4.二枚目な三枚目男子、ゼクス。
腰痛ひどいっす_(:3 」∠)_
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――腕のギプスも外れて、痛みもなくなってきた頃合い。
いよいよ俺と涼子が、この片田舎にアクシズのゼクスを迎える日がやってきた。玲音と一緒にくるという話だったから、迷うことはないだろう。
それはそれとして、俺が気になっていたのは涼子の気合の入り方だった。
「お前さ、それはやり過ぎじゃないか?」
「なに言ってるの、たっちゃん! これは序の口だよ! ねぇ、叔母さん!!」
「涼子ちゃんから聞いたがやけど、凄いイケメンの有名人がくるんやろ? そうとなったら出迎えも真剣にやらんなあかんちゃ!!」
「母さんまで……?」
もとい、俺の母まで嬉々として横断幕を手にしている。
そこに書かれているのは、アクシズのゼクス様いらっしゃいませ、という文言だ。手作り感あふれる愛嬌たっぷりなそれに、俺は思わず苦笑いしてしまう。
どうしてこうも、田舎民というのは舞い上がってしまうのか。
俺も他人のことを言えないが、七年の都心勤務経験によって少しはマシになっているようだった。有名人とはいえ、相手も同じ人間である。
「あまり困らせるなよ……?」
だから、ゼクスも委縮してしまうのではないか、と考えていた。
そんな時だ。
「お、なんや!? めっちゃ気前のええ出迎えやないか!」
どことなく似非を感じさせる関西弁が、耳に届いたのは。
声のした方を見ると、そこにいたのは動画でも確認した派手な赤髪の男性だった。苦笑する玲音をよそに、大口を開けて笑いつつ近寄ってきた彼は言う。
「お出迎え、ありがとさん! ゼクスや、よろしくな!!」
軽く見聞きしていたそれと、少しの相違もない人物――『アクシズのゼクス』は、俺に見向きもせず涼子に手を差し出すのだった。
◆
「……ほんで、こっちのオッサンが噂の?」
「一応、チャンネルの代表になってる『たっちゃん』だ。よろしくな」
ゼクスが俺にそう訊いてきたのは、一通り涼子との雑談を終えてから。
俺は努めて冷静に返事をし、彼もそれに対して何度も頷いていた。そして次に玲音の方を見てから、このように耳打ちをしてくるのだ。
「それにしても、隅に置けませんなぁ?」
「……は?」
意味が分からず、思わずそう言う。
するとゼクスはいやらしい表情を浮かべ、女性陣を交互に見るのだった。その上で彼はニタニタとしながら、このように続ける。
「アンタみたいなオッサンが、こんな別嬪さん二人も侍らせるなんて! 一歩間違えたら犯罪級の行いやで!?」――と。
その口振りが本気なのか、それとも冗談なのかは分からない。
しかし、涼子と玲音を見て喜んでいるのは確実だった。
「ほんで、どっちがアンタのコレなんや? ……両方か?」
「コレ、って……」
鼻息荒く、されども声は抑え気味に。
小指を立てながら興奮するゼクスに気圧されつつも、俺は答えた。
「俺と二人は、そんな関係じゃないよ」
涼子は言うまでもなく従兄妹で、妹のような存在。そして玲音は俺のことを師匠として、本気で慕ってくれている大切な弟子だった。そんな彼女たちに、色目を使うことなんてあり得ない。そのような行いは、裏切りのようにも思えるのだった。
しかしゼクスの方は、ケタケタと笑いながら肘で小突いて言う。
「またまたぁ、ホンマのこと言いや? せやないと――」
これまた本気なのか、冗談なのか分からない口調で。
「ハッキリせんと、オレが二人とも貰ってしまうからな!」――と。
俺はそんな、ゼクスのまさかの発言に唖然とした。
だが、件の彼は気にせず笑みを浮かべる。
それが俺とゼクスの出会いだった。
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