#38 稽古
「がーっはっはっ! 愉快愉快っ!」
カートレット将軍がついた時には既に敵は潰走し、残ったのは降伏した兵士や騎士ばかり。それを見た将軍は大声で笑い出した。
「急いで助けに来たら既に返り討ちにしとったとはな! がーっはっはっ!」
カートレット将軍は機嫌良さそうに笑いながら俺の背中をバンバン叩く……地味に痛い。
「単騎での強さと指揮官としての力量、どちらも既に持ち合わせておるとはな……シデン、お主は本当に面白いのぅ!」
「いや、俺は別に何も……」
いや、本当にいつも通り剣を振ってただけで指揮官としては全く何も出来てない。むしろ他の兵士達にはサラやヘンリエッタさん、それに副隊長のみんなが指示してくれてたしな……
「そんなことないよ、シデン! シデンが敵をバタバタ倒してくれるから皆の士気が上がったんだから!」
サラがそう言ってフォローしてくれるけど、別にそんなこと考えていたわけじゃないしな……
「サラの言う通りだよ、シデン。“勝てる“、“やれる”と思えれば兵士の力は二倍にも三倍にもなるんだ。そう言う意味では今回の勝利は間違いなくシデンの手柄だよ!」
ヘンリエッタさんまで……
「サラやヘンリエッタさんの言う通りですよ、シデンさん。私、間近でシデンさんの戦いを見てとても興奮しましたから!」
頬を上気させてそう言ってくるリアはめちゃ可愛い。可愛いんだけど……
「ん? リア様が何故ここに? 天幕でやすまれているはずでは?」
げっ……
「えっ、も、勿論休んでましたよ、将軍! 私はここに来るまでのことを……」
「リア様……まさか危険なことをされていたのでは……」
将軍の注意がリアへと移ったところで、(リアには悪いが)俺はそっとその場を離れ、雑務をしてくれている副隊長達の元へと移動した。
「あ、シデンじゃないか。丁度良かった!」
ヘンリエッタさんと副隊長達の様子を見に行くと、俺はそう声をかけられた。
「実は事後処理の関係でちょっと頼みたいことがあってね。来てくれないか?」
「分かった」
と答えた俺にヘンリエッタさんが言ってきたのは……
※
負傷兵の治療など様々な仕事をヘンリエッタさんを始めとした副隊長達がやってくれている中、俺は何をしていたかというと……
「では、これからシデン隊長の稽古を始めます!」
「やった─!」
「待ってました!」
サラの言葉に兵士達が歓喜の声を上げる。
(いくらみんなの要望だからって俺が剣を教えるだなんてな……)
正しい剣術を習ったのは大分前の話だし、もっと相応しい人がいるんじゃないかと思うんだが、サラを始めとした皆に押し切られてこうなったのだ。
「では、シデン隊長。よろしくお願いします」
そう言ってサラは持っていた声を大きくする便利グッズを渡してくれた。
”いつも通りで大丈夫だから!“
サラは片目をつぶってそう囁いてくる。うーん、まあやれるようにやるしかないか。
「え~っと、俺は大分我流になっちゃってると思うからこう言うのは若干苦手だ。けど、皆が戦いで生き残るために少しでも力になれたらと思う」
俺がそう言うと、並んだ兵士達から深いため息が漏れた。
「生き残る……確かに」
「まずはそこからだよな……」
最初熱気が良い意味で落ち着いていく。当たり前のことを言っただけど、何か考えた訳じゃなかったが、結果的にオッケーだったな。
「じゃあ、まずは素振りから始めよう」
皆は俺の言う通りに素振りを始めた。俺は順にそれを見ていくつもりだ。
ブンブンブン! ブンブンブン!
最初の兵士の剣は……やたら速いな…… どうしたんだ?
「ちょっと速すぎないか?」
「はっ! 自分、隊長の風のような剣に憧れていまして!」
少し照れてそう話してくれたのはまだ若い兵士だ。嬉しいけど、早すぎて振れば振るほど型が崩れてしまっていくな。
「型って言うのは剣を振りやすくするためのものだ。型に慣れれば自ずと剣速は上がる。まずはゆっくり丁寧に剣を振って型に体を慣らすんだ」
シュッ!
そう言って俺はゆっくりと剣を振る。すると若い兵士は頬を紅潮させて興奮し始めた。
「す、すっげーっす! まったく無駄がない……自分にさえ分かるっす!」
「君はパワーがあるから型に慣れればもっと剣が速くなるぞ。頑張ってな」
「はい! ありがとうございます、シデン隊長!」
彼が丁寧に剣を振り始めたのを確認して俺は並んで剣を振る皆を見ては自分なりのアドバイスをしていったのだが……
シャン! シャン! シャン!
一人だけ別格に上手い兵士がいる。いや、一般兵でこのレベルってありえなくないか?
(ん? 待てよ……)
この剣、どこかで見た気がするぞ……
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