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#35 結成

 戦いというのは終わった後にもやることがいっぱいある。負けた時は生きてる味方を集めて体勢を整えたり、敵のさらなる追撃から逃れたりしなきゃならないし、逆に勝った時には陣地の制圧や捕虜の武装解除等々をしなきゃなんない。そんなこんなで最低でも三〜四日はかかると言われていたのだが……


「ハッハッハ! これは傑作だ!」

「………」


 何と何故か二日後には出発出来るようになってしまったのだ。


(早すぎだろ……って言うか、こんなんありかよ

)


 予想以上に早く後始末が済んだ理由、それは……


「どうしたの、シデン? 私も良いと思うよ?」


「おうよ! ベテラン騎士も”若者に負けるか!“と鼻息を荒くしているからな! 一石二鳥……いや、三鳥だ!」


 カートレット将軍は上機嫌だし、サラも乗り気だ。というか、当事者の俺以外はみんな大盛りあがりなのだ。


(いや、シデン隊って何だよ……)


 後始末が早く済んだのはほとんどの捕虜の扱いが早々に決まったためである。元々寄せ集めだった兵士達は俺との戦いで、何というか俺達について来たくなったらしいのだ。


(サラに協力してくれた騎士達とヘンリエッタさん達に今回の捕虜を合わせて一つの隊を作るのは良い。けど、何で俺が隊長なんだ?)


 俺は剣を振るうことしか出来ない人間だ。そんな俺が誰かを率いて戦うなんて……


「何を難しい顔をしているのじゃ、主殿! そなたは妾を……古龍を倒した剣士なのじゃぞ。後ろについてくる人間がいてもおかしくないじゃろ?」


 クレアはのほほんとした顔でそう言ってくるが……そんな簡単な話じゃないぞ、全く!


「まあ、細かいことは私達に任せてよ。シデンは今まで通りにしてて。皆単にシデンについていきたいだけなんだから」


 サラはそう言って俺の肩をポンポン叩いてくるが……そんな簡単な話か?


「シデン隊の人達の気持ちは分かりますよ……何しろ私だって一員になりたいくらいですから」


 リアまでそんな冗談を……って何で真顔なんだ?


「とにかく明日は出発だ! 隊員と顔を会わせておくのだぞ!」


 カートレット将軍は機嫌良さそうに笑いながら俺の肩をバシバシ叩くと、話をしていた天幕を出ていった。


(もうすぐ昼か……確かにそろそろ様子を見に行かないと全員と話をすることが出来ないな)


 何せシデン隊は二百人〜三百人はいるらしいからな。



「おおっ! シデン隊長!」

「シデン隊長だ! みんな集まれ!」


 俺が顔を出すなり、兵士達が騒ぎ出した。どうも丘の上にいた敵は王道までの道中で集められた寄せ集めの軍勢らしい。で、今は俺達の仲間ってことらしい。


(つまり、手綱をしっかりと握らないと駄目ってことだな)


 俺達の仲間になったのと同じように、またあっさりと敵に回る可能性もある。だから、抑えるべきところはしっかり抑え……


「馬鹿騒ぎは終わりだよ! 整列!」


 いち早く俺の姿を見つけたヘンリエッタさんがそう声をかけると、分隊長達も続いて声を上げた。

 

「こらッ! 騒がす並べ! 隊長の前だぞ!」 

「整列ッ! 訓練通りにやらんか!」


 実は二百人〜三百人のうち、八十人くらいはカートレット将軍の騎士で二十人くらいがヘンリエッタさん達。捕虜が逆らった場合等のことを考えての処置だそうだ。


(ヘンリエッタさん達とカートレット将軍の騎士達が集まればほぼ半数か……)


 ちなみにカートレット将軍の騎士達の中にはまとめ役になりうる騎士も数人おり、彼らが分隊長として働いてくれるらしい。今、仕切ってくれているのはそういった騎士達だろう。


(……あれ、俺って何したら良いの?)


 秩序を取り戻した目の前の兵士達を見て、俺はふとそんなことを思ったが……まあ、今は何か言わないとな。


「あっと……みんなありがとう。俺がシデンだ」


 皆真剣に俺の話を聞いてくれている。いや大した話は出来ないぞ、俺は。


「正直俺は剣を振ることしか出来なくて、あまり戦には詳しくないし、世辞にも疎い」


 隊長なんだから格好をつけた方が良いのかも知れない。が、知らないもんは知らないし、出来ないことは出来ない。最初にちゃんと言っとかないとな。


「だが、任されたからには全力でやるつもりだ。皆、よろしく頼む」


 第一声がこんなんで良いのか? でも、他に言えることなんてないしな……


「俺はどこまでもシデン隊長についていくぜッ!」


「また剣で砲弾を打ち返してくれよ、隊長!」


「無茶苦茶だよ、隊長! だが、そこが良い!」


 おお……っ? これは上手くいったのか?


「聞いたか? シデン隊長は他にもすっげーことが出来るらしいぞ。確かゴーレムを一撃で叩き壊したとか」


 ゴーレム……? ああ、でも一撃じゃないな。


「俺は砦を一人で壊したって聞いた。確かマルボレクとかいう場所らしいが……」


「マルボレク? おい、まさかあのマルボレク要塞か? あそこはS級の魔物でさえ突破出来ない要塞だぞ!」


 マルボレク要塞か……懐かしいな。でも、あれって俺が壊したことになるのか?


「隊長! 何か切って見せてくれよ!」

「景気づけに頼むよ、隊長!」


 盛り上がる兵士達に再び大声を上げる分隊長に片手を上げて制した。


(だらだら喋るよりこっちの方が楽だしな)


 だが、何を切れば良いんだろう? 


「シデン、あれを……」


 考えこむ俺にサラがそっと耳打ちしてくれた。え、そんなことで良いのか?

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