#42 幕間と開戦
(辺境にいるエリザベス婆ちゃん視点)
シデンとサラが旅立って三ヶ月。しかし、ここは今日も平和そのもの……
(やはりと言うか何というか……色んな目に遭っとるようじゃな)
シデンからの手紙にはにわかには信じがたいような出来事ばかりが綴られておった。きな臭いとは思ってはおったが、まさかここまでとはな……
(まあ、楽しんでるようじゃし、大丈夫か)
シデンにかかれば、ゴーレムだろうと古龍だろうと大した脅威にはならんじゃろう。驚かされるのはむしろ周りの人間の方じゃな。シデンの言動にはさぞかしびっくりしておるじゃろうて。
(それに比べてここの毎日は平凡そのものじゃな……)
「ぎゃ〜! こいつ俺の腕を!」
「こらッ! 離──わっ! こっちにくるんじゃね〜」
あいつらが上げる悲鳴も今や日常の一部じゃな。まあ、死ななければ再生させられるから多少手足が食われようと命に別状はないからの。
(しかし、あやつらちっとも上達しないのぅ)
起きたら薪割りなどの雑用。朝飯が終わったら体力向上のための基礎練習やシデンが残したメモを見ながらの魔物狩りの修行。昼からは実戦……という毎日なのじゃが、中々進歩は見られないのぅ。
(まあ、シデンが特別だと言われればそうかも知れんが)
特別なのはシデンだけではない。ちょっとした助言だけで魔道具を創り出してしまったサラもまた特別じゃ。
(頭の回転の速さに魔法に関する感性の鋭さ……どれをとっても天性のものじゃ)
そんなサラに唯一足りないものがあるとすれば……いや、それは些末なことじゃ。何せそれを補いたいと言う想いから数々の魔道具を生み出していったんじゃからな。
(本人はここに捨てられた以前の記憶がないと言っておったが……元々は何処かの名家の生まれじゃろうな)
おそらくサラザール家か、それともヴェルナール家。国内最強の魔術家系の血を引いているに違いない。
(だとすると……いずれ自らの出自と向き合わなければいけない時がくるのじゃろうな)
サラザール家にしろ、ヴェルナール家にしろ有する力は莫大じゃ。国内の内乱に無関係でいられるはずもない。
(シデン……その時はサラの力になってやるのじゃぞ)
*
(シデン視点)
魔物食を取り入れるために必要なこと──狩る魔物の選定とか魔物狩り班の編成・訓練、下処理の準備とか─をしつつ、俺達は進軍した。
(当分は試験的に将軍や俺達で食べるくらいの量しか確保出来ないかな……)
魔物食は美味いが、実は手間がかかるのだ。まず、倒し方からしてコツが必要だ。何しろ魔物は体内に毒を持ってたりするからな。それに下処理だって欠かせない。
(ま、ゆっくりやっていくしかないか)
こんなふうにゆったり構えてるのは、将軍から“当分は戦はない”と言われているからだ。何せしばらくは見晴らしの良い平原だ。敵が来ればすぐ分かる上に防御に適した場所とは言いづらい。
(ん……何だ?)
かなり遠く……多分五〜六キロほど離れた場所に人影が見える。
(一、二……八人か。一体何をしてるんだ?)
将軍達から聞いた話によればまだまだ街は遠いはず。こんな何もないところで何をしてるんだろう?
(一応、知らせておくか)
俺は伝令役の兵士に将軍のところまで走って貰うように頼んだ。程なくして警戒を促す銅鑼が鳴る。
「シデン、魔力反応じゃ! まあまあの大きさじゃぞ!」
「シデン、”ぜんぶまるっとおみとおし!“の針が振り切れてる!」
側にいるクレアとサラがそう言うのに少し遅れて大きな盾を持った兵士が十数人ほどこちらへ駆けてくる。一体何なんだ?
(一度止まった方がいいな)
俺は皆に止まるように言うと、取り決め通りの合図を後ろにいる将軍達へと送る。
(”ぜんぶまるっとおみとおし!“が反応……ってことは魔法か? けど、この距離で魔法を使っても……)
その瞬間、炎弾がこちらへと飛んできた!
ゴォォォ!
なっ……この距離で!
(辺境には色んな魔物がいたが、こんな遠距離攻撃する奴にはあったことがないぞ!)
そもそも辺境は山と森ばかりだし、遠距離攻撃なんて無理だからな……ってそんなことはどうでもいい!
(とにかく撃ち落とさないと!)
俺が前に出ようとしたその時……
ドッカーン!
炎弾が爆発した!
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