3.赦しを請うということ。
ちょっとこのへん、リライトしたいな、と思いつつ。
「玲音ちゃん、たっちゃんが……!」
「ダンジョン内にダンジョンなんて、そんな馬鹿げた話……!? いや、それよりも今は師匠たちの無事を確認するしか!!」
涙目で訴える涼子の声を耳にして、玲音は唇を噛みながら必死に思考を巡らせる。
そして、即座に緊急通信用のダンジョン特化型トランシーバーを取り出した。たしかもう一つは陸が持っていたはずで、上手くいけば安否の確認が可能。
そう考えたのだが、現実は上手くいかないものだ。
「……これ、ゼクスさんに渡したやつ、だよね?」
「くっ……! こんな時に限って、どうして!!」
着信を知らせるノイズが、ほどない場所から聞こえてくる。
涼子が拾い上げたそれは間違いなく、トランシーバーの片割れだった。玲音はいよいよ苛立ちを隠せず、思い切り舌を打って歯を軋ませる。
こんなイレギュラーな状況は、まず聞いたことがなかった。
そもそも、このダンジョンはいったい――。
「いや、そんな推察は後からでもいい。どうにかして――」
だが、そこまで考えてから。
玲音は静かに歩を進め、そして――。
「この大穴から、師匠を助け出さないと……!」
眼前に広がる暗闇を睨みつけるのだった。
◆
「――陸、足元気をつけろよ?」
「ありがとうございます。そっちは、大丈夫ですか」
「あぁ、思ったよりも足場は安定してる、かな」
先行する俺の後方を歩く陸に、細かく無事を確認する。
その都度に彼もまた、俺のいる場所の安全性を確かめていた。このような状況なのだから、できる限りの声かけは行うべきだろう。
配信も今日ばかりは、いったん中止。
リスナーのみんなには悪いけど、余裕がまるでなかった。
「……本当に、すみません」
「ん……どうした、陸?」
などと考えていると、不意に青年が謝罪を口にする。
驚きつつ訊ねた俺を見て、彼は沈んだ表情でこのように続けた。
「ワイのせいです。ワイがもっと注意していれば、こんなことには……」
その言葉はとかく自罰的なもの。
おそらくは陸自身の持つ、自己評価の低さに起因しているのだろう。言い換えれば、自己肯定感の低さ、とも表現できるだろうか。だからきっと、何か良くないことが起これば、決まって自分を責めてしまうのだ。
「それに、ワイは前に出て戦うこともできない。……戦力にならないんです」
そして、何かにつけて己を『役立たず』だと卑下する。
誰に言われるわけでもなく、何もかもをマイナスに思考してしまう。そんな彼の姿を目の当たりにして、俺はどうしようもなく――。
「そうだな。もしかしたら、そうかもしれない」
「……え?」
――昔の自分を見ているようで、しんどくなった。
何もかも己に責任があって、どうにかして裁かれたくて仕方がない。誰かに赦しを請うようにして、しかしその本質はもっと別にあった。
ただ必ずしも俺と同じとは限らない。
だけど、この陸という青年の姿には既視感がある。だから、
「でも、もしかしたら違うかもしれない。……なぁ、一つだけ良いか?」
「……は、はい」
俺は『ある人』から教わった考えを伝えるのだ。
「あまり、そうやって『思い上がる』なよ?」――と。
それはきっと、俺が最も尊敬する人の言葉だった。
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