8.憧れとの共通点。
あとがきの新作ダンジョン配信?もよろしく!
「それから、かな……? たっちゃんが、無理なお願いを断るようになったのは」
「………………」
涼子の話を聞き終えて、陸はただ黙るしかできなかった。
彼女の身に起きたこともそうだが、達治の奉公精神は自分と比較するものでないように思えてしまう。彼のそれは俗にいう、何かしら強迫観念のようなものだ。
理由までは、分からない。
それでも青年にとって、達治という人物は――。
「敵わないです。……絶対に」
少なくとも、自分などよりも高尚な人に思えてしまった。
苦難を乗り越えて、自分で答えを見つけ出す。誰の力を借りなくても、正しい道を進んでいける。そんな気高い人物のように見えて仕方がなかった。
だから仮に涼子が、陸と達治の共通点を語ったとしても受け入れられない。
そのように畏れ多いことは、できなかった。
「それは本当どうですかね。たっちゃん、言ってたんです」
「…………え?」
そう考えていると、夜空を見上げながら涼子が語る。
静かに。ゆっくりと振り返って、優しい笑みを浮かべながら。
「『自分の間違いは、誰にも頼ったら駄目だと信じていたこと』……だって」
「誰にも、頼ったら駄目……?」
「そこについては、ゼクスさんも同じじゃないですか?」
「……そ、それは…………」
的を射た言葉に、青年は何も返せなかった。
たしかに彼女の言う通り、陸と達治の共通点はそこだ。彼もまた誰に頼ることもせず、一人で抱え込んでいたのだろう。
その一点については、あるいは――。
「ゼクスさんも、頼ってくださいよ。……アタシたちを」
「……涼子、さん?」
「だって――」
その時だ。
涼子が弾ける笑顔で、こう陸に告げたのは。
「アタシたちは、もう『友達』なんですから!」――と。
陸は思わず息を呑んだ。
ずっと自分の殻に籠ってきた彼にとって、その響きはあまりに未知。知識の上にあるだけで、実感には程遠い言葉に他ならなかった。
それ故に陸は動揺を隠せない。
ただ否定するには、その言葉の温もりは離れ難かった。
「自分なんかが、いいんですか……?」
だから、ようやく絞り出した答えは臆病な問いかけになる。
しかし涼子は気にした素振りもなく、迷わずに頷いてみせるのだった。
「もちろんです!」
「……っ!」
それに彼は胸を高鳴らせる。
あまりの眩しさに、思わず気後れしてしまう。
だけど、ここまできたら手を伸ばす以外に選択肢はなかった。
「……そう、なんですね」
陸はゆっくりと目を閉じて。
とかく穏やかな表情になって、答えたのだった。
「不束者ですが、お願いいたします」
そして思うのだ。
自分は改めて『達治という憧れ』を理解しなければならない――と。
https://ncode.syosetu.com/n4346jm/
下記リンクから!!
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!