1.配信開始前に、発覚したこと。
ここから新章。
新作のダンジョン配信物も、あとがきから。
「さて! それじゃあ、改めてよろしくな!」
「は、はい……!」
声を張り上げると、陸は分かりやすく震えあがっていた。
俺はそんな彼の様子を見て、少し反省する。その上で、今回の目的を自分の中だけで確認する。大前提に今回の配信は、陸の今後にとって少しでも有意義な時間にすることだった。
こちらから示すことはないが、彼が何かを掴める機会になればいい。
そして、少しでもいいから自信に繋がれば良かった。
「三人とも、準備ができたなら早速――」
「……あ、達治さん? 少しだけ気になってたんですけど、ええですか」
「ん、どうした……?」
そう思いながら、いつものように開始の音頭を取ろうとした瞬間だ。
意を決したようにして、陸が小さく手を上げたのは。首を傾げながら訊ねるとまた微かに視線を泳がせた陸だったが、小さく息をつくとこう答えた。
「『秘境のダンジョンちゃんねる』って、サムネを作らないんですか?」
「サムネ……って、なんだ?」
「サムネイル――本なんかでいう『表紙』のことです。昨日、寝る前に確認してたら設定されてなかったので」
「それって、そんなに大切なの……?」
目を丸くする俺。
一生懸命に用語の解説をする陸。
そこに入ってきたのは、こちらと同様に無知な涼子だった。俺たち三人の間に微妙な空気が流れたのを察して、助け舟を出してくれたのは玲音である。
「普通はあるんですよ、師匠。……せっかくですし、ゼクスさんに依頼してみてはどうですか?」
「できるなら頼みたいけど、そんな簡単に作れるのか?」
勝手が分からないので、俺は申し訳なく思いつつ訊ねた。
すると陸は、しばし考えてから――。
「本当に簡単なものなら、スマホのアプリで作れます……けど」
「マジか、すげぇな!?」
「いやいやいや! そんなたいしたものやなくて、あくまでテンプレを少しいじったくらいですから!?」
すでに案が浮かんでいるのか、陸は眉間に皺を寄せながらそう言った。
俺は感動し、思わず声が大きくなってしまう。すると例によって、青年は大慌てで自らの評価を下げる発言をしていた。
しかし、少なくとも俺にはできない芸当だ。
それに迷わず答えたあたり、編集技能については彼も自信があるらしい。
「もしかして、そういうの好きなのか?」
「あ、いえ…………まぁ、嫌いではないです。それに――」
俺の問いかけに、陸は恥ずかしそうに頬を掻きながら答えた。
「アクシズの動画とか、編集してたの全部……ワイなので」
「ぜ、全部……!?」
すると、そこに食いついたのは玲音。
驚愕したらしい彼女は、いつになく青年との距離を詰めて言った。
「アクシズの動画投稿数って、世界屈指ですよ!? しかも編集の技術の高さは界隈でも有数ですし、しかもそれを全部……ゼクスさん一人で!?」
「あ、あうあう……ワ、ワイは好きでやってただけでして……!?」
――なんだろう。
とりあえず凄いのは分かるのだが、俺と涼子は置いてけぼりを喰らっていた。
しかし、俺たちよりも界隈に長くいる玲音があのように驚くのだ。きっと陸のやっていることは、並大抵のことではないのだろう。
だったら、彼にはそれを自覚してもらいたい。
俺はそのように考えて、改めて依頼することにした。
「もし良かったら、頼めるか?」
「え、はい……十五分くらいもらえれば、できるかと」
「じゅう、ご……!?」
玲音がまた、絶句している。
対して俺と涼子は互いに顔を見合わせるしかできなかった。
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