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狩らないでください“狩人”さん!  作者: 良心の欠片
第1章 ドラゴンと人
4/48

4 “ダルク”到着


 “ダルク”が到着する日を迎えた。 

 麗らかな朝日に照らされ、多くの人が集落の入り口で固唾をのんでいる。

  

 そして、私もまた固唾をのんでいた。

 多分、他の人とは違う意味で。


(“赤い狩人”ユラン……)


 頭の中で、要注意人物リストを整理する。

 ユランという人物は“ダルク”の中で人気が高い。

 なぜなら、強いからだ。

 

 強い、そう強いのだ。

 では、強いとはどういうことか?


 ……モンスターをめっちゃ狩っているということだ!


「レオン……」


 家で留守番をしているドラゴンを案じる。

 今からこの集落を訪れる狩人たちは、レオンを見ればすぐに狩ろうとするだろう。

 

 狩人の本質は、モンスターを狩ることだから。



 カーンッ カーンッ カーンッ


「来るぞ!」

「“ダルク”だ!」


 集落に鳴り響く鐘と共に、道の彼方から人影が見えた。

 遠くからでも大きいとわかる体躯、背にある武器は自身よりも大きい。

 彼らが“ダルク”か。


「めっちゃ狩人だ……」


 周囲が歓喜に溢れる中、一人絶望に打ちひしがれる。

 あんな人たちに襲われたらモンスターもたまったものではない。


 もしもドラゴンと過ごしていることがバレた時、レオンと協力すれば狩人を撃退できるのではないかと希望をもっていたが、それも夢のまた夢だった。


 バレたら狩られる。

 絶対に狩られる。

 なんなら、レオンとセットで私も狩られる。


(バレたら狩られるバレたら狩られる)


 頭の中で恐ろしい言葉が反芻される。

 もうキャパオーバーだ。



 人々が花を撒く中で、私は静かにその場を後にした。

















 “ダルク”がこの集落に来てからというもの、大変な賑わいを見せた。

 そのおかげ、いやそのせいで“ダルク”は暫くこの集落に留まることになった。


 パシャ


「“ダルク”のリーダーが気を利かせて、ここでの滞在期間を伸ばしたらしいよ」


『クルル』


 パシャパシャ


「確かにファンサービスは大事だけど、そんなに滞在しなくてもいいと思う」


『クールル』


 バシャッ


「こっちにとっては神経をすり減らす期間だからねっ!」


『クルッ』


 森の中にある泉で、レオンの鱗を洗いながら愚痴を流す。

 キラキラと光を反射する鱗は水晶のようだ。

 荒んだ心も少しだけ落ち着く。


「レオンって何ていうドラゴンなのかな」


『クルルー』


 バサバサ


 水を払うように、レオンが翼を広げる。

 波打つ水面がキラキラと反射する。


 私は、優美に立っているドラゴンをじっと観察した。


 顔は凛々しい感じで、体は人を2、3人乗せられそうなくらい大きい。

 鱗の色は不思議な色で、オパール色とでもいうのだろうか。

 全体的には白く見える。

 でも、光のあたり具合によっては虹色にも見える。


「そもそもドラゴンって呼ばれてない可能性もある……」


 元の世界でも、ドラゴン・竜・ドラゴとか色々な呼ばれ方があった。

 今度、モンスター図鑑か何かを借りてみよう。


「ん?待てよ、私って文字読めたっけ?」


『クックルー』


「え、君そんな鳴き方したっけ?」


 突然の鳴き方に、さっきまで考えていたことが吹っ飛ぶ。

 そのままレオンと水遊びに突入し、その日の昼は楽しく過ごした。



 


























 楽しく遊んで過ごしたツケがまわったのだろうか。

 次の日の朝、集落の長から呼び出された。


「い、一体何事ですか」


 集落の中央にある屋敷に連れ去られ、上等な椅子に座らされた私は開口一番にそう言った。


「ほっほっほっ」


 目の前に同じように座る長老は、優雅にお茶を飲みながら笑っている。

 いやいや、おじいちゃん。笑ってないで答えて?


