8.今回の配信は音声のみでお送りいたします。
なんと、ここで章の区切りです(*'▽')
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「えー……リスナーのみなさん。映像はどんな感じですか?」
『曇ってまーす』
『その隙間から時々、辛うじて見えるくらいでーす』
『REC! REC!』
今回のアーカイブは、残さないことにしようか。
俺はリスナーのみんなに声をかけながら、内心でそう考えた。だが何はともあれ、せっかくの温泉である。玲音が道具袋の中に大きめのタオルを複数枚所持していたので、俺たちは各々それを身に着けて入浴することにした。
玲音は困惑していたが、涼子の方は完全に乗り気。
少しばかり遠慮がちな弟子の手を引いて、そそくさと岩陰に移動していった。
「えーっと、配信の規約はどうなってたっけ……?」
『全裸はBANだよ』
『よほど過激じゃなければ大丈夫だったはず』
『REC! REC!!』
俺の言葉に、コメント欄はそんな反応を示す。
しかし各々に確証はないらしく、どうにも意見は統一されなかった。
「諸説あり、か。これは音声だけの方が良さそうですね」
『その方が安全、健全だな』
『だな。チャンネルBANはシャレにならん』
『R……E、C…………』
なので、俺は配信をラジオモードに切り替える。
これによって映像はリスナーに届かず、その場の音声だけが聞こえる状況になった。そしてカメラは不要となったので、温泉の水がかぶらない場所に置く。
あとは放送事故が起こらないように、自分のスマホで配信を確認しつつ……。
「ほらほら、レインちゃん! そんなに緊張しなくても大丈夫だよ!!」
「リョ、リョウさんは恥ずかしくないんですか……!?」
「え? なんで恥ずかしいの?」
そんな時だった。
岩場の陰から、女性陣二人が現れたのは。
「おー、こっちはもう入ってるぞー」
「たっちゃん、こっちもいま行くよー!」
「リョウさん!? 引っ張らないで!!」
そして、湯気の中にタオルを巻いた涼子と玲音の姿が見えた。
従妹はいつもと変わらぬ明るさで、弟子の方はどこか恥ずかしげに内股になりつつ。二人は俺を認めると、少しだけ離れた場所にゆっくりと腰を落ち着けた。
そんな会話をマイクが拾ったのか、コメント欄は一気に盛り上がる。
『たっちゃん! 実況求む!!』
『リョウちゃんは、いまどんな感じですか!!』
『いいや、俺はレイン殿の状況が知りたいぞ!?』
俺はそんな欲望に忠実なコメントたちに、思わず苦笑した。
だが、そんな中だかこそだろうか。
『そういえば、ゼクスくんはいますか?』
「ん、ゼクス? そういえば……」
ふと毛色の違うコメントに、引っ掛かりを覚えたのは。
でも、たしかにそのコメントの言う通りだった。俺はさっさと準備を整えて湯に入ったのだが、ゼクスは何やらモタモタしていた気がする。
そしてまだ、彼は姿を現してはいなかった。
近くにある着替えに使った岩場以外に、身を隠せそうな場所は見当たらない。
「少し、探してみるか……?」
その状況を不思議に感じたので、俺は女性陣に断ってからゼクスを呼びに戻った。
すると、そこにあったのは――。
「…………え?」
沈黙するコラボ相手の姿。
ゼクスは鼻から一筋の血を垂らしながら、白目をむいていた。
そしてうわ言のように、こう口にする。
「ワイ……もう、むりですぅ……」――と。
俺はそんな思いもよらない事態に、しばし唖然とするしかなかった……。
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配信系ラブコメです(*'▽')ヒロインはギャル!
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