#14 ルールと仁義
「なっ……てことは敵かい? あの施設は第三王子派が作ったって聞いたよ!」
ヘンリエッタさんは眉間にしわを寄せる。サラは慌てて説明した。
「敵じゃないです。むしろ味方かも。リアは第三王子派に命を狙われたんですから」
「第三王子が第一王女であるこの娘を……ふぅん、複雑だね。まぁ、王宮も一枚岩じゃないってことか」
「そうでしょうね。まあ、証拠はないんですけど」
ヘンリエッタさんはサラの話を聞いて少し考えこんだ。
「……ってことはあれかい? もしかして、ピンチのあんた達を助けることが出来たらあの施設を無くしてくれたりってことを期待して良いのかい? 勿論、恩を返すのが先ではあるけど」
ヘンリエッタさんはこちらの様子をうかがいながらそう聞いてくる。
(多分、恩を返していないうちから図々しいと思っているのだろうな)
派手な言動が目立つが、随分律儀な人だな。
(さて、リアはどう返事をするかな……)
王宮の事情は俺には良く分からない。俺達には問題ないように思えても、実際には不可能ってことも──
「いえ、あの施設は今すぐ破壊します」
え!?
「罪のない住民を住居から追い出して占拠するなど決して許されることではありません! ルールにも仁義にも反します!」
「……気に入ったよ、リア」
ヘンリエッタさんはリアの手をとり、跪いて手の甲に口づけをした。
「今日から私達はあんたの味方だ。その高潔さを失わない限り、私達はあんたの命に従うよ」
※
「……勝手に決めてしまってごめんなさい」
ヘンリエッタさんが帰った後、リアは小さくなって俺達にそう侘びた。
「や、別にそれは……」
「私も構わないけど……良いの? 早く将軍に無事を知らせないと行けないんじゃ」
サラも俺も内心ではここの人達を助けるけとには賛成だからな。
「“義を見てせざるは勇無きなり”というのが伯父様の教えです。それに将軍がこの話を聞けば、激怒して辺りを焦土にしてしまうかも知れません」
どんな人なんだよ、カートレット将軍って……
「というよりも、こんな酷い話を聞くと頭に血が上ってしまってつい……王族として恥ずかしいです」
そう言うと、リアは白い頬を朱に染めて俯いた。
(……大人しそうに見えて結構激情家なんだな)
恥じらうリアの姿に高鳴る心臓から気を逸らすためにそんなことを考える。
「落ち込むことないぜ。それに味方が増えたんだ。結果オーライじゃないか」
「そうだよ! みんな同じ気持ちなんだから」
俺達がそう言うとリアも少し気持ちが落ち着いたらしい。礼を言って顔を上げた。
「後は具体的な戦略だが……ま、詳しいことは明日考えようか」
「だね。場所とかはここの人に聞けばいいと思うし……リアにもしっかりはたらいてもらうし、今日はしっかり休も?」
「分かった!」
サラの激励にリアが気合いの入った声で応える。これは勿論、リアに余計な罪悪感を持たせないために言った気遣いだ。
(さて、明日からは忙しくなりそうだな)
毎日コツコツと繰り返すルーティンワークも良いけど、こんな風にみんなで協力して誰かのために何かをするのも悪くないな。
※
(ハイネ視点)
「……報告を」
「はっ……付近を捜索しても、侵入者の痕跡は依然見つかっておりません」
「まだ遠くには行ってないはずだ。よく探せ」
「はっ!」
恭しくそう言う兵士だが、俺に対する態度はついこの前とはぜんぜん違う。くそっ……何でこんなことに
有り得ない……全く以て有り得ない
(このマルボレク要塞が出来て以来の大失態だ)
詳細は不明だが、この要塞に二〜三日前に侵入者があったらしい。“らしい”というのは侵入者の情報がこれしかないからだ。
(くそっ……よりにもよって俺が侵入者の存在を証明してしまうとは)
俺が倒れていたことで侵入者の存在が確定したが、肝心の侵入者の情報はない。これは俺が知らないからだ。
(証拠さえなければ何でも人のせいに出来たのに……!)
これだけでも本来なら有り得ないのだが、加えて地下に違法な施設があったことが発覚。さらにはそれが破壊されたおかげで要塞が半壊するという有り得ない事態……良くもまあ、一晩でこんなに色んなことが起こったもんだ。
(待て待て! 現実逃避してる場合じゃない。これはピンチなんだ!)
違法な施設も要塞の半壊も俺とは関係ない。が、何故かこれら全ては俺が賊を取り逃がしたせい……みたいなムードになっているのだ。
(くそっ、濡れ衣は御免だぜ!)
全く……栄光ある騎士団長の俺が何でこんなしょうもないことで悩まされなきゃならないんだよ! くそったれ!
読んで頂きありがとうございます! 次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!
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