#17 魔穴
(こんなにあっさり出てきてくれるんだ……)
門は最後の最後まで開けないものかと思ってた。だって、閉めてた方が有利だし。
(まあいいか。それより……)
目の前の敵は二十人は下らない。コイツらを引き付けておくのが俺の役目だ。
(やっぱ倒してしまうのが手っ取り早いよな)
仲間がやられれば当然焦る。焦れば俺により注意が向く。うん、自然な流れだ。
(そういや、この状況は前と似てるな)
俺の脳裏をよぎったのはヘンリエッタさんの仲間と戦った時のことだ。
(一人ずつ倒していたら、いつの間にかリアとサラを人質に取られていて……)
まあ、あの時は何とかなったが、次もそうだとは限らない。いや、今回だって……
(……あ、そうか!)
俺は馬鹿だな……こんな単純なことにも気がつかなかったなんて!
「行くぞ!」
「くらえ!」
「うりゃあ!」
先頭にいた三人が俺に切りかかってくる。しかも、タイミングがピッタリ。中々練度が高いぞ。
(けど……!)
ズバッ!
俺が思いついたのは横切り。一人一人倒していたら時間が足りない。なら、一度に倒せば良いんだよな。
「がはっ」
「ううう」
「ごふ……」
縦切りと違って昏倒させることは出来ないが、動けなくなれば十分だ。
(よし、この調子で……!)
ズバッ! ズバッ! ズバッ!
辺りに倒れた兵士の山が出来ていく。うーん、動けるスペースが狭くなる点は考えなきゃいけないな。
「くそ、応援を!」
「距離をとれ! 弓だ!」
兵士達は口々にそう叫ぶ。けど……
(やらせるか!)
ダッ!
俺は奴らの元へと駆け出し、剣を振るった!
ズバッ! ズバッ!
瞬く間に動く敵がいなくなる。が、奴らは既に援軍を呼んだ後だったらしい。弓を持った兵士がやってきた。
「撃て!」
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
無数の弓弦の音が後ろ〈••〉から聞こえる。そう、俺は弓が放たれる前に既に駆け出している。
ズバッ! ズバッ!
弓兵も一瞬にして殲滅。まあ、剣士に遠距離攻撃って言うのはセオリーだが、だからこそこっちだって対策の一つや二つ考えてるぞ。
「くそ、何だこいつ!?」
「下がれ、魔導兵が来た!」
兵士達の代わりにローブを来た男達が現れた。
(杖を持ってる! 魔法使いか!)
杖は魔法使いが魔法を発動しやすくために持つってエリザベスばあちゃんが言ってたからな。
「“業火よ、燃え盛れ!〈フレイム〉”」
詠唱!? あ、やべぇ。ばあちゃん以外の魔法使いなんて初めて見たから接近するタイミングを見落とした……
(……ん、これって)
飛んでくる火の玉を見て、俺はあるものに気がついた。
(何だろ……何か淀みのような部分がある)
実際には見えたというよりも感じるといった方が近い。これは一体……
(もしかして、これが婆ちゃんが言ってた魔穴って奴か?)
魔穴とは言わば魔法の弱点。魔力の流れの要であるこの部分が何らかの理由で阻害されると魔法の効果が失われるってばあちゃんが言ってたな。
(なら、一か八かやってみるか)
何もしないよりも思ったことを試してみた方がマシだ!
ザン!
感じた部分に刃を通すと、火の玉が真っ二つに割れて瞬く間に消えて行く! やった、 成功だ!
「なっ……魔法を剣で!?」
「そんな馬鹿な!」
驚いてる驚いてる。そりゃそうだろう。でも一番驚いてるのは俺だ。
「今のはまぐれ! もう一度だ!」
「別の魔法を試せ!」
あ、もう次が来る?
「”彼の者を切り裂け〈ウインド〉“!」
今度は風か。魔法自体は見えづらいけど、魔穴は目視してるわけじゃないからな。
ザン!
風の刃が霧散するのを感じる。うん、今ので完璧に掴んだぞ。
「どどどどうなってる!? なんだ、あの剣士は!」
「分かりません! しかし、魔法が通じなくては私達には何も……」
どうしたらいいか分からなくなって慌ててるな。まあ、分からなくはないけど。
(けど、そろそろこっちも行かせてもらうぞ!)
俺は地面を蹴り、敵の中へ飛び込んだ!
※
(サラ視点)
「あの人数……いくらシデンさんでも!」
大丈夫だよ、リア。シデンなら!
「今度は魔法!? いくら何でも!」
大丈夫大丈夫。心配いらないから。
あれやこれやと心配するリアを宥めながら私はシデンの活躍を見守る。だって、シデンが負けるはずないし。
(それに生でシデンの戦いを見られる機会ってレアだし……)
いつも便利グッズでシデンの戦いは見ているけど、生はまた迫力が違う。
「す……凄い」
リアもシデンの凄さを肌で感じたみたい。ね、凄いでしょ? シデンは!
ズン、ズン、ズン……
私がそんな幸せな気分に浸っていると、突然地響きが……
「地震!?」
リアが思わず声を上げる。けど……
(……この地響き、規則正しい)
その瞬間、それは突然姿を現した!
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