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#2 狩人

(……今日は少ないな)

 

 獲物の気配が少ないな。どうするか……


(一匹だけでも姿を見せてくれると助かるんだけどな)


 肉の調達とはつまり獲物を狩ること。だが、この辺境で狩りと言えば、獲物は魔物だ。


(王都……いや、ここ以外じゃ考えられない話だけどな)


 魔物を食べるなんて多分ここ以外では有り得ないだろう。だが、こんな場所には魔物以外の動物なんていない。仕方無しに食べてるのだ。


(まあ、意外と旨いんだけど)


 血抜きを丁寧にしなきゃいけなかったりと調理は面倒くさいが、実は意外と旨い。だから、魔物を食べることにあまり不満もなかったりする。


(さてこの辺りだが……っ!!!)


 いつもの狩り場は何だが騒がしい。


(……参ったな)


 これから狩ろうとしているガララワニは単独行動をしている獲物や弱った獲物を狩りたがる狡猾な狩人。したがって、群れがワイワイしている時には姿を見せないのだ。


(……これ、人の声か!)


 何か近くで聞こえているなと思っていたが、こんな場所だから人である可能性は全く排除していたな。


(しかし、何で……)


 ここは水辺とは言え、街どころか街道さえない(何せ俺が絶賛整備中だ)僻地。わざわざこんなところに来る理由なんて……


「だから、どこまで行くのです! 視察ならここまで来る必要はないでしょう!」


 ん? 馬車か


 もの珍しさから眺めていると……


「……着きましたよ。お降り下さい、アイゼリア殿下」


 騒ぎがやみ、優雅な仕草で馬車の中から女性が降りてくる。が、その周りには剣を抜いた兵士が三人……


「ここが貴方の死に場所です。無事お連れ出来てほっとしました」


 丁寧な口調の中にも嘲りが感じられる。俺の嫌いなタイプだ。


(それにしてもキザな言い回しだな……現実で使ってる奴は初めて見たぜ)


 おっと、それよりも……


「人気のない場所に来たのはこれが理由ですか」


「御明察。そして、死に際でも動揺一つしないとはお見事です」


 何だか物騒な会話だな……どうしよう。


(剣を持った兵士三人とキザ男対あの女の子か)


 大の男気四人と若い女の子。普通なら勝負にさえならないが……


「随分安く見られたものですね……」


 女の子の声色に怒りが混ざる。それはきっと……


「とんでもない! 貴方を慕う者は多くいる。邪魔が入らないようにこんな場所までお連れせざるを得なかったのですから」


 キザ男は女の子の怒りにも気づかずペラペラ喋り続ける。が……


 スパン!


 風圧と共に兵士が一人倒れる。そして、彼女の姿はキザ男の前から消えた!


「安く見たのは私の剣技のことですよ。貴方を入れても四人……それで勝てると思ったのですか?」


 女の子は林を背に啖呵を切る。おおっ、凄いな。


(囲まれた状態じゃどうしようもなかったけど、これなら……)


 一人倒し、囲みを抜けたことで彼女は前だけを警戒すれば良くなった。戦力差があるのは変わらないが、一瞬でその差はぐんと縮まったな!


「くそっ……最後まで可愛げのない! お前ら、やってしまえ!」


「「ハッ!」」


 兵士はかなり訓練されているらしく、女の子に同時に斬りかかる。彼女にしてみれば一番嫌な攻撃だが──


 スパパパン!


 瞬く間に兵士達は斬られて傷を負う。凄い剣技だ。


(腕力がないから威力は低いが、戦況は確実に有利になっていくな)


 まあ、まだまだ不利なことに変わりはない。が、相手からすれば追い詰められているように感じるだろう。そこにつけこめれば……


「いい気になるなよ! 第一王女!」

 

 男は懐から何かを取り出し──


 パァン!


 乾いた音と共に女の子がよろめく。これは銃か!


「ぐはは! いくら卓越した剣技があっても銃の前には無力!」   


 キザ男は銃に再び弾を込める。攻撃するなら今だが、この状況では飛び込むのは無謀過ぎる……


「もはや、時代遅れなのですよ、剣も貴方も! 後ろ盾を失った王女も剣技ももはや無用ッ!」


 キザ男が引き金を引──


 ビュンビュン! ドカッ!


「あひゃい!」


 キザ男が突如投げ込まれた鞘で顔面を強打し、目を回す。いや、突如というか、俺が投げたんだけど。


 ザッ! ブン!


「何──ガッ!」


 驚いた兵士の一人に近づき、峰打ちで昏倒させる。さて次は……


「貴──グッ!!!」


 さて後は……


「い、一体何だ、今のは! 魔法か!」


 ん? 何だって?


(あ、止まっちまった)


 そのまま黙らせようとしたんだが、あまりにも意外なことを言われたせいで動きを止めてしまったよ。


「何って……走って近づいて斬っただけだ」


「嘘つけッ! そんな速い剣があるわけないだろ!」


 正直に答えた俺も馬鹿だが、文句を言ってくるコイツも相当な馬鹿だな。


「ならよく見てみろ。もう一回やってやるから。ほら、行くぞ!」


「や、や──!」


 この時、俺はまだ知らなかった。二十年間ひたすら毎日繰り返した素振りと土木工事が俺に防御不能、回避不可の最速最強の斬撃を身に着けさせたことを……

 

 無自覚最強モノってまだいけるのか……?


 昨日からそれが気になって眠れません。もし、貴方がブクマやポイントをポチッとして頂けたら寝られるような気がします。どうか清き睡眠時間を私めに下さいませ……

 

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― 新着の感想 ―
無自覚最強モノってまだ全然いけます。 たくさん眠ってたくさん執筆して頂ければ幸いです。
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