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06.記憶なき武士、令和に生きる

(心視点)


鶴花警察署の和田さんと、民生委員さんと父さんと母さんと武がリビングにいる。


武のことについて、説明し、今後のことについて、相談していた。


とりあえず病院に行って、診察を受けてもらう事が必要らしい。

行方不明者届の検索は警察がやってくれる。


ただ、病院の費用についてはうちが10割負担…っていわれて、それは違うんじゃないか?というと、民生委員さんが区役所等の手続きを警察と病院とで連携してくれるとのことだった。


住まいは仮にうちとなった。


体は成長しきっているものの、なんだか常識を知らない武だから、いったんグループホームに入居という手段はどうか、それならいろんなフォローが出来るということだったが、なぜか母さんが反対した。その様子に僕はちょっと安心した。


武はだいぶ変だが、ひげをそって、髪を整えたら、小栗旬似のイケメンだった。


母さんも父さんも、あからさまな手のひら返しはしないものの、

何となく手放そうとしなくなった。


「なーんか『鎌倉殿の13人』を見ているような気がしてきましたな。」

警察の人が、武をスマホで撮影しながら、そう言った。


「身元が判明次第、あるいは見当たらなくても経過報告入れますね。多分明日には一度ご連絡します。」

そう言って警察の人は行った。


民生委員の人は近く病院に連携し、神経内科で健康診断と、心の状態を、外科で体の状態を総合的に見てもらうことにした。


健康状態は極めて健康で、心理的には少し疲労があるかもしれないが、特に問題はないと。


頭の方も、CTスキャンをしたが、特に異常はないとのことだった。


医師が言うには

「特に脳に異常は見当たらないですが、何らかのショックで一時的に記憶を失ってしまい、

一番強く感情が残っている場面での立ち振る舞いをしているのではないか。

武士、っていうのも、仮ですが、例えば俳優として舞台をやっていた、とかの記憶で動いているなどの可能性があります。」

とのことだった。


外見に引っ張られた診断ではないか?と思って聞いてみたら

そんなことはない、脳科学、脳医学は解明できないことが多く研究中の分野であると説明されて謝罪した。


ちょっと安心した。

病気とか怪我とか障害とかあるんじゃないかって心配してたんだ。

すっきりした。


わりと早いスパンで動くんだね、警察も民生委員も病院も。


人の命だから、緊急事態だし、ってみんな口を揃えて言っていた。




次の日。


武は朝から母さんのエプロンをつけて、掃除とご飯の支度をしていた。


「お世話になりっぱなしなのに、何もお礼が出来てない。

お礼しようと思っても、何かすると迷惑がかかっている。」


と言って、武はいろんなところを雑巾がけしていた。


廊下も、洗面台も玄関もピカピカだった。


武、すげえ…。


朝食を急いですませて、着替えて、行ってきますと靴を履くと後ろから母さんと父さんがいってらっしゃい、と言っていた。


武が玄関にあぐらで座り、グーを床につけ頭をさげ


「いってらっしゃいまし、心殿。」

と言った。


「あ、うん…。」


そっとドアを閉めた。


今の何だったんだろう。


ちょっとドアを開けて、隙間から覗くと、まだ武は頭を下げていた。


奥では母さんと父さんも驚いていたようだった。


武はちょっと変だけど、いいやつだと思う。


記憶が戻っても戻らなくても、どっちでもいい。


幸せに暮らせるといい。

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