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東京に降り立った迷い武士  作者: 鈴木貴


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16/17

16.武士、令和を生きる祈り

(心視点)

父さんは

「武はまだ、恨みや、やり残したことはあるか?」

と聞くと武は


「そんなの、全くありません。

それは、もしかしたらずっと自分を慰め続けてくれてたからかもしれません。」


「だとするとだ。

これは新しい人生の始まりだ。

輪廻転生って言葉を知っているな?」


「はい。」


「本来、一度死んで赤子から生まれてくるっていうことだろうが、武の場合は違ったんだ。

ちょっとした神様の粋な計らいだったんだろう。

あの首塚近くに、いきなり現れたんだ。

最初見た時は、『ふざけたコスプレでこんなところに現れたら祟られる。ここは真剣な気持ちで来るべき場所だ』と思って注意したんだが、本人だって最初からわかってたら、放置したのに。」


「え?」

「嘘だよ。」


父さんの話に、一瞬凍る武、そして嘘だよと笑う父さん。


ふと見ると母さんも涙を流して

「もう、藤井武でいいじゃない。」

と言った。


武は

「最近の幻覚のような出血、あざなどで、悩んでいました。

これは…暗示かもしれないと思い、話や挨拶をせねばならないのではないのかと

直感した次第です。」

と話した。

ずーっと泣いている。


この原因不明な現象に武は不安を抱く。



父さんは


「まず、お参りしよう。

武がここに来た原点に行って、感謝とこれからの誓いを伝えるんだ。

今の武が過去の平将門に。


それに、傷がなくてもあるように感じるのは現代医療でも少しずつ解明されている。

神経や脳の奥深くの記憶が出てくるとそのようになることはあるらしい。

お参りに行っても続くようなら、病院でも治療はできるから安心しなさい。

どうだ?ここで希望を持って、命を大切にする戦いを続けてみようと思わないか?」


武は黙ってうなずいた。


父さんの運転で武、母さん、僕が将門首塚へ行く。


何人かの観光客がいた。


父さんは賽銭箱に千円札を入れて、後ろのほうに行って手を合わせた。

そして、父さんは武に

「ここで感謝や近いを述べるといい」

と言った。


武はうなずいて、手を合わせた。

「この地に戻れたことに感謝する。この地の新たな戦いを応援する人となる。」

と言っていた。


母さんも手を合わせていた。


僕も心の中で

「将門さん、ありがとう。武のように来てくれて。

僕も色んな戦い、頑張ります!」


平将門は平将門。

武は武だ。


(完)

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