6.共に生きて。
――物心ついたころには、理解できていた。
自分は両親の実子ではなくて、どこからか拾われてきた存在だと。そんな考えを察したらしく、父さんは困ったように笑いながら話してくれた。
俺の予想は正しく、血の繋がりがないことを。
正直、それでもショックがなかったわけではなかった。
でもそれ以上に、幼い日の俺は自分を育ててくれている両親へ感謝したのだ。
「だから、かな。父さんが俺を守って死んだ時、母さんに恨まれてる、って思いこんだのは。それで『許してほしいのに、その機会すら与えらえない』とか、馬鹿みたいに自分を追い詰めたんだ」
「達治さん……」
俺の話を黙って聞いていた陸は、いまにも泣き出しそうな表情になっている。
それを見て思うのは、この青年はやはり優しいということ。そして真剣に、相手の気持ちになって考えられるからこそ、どこか気後れしてしまうのだろう。
しかし、いま彼にそう考えさせているのは俺だった。
それはとても申し訳ないので、あえて明るい調子で続ける。
「もっとも、さっきの一件があって母さんからは拳骨食らったよ。そこでようやく、俺は自分の考えが馬鹿げてるって気付けたんだ」
――そう。きっと、一生忘れない。
あの日、母さんは言った。
『アンタの命は父さんが守った、大切な宝物やからね! それを勝手に捨てようとするなら、母さんはそれこそ許さんからね! 手ぇ出るよ!?』――と。
きっと血の繋がりなんて、些末なことだったのだ。
両親は俺が思う以上に俺のことが大好きで、だからこそ俺はそんな両親を尊敬している。自らが産んだ子ではないとしても、共に生きてきた時間がある。一緒に悩んで、笑って、悲しんだ経験は何にも代えがたいのだ。
ただ一つ、文句があるとしたら。
母さんは先ほどの言葉を口にしながら、俺を思い切り殴っていた程度だったか。
「達治さんのお母さん、すごいです。本当に、素晴らしい方ですね」
「……面と向かって言われると、こっちが恥ずかしいな」
陸がしみじみ言うので、俺は軽く茶化した。
すると、青年も笑って頷くのだ。
そして――。
「それじゃ、探索を再開するか!」
「……分かりました!」
俺はそんな相手を確かめて、そう宣言するのだった。
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