「………長老」


「わかっておる」


 背後に控えていたお付きの人が長老に声をかける。

 ありがとう、お付きの人。


「今日お前さんを呼んだのは他でもない」


「………」


 一体なにを言われるんだろう。

 まさか……レオンのことがバレた?


「お前さんに宴会の準備を手伝ってほしいのじゃ」


「……宴会」


 よかった……。レオンのことじゃなかった。

 安堵の息を吐きつつ、一体何の宴会なのかと疑問に思う。


「実は“ダルク”の方々に歓迎会を開くことになっての」


「はあ」


 まあ、出迎えの時の熱量を見たら、そうなるのも当然か。

 そんな“ダルク”のための宴なら、誰もが手伝いたがると思うけど。

 人手がそんなにも足りないのだろうか。


「お前さんも宴に参加したいじゃろう?」


 ニコニコと見当違いなことを勧めてくる長老に、どう答えていいものかと悩む。

 “ダルク”の人たちを歓迎していないなんて本当のことを言ったら、私はこの集落から追放されること待ったなしだろう。


「いやあ、……ははは」


 とりあえず、曖昧な態度でやり過ごす。

 そうすれば、相手が勝手に都合のいいように解釈する。

 上手い嘘が言えない場合の苦肉の策だ。


「……長老、嘘はいけません」


(え、嘘?)


「嘘はついておらんぞ」


「しかし、本当のことも言っていません」


 渋い顔をした長老の背後から、お付きの人が苦言を呈した。

 私は一体どんな嘘を長老につかれていたのだろうか。


「長老が申し訳ございません。如何せん歳をとっているもので、善悪の分別が曖昧なようです」


「本人、本人ここにおるから」


「先程このご老体が言ったことは、重要なことを隠しています」


「おお、無視されたわい」


 お付きの人が大切なことを言おうとしているのに、全く集中できない。

 長老とこのお付きの人の関係性が、とてつもなく面白すぎる。


「長老の言う通りに宴に参加した場合、あなたは宴に参加できません」


「??」


 どうしよう。

 言葉は理解できるのに、内容が理解できない。


「なぜなら、あなたには裏方の仕事を手伝っていただきたいからです」


「裏方?」


「はい」


 詳しく話を聞くと、どうやら宴の人手は足り過ぎているが、それは表の仕事のみらしい。料理の盛り付けやその他諸々の“ダルク”の人たちの目に触れない仕事には、まったく人が集まっていないそうだ。


「皆、“ダルク”と関わりを持ちたいようで、宴当日の料理担当がいないのです」


「わあ、それは、なんというか……」


 眉間の皺を揉んでいるお付きの人に、心の中で手を合わせる。

 これが中間管理者の辛いところなのだろう。

 最高管理者である長老は、呑気にお茶をすすっている。


「ですから、あなたがこの仕事を引き受けて下さるのなら有難い限りなのですが」


 下手(したて)すぎるお付きの人に思わず同情する。

 しかし、できる限り“ダルク”の近くには行きたくないという思いがある。

 どう断ろうかと悩んでいると、長老が口を開いた。


「お前さんがもし断った場合、今後の生活に支障をきたすかもしれないのう」


「え?」


「長老!」


 つまり、長老は脅しているのだ。

 これからも平和に集落で過ごしたいのなら、宴の裏方仕事を引き受けろと。


「タヌキめ……」


「いえ、それはタヌキに失礼というものでしょう。人でなしで十分です」


「聞こえておるよ?」


 そして、私は“ダルク”のための宴準備に参加することになった。












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― 新着の感想 ―
そもそも新しい住人大歓迎とか言っててそういう態度なのは頭が悪すぎる…… だから人が次々去ってくんだよ
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