#13 解放
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「凄腕剣士に乾杯ッ!」
「神業剣士に乾杯!」
あちこちで妙な音頭で酒を飲む盗賊達。だけど……
(盗賊っていうより普通の兵士だな)
呑み方に盗賊も兵士もないかも知れない。けど、彼らの振る舞いは俺の記憶にある城の兵士達のそれに酷似してるのだ。
「そういや、あんた達は何処に行くつもりなんだい?」
ヘンリエッタはビール片手に上機嫌だ。良く分からないが、どうも俺は気に入られているらしい。
「詳しくは話せないが、俺は彼女の護衛でな。南の方へいくつもりだ」
「南……ってことはダラク山脈を通る訳だ」
ダラク山脈はこのダルニシ平原を抜けた先にある山脈で、険しいことで有名な場所だ。
「ああ。何処かの街で山越えの準備をするつもりだ」
「……この先で?」
俺の言葉にヘンリエッタが眉を顰める。あれ、何か変なことを言ったかな?
「そういや、あんたらは何処から……」
げ……不審がられてる。どうしよう!?
「いや、詮索はよそう。山越えの準備だったね。何処まで出来るかは分からないが、力を貸すよ」
ほっ……
「ありがとうございます。後、最近の情報を教えてもらえませんか? 護衛は見ての通り剣一筋の男ですし、お嬢様もお付きの私も世辞には疎くて……」
ナイスだ、サラ!
ちなみに俺が護衛の剣士で、リアが商家のお嬢様、そしてサラがお付きの侍女というのは宴の準備を待っている間に考えた設定だ。
(まあ、サラは綺麗過ぎて侍女っぽくはないけどな……)
だが、王女であるリアでは侍女役は無理だろうしな……こう言う配役になった訳だ。
「ああ、なるほどね。この辺りは少し前から事情が変わっててね」
ヘンリエッタの話によれば、数年前に突然王立魔術研究所の役員などという肩書きの怪しげな連中が現れ、住民を街から追い出したのだという。
(で、何やら怪しげな施設を作っていると……)
おまけにその建物が出す廃液で土地は腐り、この辺りは農業も狩りも出来ないような土地になってしまったというのだ。
「そんな無茶苦茶な! 王都に訴えれば……」
「したさ、勿論。けど、逆に家族を人質に取られる始末でね。盗賊くらいしかすることがなくてね」
なるほど、この人達は元々堅気の人なんだけど、仕方なく盗賊をしているのか。
(それで盗賊らしくないのか)
この人達の家族は無事なのかな……ってん?
(人質ってまさか……)
俺は思わずサラの方を見た。
※
「無事で良かった!」
「あんたこそ! まさかまた会える日がくるなんて!」
若い夫婦が再会を喜び合ってるかと思えば、その後ろでは親子がしっかりと抱きしめ合っている。
「お父さん!」
「ああ、良かった! 二人共無事で!」
俺達の歓迎の宴は瞬く間に再会の宴に……なれば良かったんだが、囚われていた人達の体力は皆限界に近い。再会の興奮が切れる前に休ませないとな。
「皆、とりあえず家族を休ませるんだ! 無事取り戻せたんだ。元気になれば幾らでも積もる話をすることが出来るぞ!」
ヘンリエッタさんは流石にそれには気づいてるみたいだ。皆を急き立てるように手早く解放された人達を休ませていく。
「済まないね。歓迎の宴が途中で終わっちまって」
「いや、俺達も彼らを早く解放してあげたかったから助かったよ」
ついでに言えば、行き先も見つかって大助かりだ。助けたは良いが、どこに行ったら良いかわかりませんだと寝覚めが悪いからな。
「宴は改めて──家族を救われた恩もあるしね──するとして、差し支えない範囲で経過を教えてもらえるかい? 私達の今後の行動にも影響するんだ」
「ああ、分かった」
それからバタバタと動き、落ち着いた頃にはもう夜も大分更けてしまった。
「もう感づいていると思うが、私達は元々この辺りの都市の商人や都市の兵士として雇われていた人間さ。例の良く分からない施設のせいで住処を終われて盗賊にまで落ちたけどね」
ヘンリエッタさんは自嘲気味にそう笑った。
(あれ……そう言えばヘンリエッタさんの家族は?)
救出された人達に親しげに声をかけていたが、多分ヘンリエッタさんの家族はあの中にいなかったと思う。
「だが、家族を人質に取られたせいで、昨日までは奴らに反抗することさえ出来なかった。あんた達には感謝してる」
「成り行きでこうなっただけだ。気にしなくていい」
頭を深々と下げるヘンリエッタさんに俺はそう言った。実際、俺達は大したことはしてないしな。
「ところで、俺達のことなんだが……」
ここで俺はリアに目線で確認をとった。一応事前に彼らには事情を話そうと確認していたけどな。
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