひ、ひぃぃぃ!」
情けない声を上げながら逃げていく元家臣に背を向け、俺は改めて残った者に向き合った。さて、こいつらは俺に仕えるために必要なことがちゃんと理解出来ているかな?
「魔導砲はどうだ?」
「「「「準備は終わっています!」」」」
よしよし、分かれば良いんだ。
ブン……
俺が魔力を軽く流してチェックすると、魔導砲は小さな音を立てる。よしよし、正常に動作してるな。
(それにしても、奴らは何故あんな位置から魔導砲の存在に気付けたんだ?)
あの裏切り者カートレット将軍の軍は魔導砲の射程距離に入るか否かのところで止まり、こちらを警戒したのだ。
(あんな距離から魔導砲に気づいたなんてあり得ないし……)
奴らが止まった場所が射程距離ギリギリだったため、攻撃は直撃させられなかった。まあ、それでも俺の魔法は完璧だからそれなりの痛手は与えたはずだが……
(とはいえ、初撃で全滅させるつもりだったんだがな……)
それに二撃目を防いだ魔法に……魔道具か? 炸裂した俺の炎弾の破片とはいえ防がれてしまうとは思わなかった。
(カートレット将軍の手の者にあんな強力な魔法が使える奴はいなかったはずだが……)
というか、そんな奴は国中を探しても数人しかいないだろう。つまり普通ならあり得ない。
(……まあ、何にせよ結果は変わらないけどな)
奴らがこの距離から飛んでくる俺の超威力の魔法に対処出来るはずもない。だから俺達の勝利は間違いない。
(まっ……高見の見物といくか)
炎弾の破片を防いだ程度で過信して向かってくるなら攻撃を直撃させて皆殺しにするまでだし、逃げるならアレを使うまでだ。
(さあ、どちらを選ぶんだ? え?)
これだよ、これこれ! 俺の実力の前に凡夫がああでもない、こうでもないと足掻く姿! これが何より面白いんだ!
(せめてじっくり考えろよ……無駄だがな! あっはっは!)
この先の展開を思い浮かべて思わず口元に浮かべながら俺は魔導砲のチェックを終えた。さて、楽しい時間の始まりだ!
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