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東京に降り立った迷い武士  作者: 鈴木貴


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15/17

15.武士、己の過去に向き合う時

(心視点)

「お話したいことがあります。記憶が戻りました。

自分は平将門でありました。」


僕と父さんと母さんは、

「相変わらず徹底してるね。」

と話しをした。


「わしは首を切られても死ななかった。

いや、タブレットの情報のように怨念でここに来てしまったのだと思う。

そしてテレビの木遣りの歌声、どこかで聴いた事があると思っていたら、

毎年、わしのために、気遣いの歌をささげてくれていた事を知った。

…ありがたく、大変ありがたく…。」


武の真剣で熱い訴えに、これまでとは違った様子が伺えた。


「それが武の記憶か?」

父さんが真剣に武に聞いた。


「はい…。」

こぼれてくる涙を手で拭きながら返事をした。


「そうだったか…。」

父さんは腕を組み、片手を顎の下に置いてじっと考えている。


僕は、本当にそうなのか、そんなことがあるのかと信じられない気持ちになった。


「武は本当は平将門なの?そしたら平将門として生きるの?

武のままじゃだめなの?

今、民生委員さんも、病院も、警察も、武が生きられるように動いてくれてるよ。」


母さんがそう言った。


武は泣きながら

「どうしたらいいのかわからないんです。

本当ならこの世に生きてないはずだから。

自分がいなくなって、1000年以上のこの場所に今自分がいることの意味がわからない。」

と答えた。


そんな事言わないで欲しい。


武はだいぶ変わっているけど、素直で優しくて、力持ちで、気配り上手で、ちょっと、いやだいぶ天然で、一生懸命でいいやつだ。

せっかく友達が増えたのに。

家族といっても過言じゃないんだ。


武は

「実はここのところ、痛みが色んなところに出ました。

そのつど鏡や目で見てみると、出血しているんですが、瞬きを2回すると元に戻っている、という現象が続いていました。

何かの暗示ではないかと考えています。」

と泣きながら話している。


大泣きする武の背中をさすりながら僕も涙が出てくる。


思い出したところで、全く違う世界。

武の絶望、後悔、懺悔、不安、色んな気持ちがわかる。


父さんがゆっくり話始めた。


「武… あえて武と呼ぶからね。

武があの場所であの姿でいたのは、きっと何か大きな見えない力が働いたのではないか?

特に何の神様も宗教も信仰していないが、不思議なことは沢山ある。

武は、首と胴をくっつけて、この坂東に帰りたかったんだ、またみんなで幸せにくらしたかったんじゃないのか?」


「そうだと思います…。」


父さんは武の肩を優しくさすって

「武…平将門はな、今、勝負や仕事をする人達の守り神として信仰されているんだ。

神様として、特に大手町のように会社で仕事する人達の心の支えになっているんだよ。

そういう自分も、大事な商談、出張がある時はお参りして、終わったり、成功したら、報告をしていたんだ。お参りすると、不思議でな。比べられても選ばれたり、こちらの良い条件で仕事が成立していたりしたんだ。仕事で失敗しても挽回するチャンスに恵まれたりした。

自分以外にもそんなサラリーマンが沢山いる。

すでに平将門は色んな人を救っているんだ。

きっとこれからもそうあり続けるはずだ。

もっと多くの人を救うことで、許されたのではないか?

それに、その平将門が頑張ったおかげで、この地域はとてもたくましく発展している。」

と話した。


僕も

「そうだよ、そうだよ。」

と言った。


こういう時、何も言葉が浮かばなくて、父さんの言葉を一緒に聞くしかなかった。

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