1.配信機材と、涼子の気遣い。
目が冴えたので、書いた。
ホントはオフにするつもりだったけど、滑り込み毎日更新(*‘ω‘ *)
※すんません、2023年5月16日は本当に間に合わんかったっす。
うおお……(喀血
ダンジョンにおける配信活動において、避けられないことはいくつかある。
モンスターとの戦闘もそうだし、ただそれ以上に金銭的ダメージが大きい事もあった。それというのも、機材の問題である。
「あぁ、いよいよ反応が悪くなってきたか……」
「んー……映像も、前より見えにくくなってるね」
繰り返すが、ダンジョン配信ではモンスターとの戦闘が避けられない。
そうなってくると、どうしたって撮影者諸共、機材にだって影響が出てしまうのだった。細かな理論は分からないが、ダンジョン内の映像を離れた場所へ届けるのだ。あのような空間に長く置かれてしまっていては、ガタもくるというもの。
そして、そもそも涼子が購入したのは最安価な初心者向け。
本来なら練習に使うべきもの、というコメントもされていた気がした。
「仕方ない。……買い替えるか」
「え、いいの!? たっちゃん!!」
こうなっては配信もできない。
なので俺が仕方なしにそう提案すると、従兄妹は目を丸くした。
「なんだよ。意外そうな顔して……」
「だって、たっちゃんの方から言うとは思わなかったし」
「……どうして?」
俺はその表情の意図が掴めずに首を傾げると、涼子は困ったような笑みを浮かべつつ頬を掻く。そうかと思えば、今度は嬉しそうな笑顔になって言った。
「ううん! たっちゃんも、もう立派な配信者だね!!」
「………………んん?」
さらに意味が分からずに、俺は眉をひそめる。
だがそんなこちらの気など関係ないらしく、彼女は立ち上がると嬉々としてこう口にするのだった。
「それじゃ、早速行こうか!」――と。
俺の手を掴んで、無理矢理に引っ張っていく。
なにがなにやら分からないが、俺はひとまず涼子について行くのだった。
◆
「(よかった! たっちゃん、昔みたいに元気になった!!)」
車を運転しながら、涼子はそう考えて笑顔を浮かべる。
彼女にとって達治がダンジョン配信に夢中になってくれたのが、よほど嬉しかったらしい。いいや、理由はそれだけではなかった。それ以上に、彼自身が『学生の頃のような活発さ』を取り戻してくれたことに、喜びを隠せないのだろう。
「(東京行ってから、たっちゃんの目が死んでいったからなぁ……)」
そう考えながら、涼子は助手席の達治を見た。
都心にある大学を卒業した後に、彼はそのまま東京の企業に就職。聞くところによると、そこは中々に劣悪な環境だったらしい。盆も正月も実家に帰らせてもらえず、どれだけ頑張っても昇給はなし、みなし残業という名ばかりの奴隷扱いもあったとのこと。
たまに涼子の方から足を運んでいたが、そこで見た働く達治の表情は、地元での活き活きとしたそれとは真逆。彼女は見ていることしかできない自分が、とかく歯痒かった。
「さっきから、なにニヤニヤしてるんだ……?」
「えー? なんでもー? えへへ……!」
だから彼が会社をクビになったと、そう耳にして深く安堵した記憶がある。その上で何か、彼が熱中できそうなものを必死に考えた。そこへ聞こえてきたのは、ダンジョンの存在。なにやら彼の帰郷の日程が決まったと同時期に、それは発生したということだった。
そうとなれば、渡りに船だろう。
涼子は急ピッチで配信機材を準備して、達治の帰還を待ったのだ。
「よかったよ、本当に……」
「…………だから、なにが?」
そんな少し前の出来事を思い返して。
涼子は無意識に、そんな言葉を漏らしていた。
達治は少しばかり呆れた表情をしているが、関係ない。
「ううん! なーんでもないっ!!」
涼子はいつものように、元気いっぱいに応えるのだった。
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