#20 ダラク山脈
(シデン視点)
次の日、準備が整った俺達はダラク山脈へ向けて出発した。ダラク山脈までの道のりは順調そのもの。このまま何も起こらず行けたらいいなと思ったくらいなのだが……
ゴゴゴ……
目の前のダラク山脈からは何か得体のしれないプレッシャーを感じる……
「何か危険そうな雰囲気の場所だね……いつもこうなのかな?」
「いや、流石にいつもはここまでではないんだが……」
空に重くのしかかる黒い雲を支えているかのようなダラク山脈は見るからに不機嫌そうで見るからに来るものを拒絶する雰囲気をビンビンに出している。
「……これでも行くんだよな、リア?」
「勿論です!」
ヘンリエッタさんが確認するとリアが当然とばかりに返答する。ちなみにヘンリエッタさんもリアから敬語等をつけないように言われている。
「まあ、入り口から尻込みしてたら始まらない。あんたら、気合いをいれるよ!」
「「「おう!」」」
ちなみにヘンリエッタさんは部下を十数人連れている。研究所を制圧したとはいえ、色々やることがあるのではないかと思ったのだが、
”まずは元を立たないといくら元に戻しても同じことだからね“
と言われてしまった。まあ、確かにそうかも知れない。
「とにかく気をつけなきゃ。ヘンリエッタさん、案内はお願い出来ますか?」
「ああ。出来るだけ安全なルートを案内するよ」
この“出来るだけ”の意味を俺達はすぐに身を持って知ることになる……
※
”シデン、次は三時の方向から来てる!“
(分かった!)
声に出さなくても思っただけで会話できるようになる便利グッズでサラから指示を受けた俺は三時の方向に進む。魔物と遭遇するのはこれで三度目。まだダラク山脈に入って一時間も経っちゃいないのに……
「ガゥガゥ!」
「ウガァ!」
向こうも俺を見つけたみたいだな。
(ダラクウルフの群れ……またか)
遭遇したのはダラクウルフというこの山特有の魔物だ。正式には他の地域も住んでいるワイルドウルフという種類に分類されるらしいが、ダラク山脈に住む奴らはとりわけ強く好戦的なためにこう呼ばれているらしい。
ダッ! ダッ! ダッ!
先頭にいた三匹がタイミングを合わせ、別方向から俺に飛びかかる。鋭いキバと高い敏捷性以上に危険なのがチームワークだ。
(……けどな!)
こっちもだてに十年間魔物と戦ってきた訳じゃないんだ!
ザン! ザン! ザン!
連携攻撃が完成する前に剣を振るってダラクウルフを倒す、これが最適解だ。
“ありがとう、シデン! 流石だね。とりあえずこれで終わりみたい。後はヘンリエッタさんの仲間がやってくれるみたいだし、戻って来て”
(分かった)
助かった。死体をそのままにしておくとまた魔物が近よってくるからな。
「おかえりなさい、シデンさん。お疲れ様でした」
リアが飲み物を渡しながらそう労ってくれる。嬉しいけど、言うほど大したことはしてないな……
「また瞬殺……あんた、本当に強いね、シデン」
ヘンリエッタさんが肩を叩きながら褒めてくれる。けど、いくらなんでも褒め過ぎじゃないかな。悪い気はしないけど。
「まあ、慣れだ。魔物とばっか戦ってきたからな」
「へぇ……それで”慣れ“かい? ますます面白いね」
そんなことを言いながらも、俺達は向かう方角を確かめたりと言った作業をし、歩き始めている。が、地図を見ていたヘンリエッタさんがぽつりと呟いた。
「ちょっと異常だね……いくらなんでも」
「そうなのか?」
ま、確かに辺境でもこんな頻度で魔物に遭うことはあまりない。あるとすれば……
「戦ってる時に何か感じたことはあるかい、シデン?」
「感じたことか……」
急に振られて考え込む。感じたというか、疑問ならあるな。
「奴らは怯えてたような気がする」
「怯えてた……シデンにじゃなくてかい?」
ヘンリエッタさんの言葉に俺は首を振った。俺に怯えたならすぐに逃げたはずだ。
「ああ。理由は分からないが、例えば何かに追われてるような……」
言いながらも自分で首を傾げる。ダラクウルフの群れが怯える相手。そんな存在がいるわけ──
ドッカーン!
その時、突然凄まじい爆発音が鳴り響いた!
「!!!」
「えっ!」
「これは!」
サラ、リア、ヘンリエッタさんが三者三様のリアクションをする。その中で何が起こったのかを一番早く把握したのはヘンリエッタさんだった。
「砦が!」
俺達が向かうはずだったダラク山脈第一の砦から煙が立ち上っている!
(一体何が!?)
もしかして、魔物の異常行動もこれが引き金……!?
「行きましょう! 何が起こっているのか確かめないと!」
リアの言葉に全員が頷いた。
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




