11.駒競、馬術眼
(心視点)
武がTVに映った競馬番組を見ていた。
競馬は全く興味がなかったので、あまり見たことがなかった。
「殿、これは馬の早さを競うということで間違いないでしょうか?」
とTVを指差しながら、父さんに聞いていた。
父さんは、そうだよ、と言って、日経新聞を読んでいた。
「わしが早いと思うのは、この馬とこの馬と」
と言って指を差し、最近渡したノートと鉛筆でメモをしていた。
ふーん、と思って、見ていたら、予想的中だった。
「父さん、武予想的中させてる。」
と言うと、何ぃ!?と驚いていた。
父さんはスマホで計算をすると、
「1,000円かけてたら大体60万円ぐらいになってたかもしれない。」
と言った。
驚いた。
武、競馬の才能あったんだ。
武という名前だけあって、武豊の影響や運をもらったんだろうか?
「武、どうしてこの馬だと思ったんだ?」
と僕が聞くと、武は、テレビに見入って、馬の脚などを指差しながら
「馬の体と脚を見ています。
さすが、駒競のための馬を揃えただけあって、見事に早い馬たちです。
戦場でしたら、戦況を伝える馬として使われると思います。
脚の長さ、関節の動かし具合、体のつき方などを見て、そうではないかと。」
すると父さんは
「武は最近、確率やその他、方程式の計算を勉強していたはずだ。
それと合わせてみるとどうかね?」
と聞いてみた。
タブレットで競馬のサイトを見ると、文字や数字ばかりだった。
「計算上は、違う馬でした。
これとこれで…」
その馬は3~6位だった。
「武は計算より、馬を見た方がわかる、ということか?」
「さようでございます。」
すると父さんは何かを思いついた様子で
「武、ちょっと次のレース、試しに予想してみてもらえるか?」
「承知しました。」
武はそう言ってタブレットで競馬のサイトで名前から馬の画像や動画を見て、
順位と名前をノートに書いて見せてくれた。
父さんは競馬のサイトで何やら操作している。
おそらく、武の言った順位で賭けているのだと思う。
「まあ、ものは試し。
100円で賭けてみよう。
他のパターンでも賭けてみるか。」
と言って、入力していた。
テレビに見入った。
武の予想は的中し、かけていた300円が8万円になった。
武が、次は…と言ったところで父さんが
「いや、これはビギナーズラックだ。
賭け事にのめり込むと色んなものを知らないうちに失うことがある。
武の馬を見る才能は、何か別の事に活かそう。」
父さんはそう言って、自分の財布から8万円を武に渡そうとしたが武が断った。
「いや、お世話になりっぱなしで、受け取れません。」
「まあ、お小遣いがないと、いざという時困るだろう。
今回はこれで、無くなったらまた言いなさい。
というか、財布がないな、武は。」
そう言って、探していたが、ちょうどいいのが見つからないようだった。
僕は
「武、これでよかったらあげる。
もし他に気に入ったのがあったら買って。
それまでの間、これに。」
と言って、僕が小さい時に使っていたドラえもんの財布を渡した。
お札もカードも入る。
子供まつりで当たったやつだった。
今は自分で欲しいと思った財布を持っている。
何となく持っていたけど、今とりあえずしのぐということではいいのではないかと思った。
「いいんですか?大切なものでは?」
「ううん、僕のはあるんだ。武が他にいいのを見つけるまでの間、これで。」
「ありがとうございます。」
武は受け取ると嬉しそうにお札を入れていた。
父さんがその様子を見て
「人にあまりお金を見せないようにするんだよ。
それに、あまり必要以上に持ち歩かないこと。
落としたり、取られたりするかもしれないから、分けておいておくこと。
あまり人目に付かないようにするんだよ。」
と言った。
「承知しました。ありがとうございます。」
と言って、武は頭を下げていた。
競馬で生活できそうだけどな。
父さんが厳しめな顔でストップかけてる。
こういう時の父さんには逆らわないほうが良さそうだ。




