5.仮面をつけていた者の願い。
(*‘ω‘ *)……一日限定で、感想欄開いてみます(ドキドキ
「玲音、前に電話で話したことなんだけどさ」
「師匠もやっぱり思いましたか?」
「まぁ、な……」
――その日の夜。
夕食を終えてから俺は、縁側で涼む玲音に声をかけた。この地方特有の蒸し暑さに、すでに半袖短パンの彼女は振り返ると、すぐにこちらの意図を理解してくれる。それというのも先日、ゼクスについて調べていた時にした通話内容。
俺は彼の人となりを調べた上で、妙な違和感を覚えた。そして、それは弟子である玲音も同じくなようで……。
「ゼクスさんって、どこか芝居がかっている気がするんですよ」
「……芝居、か。俺も同じ意見だよ」
こちらが縁側に腰かけるのを待ってから、そう切り出すのだった。
ゼクスは俺が調べた限りだと、とかく自由人でお調子者。しかしながら玲音から見ると、そこには一枚の仮面があるように感じられるのだろう。それについては、俺も同意見。
言ってしまえば、以前までの玲音を見ているような気がしてしまった。
だからこそ彼女もゼクスと触れ合い、そう思ったに違いない。
「世間では正直、あまり良い噂を聞かないんですよ。でも実際に話してみると、ゼクスさんから迫ってくるような雰囲気は感じなくて」
「なるほど……たしかに、玲音ほどの美人をスルーする性格には思えないよな」
「え、あ……は、はい……」
「ん? どうした、玲音」
「なんでも、ないです……」
「……そうか?」
何やら、玲音の顔が赤らんでいるように感じた。
でも本人が何でもない、というのなら何でもないのだろう。きっと暑さに慣れないのだと考え直して、俺は気持ちを切り替えるように咳払いを一つしてから、こう訊ねるのだった。
「それで玲音はあえて、俺とゼクスを引き合わせたのか?」
「…………」
それは、コラボを提案してきた彼女の真意について。
俺の言葉に玲音はしばし黙り込み、空を見上げて話し始めるのだった。
「……はい、そうです。師匠ならきっと、ゼクスさんの本心を引き出せるんじゃないか、って思ったから」――と。
どこか沈痛な横顔に、こちらは何も答えない。
ただ、玲音の考えをしっかり聞こうと思ったのだ。
「なんというか、彼を見ていると以前の自分を思い出すんです。僕も自分の気持ちに蓋をしていて、だけど師匠たちに出会って救われました。だから――」
彼女はふっと息をついてから。
真っすぐな眼差しで俺を見ながら、こう言うのだった。
「師匠、ゼクスさんの力になってあげてください……!」
そんな玲音の言葉に、俺はほんの少し喜びを抱く。
前の彼女であればきっと、誰かのために行動を起こす、という決断はしなかっただろうから。そのキッカケに少しでもなれたのなら、それはこの上なく嬉しいことだった。
だけど、今回の一件は少し場合が違う。
俺はしっかりと玲音の頼みを受け止めてから、言葉を選んで口にした。
「……まだ、分からない。ゼクス本人がそれを求めているのか、その判断をできるほど、俺たちは彼のことを知らない。このままだと、ただの独善になる」
本人の気持ちも知らず、己の考えを押し付けるのはエゴに他ならない。
だけど俺はその前提を置いても、玲音の優しさを無下にする考えはしなかった。だから、少しうつむき加減になった彼女の頭を撫でながら、こう告げるのだ。
「だから、まずは楽しもう。……明日のコラボ配信を、さ?」
「……師匠」
すると玲音は、少しだけ呆気に取られたような顔をして。
しかし、すぐに満面の笑みを浮かべて頷くのだった。
「はい……! 分かりました!!」
こうして俺たちは、コラボ配信へと向かう。
その先で何が待っているかは、まだ分からなかった。
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こちらの新作もよろしくです。
※ダンジョン配信も、近日頑張って更新します……!
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