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狩らないでください“狩人”さん!  作者: 良心の欠片
第2章 追うは狩人の性
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28 恋は追うもの



 ユランの旅の候補者がノウゼンにたどり着いた次の日。


 私は一人の時間を満喫していた。




「いや~、最高だなぁ」


 目的の品を買い、ルンルンで宿に帰る道中。

 宿の前に人だかりができているのが見えた。


 あれでは入口に入れないと思い、そっとその集団に近寄る。


「ちょっと、アンタどっかいきなさいよ!」


「そっちこそ!」


「ねえ、私たち二人だけで抜け出しましょうよ」


「「抜け駆けすんな!!」」


(え、漫才?)


 華麗な掛け合いに、思わず感動する。

 しかし、あの三人の美女、昨日見た気が……。


(ああ、ユランさんの!)


 彼女たちはあの人の旅の候補者たちだ。

 

 思い出せたことにすっきりする。

 すると、彼女たちに取り合われている人物の顔がちらりと見えた。


「ユランさんだ」


 我関せずといった顔の彼が、美女三人に囲まれている。

 ユランが飛び抜けた美形であるため、なかなか様になっている。


「ハーレムだ……」


「なにが?」


「……っ!」


 肩から聞こえてきた声に、驚きで息がつまる。

 急いで振り返ると、そこにはデイルが立っていた。


「心臓に悪い……」


「ごめんごめん」


 フードを被った彼は、まったく悪いと思っていなさそうに謝ってきた。

 

「あ~、あいつ捕まってるね」


 デイルの視線の先には、囲まれているユランがいた。

 何かを知っていそうな彼に、どういうことなのかと視線で問う。


「リーダーに親睦を深めるように言われたんだろうけど、あいつが素直に従っているのは意外だな」


「まあ、確かに」


 リーダーに悪態ばかりついているユランであれば、言うことなんて聞きそうにないのに。


「あれ、嫉妬?」


 デイルの冗談めかした言葉に、私は深く頷く。


「そうですね……」


「え?」

 

 目を見開く彼に、私は真剣に告げた。


「私も美女に囲まれたい」


「そっちかー」


 なぜ落胆しているのかわからないが、ハーレムというのは誰しもの夢なのだ。

 彼にとっては、あんな光景は見慣れているのかもしれないだろうが。



 デイルと談笑していた私は気づかなかった。

 ユランがこちらをじっと見つめていたことを。
























「よお、元気だったか」


「リーダー……」


 “ダルク”の支部に行くと、リーダーが出迎えてきた。

 なお、ユランはデイルが狩りに連れて行った。

 

「まさかユランが狩りを渋る日が来るとはなぁ」


「ずっと監視されるこちらの身にもなってください……」


 すべてを分かっているかのようなあの視線が、本当に恐い。

 実は逃げようとしていることもバレてるんじゃないかと気が気でない。


「そんじゃあ、お前さんの逃亡経路を確認しておくか」


 逃亡か。

 改めて他人から言われると、自分が悪いことをしたように思えてしまう。

 

「その、私がいなくなった後、ユランさんの竜禍はどうするんですか?」


 竜禍対策の餞別を渡すつもりではいるが、それも永続的ではない。

 なにか目星でもついているのだろうか。


「ああ、それなら大丈夫だ」


「?」


 穏やかな顔から察するに、どうやら何らかの手立てがあるらしい。


「あいつの竜禍はほぼない」


「…………うん?」


 耳が悪くなったのかもしれない。

 リーダーの言っていることが理解できなかった。


「だから、ユランの竜禍はほぼ治まってるんだよ」


「はい?」


 いやいや、おかしい。

 だって、昨日もおとといも竜禍が辛いからって同じベッドで寝た。


 そろそろ部屋を別にしようと言っても、聞き入れなかったのはあの人だ。


「え……じゃあ、もう私が中和しなくてもよかったってことですか?」


「え、お前さん、まだあいつの竜禍を抑えてるのか?」


「「…………」」


 無言で顔を見合わせる。

 お互いの表情は無に等しい。


「一応聞いておくが、竜禍は今までどうやって抑えてたんだ?」


「……手をつなぐだけです」


「そうかそうか、ついでに時間と場所も教えてくれるか?」


「…………」


 目の前に座るリーダーからそっと視線を外す。

 なんだろう、正面からすごい圧を感じる。


「まさか、男女であるまじき行為はしてないよなぁ」


(……同衾ってアウトかな)


 男女の距離感について頭を悩ませる。

 これは、何を言っても怪しいような気がしてきた。


 これはもう正直にいくしかない。


「同衾してました」


「よし、教育的指導だ」


「ちょ、待ってください!」


「問答無用!」


 スイッチの入ったリーダーによって、私は男女の健全な距離感についてコンコンと教えられた。


 正直、私は無罪だ。

 どうしてもって聞かなかったのはユアンの方だ!


 そう弁明してみたが、答えは―――


「あいつには元から期待していない」


 だった。


 いや「あいつは息子同然だ」とかほざいていなかった?

 この人、息子同然の存在に期待もしていないってどういうこと!?


「とにかく、これから変な男にひっかからないようにしろよ」


「いや、私に恋人とかできな―――」


「男ってのはなぁ、追いたい生き物なんだよ」


「…………」


 その日は、男性がなんたるかをリーダーから懇々と説明された。


 ……いや、逃亡経路の確認は!?





 リーダーが頼りなさそうなのを感じ取り、私は後日に一人で逃亡経路を確認することにした。










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