#16 作戦開始
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(第四班長視点)
「定時報告の時間だ。班長、前へ」
これでもかというくらいに脂肪を溜め込み、でっぷりと太った小男が偉そうに喋る姿は滑稽そのもの。が、笑ってはいけない。この男はこの研究所の所長なのだから。
「では、報告を。第一班から」
「わ、我が班は……」
声が震えてるのはこの後の結果が分かってるからだろう。気の毒に。
「ふん、良くもまあこんな報告が出来たものだな」
確かに第一班の成果はお世辞にも良いものとは言えなかった。が、俺は彼らがどれだけ必死にやっていたか知っている。あれだけのは真剣にやっていれば、今回は駄目でも次は必ず……
「だが言い訳する時間を五分やろう。ほれ」
「わ、私達は……」
五分やるといいつつ、所長はろくに聞いてもいない。やがて……
「時間だ……歯を食いしばれ」
「ご、ご勘──がふっ!」
音もなく現れた拳が第一班長の鳩尾に突き刺さる。勿論所長の拳じゃない。
(所長ご自慢のゴーレムか)
ここでの研究成果を流用し、俺達の研究費を横領して得た希少な素材をふんだんに使って作られたゴーレムは無茶苦茶強い。カタログスペックでは騎士一個中隊でも押さえされるらしい。
ガツン! 「ぎぃや!」
ガツンガツン! 「ぐぇ!」
ガツンガツンガツン!「ごふっ!」
ゴーレムが所長の命令で憐れな第一班長を殴る。黙ってみてるだけなのかって? こんな化け物に俺達インテリじゃ敵うわけがないじゃないか
「駄目な奴はこうなる。分かってるな」
「「「「はいっ!」」」」
腹の底から声を出す。所長はゴーレムの自慢と俺達に威張り散らすことが目的なんだから、ここは全力で声を出さなければいけない。
「声が小さいっ!」
「がひゅっ!」
隣りにいた第三班長の姿が後ろへ飛ぶ。壁に激突し、ボロ雑巾のように倒れ込む彼を見た所長は舌舐めずりをした。
「お前らも同じ目に遭いたいか?」
俺を含めた残った全員が青い顔で首を振る。
「駄目な奴らはこうだ。分かったな?」
今度こそ俺達は喉が張り裂けんばかりに返事をした。
「それとマルボレク要塞から不審者の情報だ。警備にも気をつけておけよ」
警備? 不審者? こんなゴーレムがあるんだからなんの心配もいらないだろ!
(……いや、これは難癖をつけて俺達を殴るつもりか)
他の班長とも相談して隙を見せないようにしないと……
※
(シデン視点)
作戦決行の時間になり、俺達は施設の前にやってきた。のだが……
「どうやったら注目してくれるかな……」
来てみると、街一個分を潰してつくったどでかい施設だ。ちょっとやそっとの騒ぎじゃ揺るがないように思うけど……
「大丈夫。シデンが暴れたらきっとジャイアントキラー・ビーの巣みたいに騒ぎ出すよ」
「だといいが」
ジャイアントキラー・ビーというのは辺境にいる危険な毒蜂だ。コイツの巣は際限なくデカくなるのだが、デカくなればデカくなるほど警戒心が強くなる。毒もありえないほど強力だから生活圏内に見つけたらだから早めに潰さないけないの普通なのだが……
(蜜が旨いからついついデカくなるのを待っちゃうんだよな……っと今は関係ないか)
いかんいかん! とにかく騒ぎを起こさないと行けないんだ。
「じゃ、行ってくる」
「援護は任せて! 要らないと思うけど」
サラが片目をつぶってそう励ましてくれる。まあ、最悪便利グッズで騒ぎは起こせるだろう。ピッタリなやつもあるからな。
「シデンさんの腕は知ってますが、くれぐれもお気をつけて。数こそ最強の力だと伯父様も仰ってましたから」
リアは心配そうだ。でも、まあ全員倒さないと行けないわけじゃないからな。
そんなこんなで施設の方へ歩いていくと……
「何者だ!」
「怪しい奴!」
ちょっと近づいただけで向こうから声をかけてくれた。
(施設の門の前には二人の兵士らしき男。距離は三十メートル弱……)
行ける!
ダッ! ザン! ザン!
思い通りに声を出す間もなく倒した……が、しまった!
(一人残しておけば良かった!)
ヤバい、痛恨のミスだ! これじゃ気づいてもらえない!
ピィィィ!
辺りに響く警笛。これは中からか?
「東門だ! 侵入者!」
「門を開けろ! 絶対に逃がすな!」
ゴゴゴ……
重い音と共に扉が開き、大量の足音が聞こえてくる。良かった……うまく行ったぜ。
皆に恐れられるパワハラ所長の行く末は……そしてシデンは敵を引きつけておくことが出来るのか!? 乞うご期待ッ!
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