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狩らないでください“狩人”さん!  作者: 良心の欠片
第3章 南の地
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39 南の集落 ガダーン



「あっっつい!!」


「これを被れ」


 バサっ


 伝統的な文様が刻まれたその布は、私の頭に影をつくった。

 そのおかげで、心なしか涼しくなったような―――。


「いや、暑い!!」


 私たちは今、ガダーンに向かっている道中だ。









 幻惑の森の放火犯疑惑を晴らすため、私はガダーンに行くことになった。

 そして、旅の護衛に選ばれたのはユラン。

 この二人でガダーンを目指すことになったのだが、問題が発生していた。


 私が、極度の暑がりだったことだ。


 元の世界ではクーラーが手放せなかったことを忘れていた。 

 それに、夏は絶対に外に出なかったことも思い出す。


「ユランさん……私のことは置いていってください……」


「くだらないことを言うな、来い」


「鬼だ……」


 ヤシの木みたいな木にもたれている私に、彼が近づいてきた。

 また、アレをされるのか。


 どんどん目が死んでいく私に構うことなく、彼は私を横抱きにしてきた。


 もう、この運ばれ方が彼の中でテンプレート化してきていることが否めない。

 周囲に人がいなくてよかった。


「行くぞ」


「はいぃ……」


 炎天下の中、彼は涼し気に走り出す。

 砂に足をとられることなく、軽やかに走っている。


 私は視界の右側に広がる砂漠を眺めた。


 顔に当たる風は熱く、とても涼しいとは言えない。

 左側を見上げると、頭と口元を布で覆ったユランの顔が見えた。


 こんなに布で隠れていても、顔面の美しさが醸し出されている。



 どうかガダーンという集落でこの美貌が悪さしないようにと希うばかりだ。






















「きゃあ~~~!あの人って―――」

「ノウゼンにいたはずじゃ―――」

「ユラン様ーーー!!」


(南の地でも、ユランさんの人気は健在だった……!)


 ガダーンと呼ばれるこの集落は、建物が土でできていた。

 砂塵と日光が厳しいこの地だが、人々の顔色はとてもよかった。


「よくきてくれた」


「きゃあ~~~!スタール様もいらっしゃるわ!」

「こっち向いて~~!」


 ファンサービスをしながら現れたこの地の後継者。

 やはり垂れ目の人間は女たらしなのかもしれない。


 熱烈な歓迎を受けながら、私たちは集落の中央へ連れて行かれた。






 大理石のような石でつくられた宮殿に案内された私たち。


 目の前には、見覚えのある豪華な椅子がある。

 そして、そこに座っているのは立派な赤髭をたくわえた壮年の男性だった。

 この人が、ガダーンを治めている長だ。


「よくぞ参った」


 歓迎の言葉と共に、そばに敷いてあった絨毯へ座らされる。


 そのことを確認した長は、手でなにか合図をした。

 すると、奥から次々と料理が運ばれて来た。


「宴を楽しんでいってくれ」


 突然始まった宴は、日が傾いてもなお続いた。

 流石に疲れてきた私は、そっと席を立った。


 隣にいたユランは、人に埋もれていて抜け出せなさそうだった。

 可哀想に……。




「涼しい~」


 テラスには私だけしかいない。

 中から聞こえてくる賑やかな声から離れ、一人で涼やかな風を満喫する。


 昼間の暑さが嘘のように、夜はとても涼しい。

 服の隙間から入ってくる夜風が気持ちいい。


 半袖半ズボンでよかったと満足していると、背後に気配を感じた。


 振り返ると、例のいけ好かない若様がいた。


「あー、御機嫌よう?」


 偉い人に対する挨拶なんてこれっぽっちも知らないため、適当な言葉が口から出る。

 

「ご機嫌はよくないな、放火犯」


「だから、違いますって……」


 いくら説明しても、この人は私のことを放火犯だと断定してくる。

 実際、放火の片翼は担っていたと言ってもいいいため、本当に困る。

 責任をとらされるんじゃないかと、めちゃくちゃ冷や冷やしているのだ。


「お前が幻惑の森に火をつけたことなどお見通しだ」


「証拠はなんですか?」


 ここまで断定しているのだ。

 きっと決定的な証拠をもっているに違いない。


「勘だ!」


「勘かい!」


 この若様、意外とポンコツかもしれない。


 しかし、野生の勘は優れているようだ。

 放火犯を勘だけで当てるとは……。


「さっさと白状したらどうだ!」


「もっと明確な証拠を突きつけてほしいんですけど」


 どうせ捕まるなら、決定的な証拠がほしい。

 なあなあで裁かれるなんて嫌だ!


「………ふん、いいだろう」


(ま、まさか決定的な証拠が……!)


「ならば地竜の禊を受けてみろ!」


「地竜の禊?」


 ふんぞり返っている彼には申し訳ないが、全く意味が分からない。

 よくわかっていない私にやっと気づいた彼は、地竜の禊について説明してきた。

 

「―――つまり、噓発見器?」


「ん?なんだそれは」


「いえ、こっちの話です」


 簡単に言うと、地竜の禊は噓発見器だった。


 地竜の狭間と呼ばれる大地の亀裂があり、そこで何かを言う。

 それが嘘だとその亀裂から唸り声のようなものが聞こえてくるらしい。


 これが、地竜の禊と呼ばれる儀式なのだそうだ。


「明日、お前の嘘を暴いてやろう!」


「え?明日!?早くないですか?!」


 思ったよりも死刑宣告が早かった。

 どうやら私は、明日放火犯として捕まってしまうようだ。


「はっ、やましいことがないのなら逃げないことだな」


 声高らかに、彼はテラスから去っていった。

 

 これは困った。

 まさかあの人が噓発見器を隠し持っていたとは……。


 テラスで悩んでいると、宮殿の人がやってきた。

 その人に部屋へ案内してもらい、豪華な部屋へ連れてこられた。

 疲れていたようで、私はその部屋ですぐに寝てしまった。






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