5.死すれば花実は残らず、生きてこそ笑顔は咲き誇る。
今回、視点変更多いけど勘弁してつかぁさい_(:3 」∠)_
――数十分前。
「涼子……!!」
「え……た、たっちゃん!?」
ダンジョンに飛び込んで一心不乱に走っていると、玲音の日本刀を片手に作業をしている涼子を見つけた。こちらが声をかけると、従兄妹は想定外の出来事に目を丸くする。
そんな彼女に俺は、息も絶え絶えに駆け寄って訊ねた。
「れ、玲音は!? アイツもしかして、まだ奥にいるのか!!」
「玲音、ちゃんは……」
すると涼子は困ったように、手元の薬品を見つめる。
いったい何かと思っていると、無言のままにそれを手渡された。そして、
「……それが解毒薬だよ。だからお願い、たっちゃん――」
緊張の糸が解けたのか、彼女はぼろぼろと泣き出しながら言うのだ。
「玲音ちゃんを助けてあげて!!」――と。
◆
「達治さん、どうして……!?」
「ずいぶんと驚いてるな。玲音が用意した薬、凄い効き目だったよ」
「そ、そんなことを聞いているんじゃなくて! どうして、ここに!?」
俺が助けにきたのが意外だったのか、玲音は唖然としている。
そんな間の抜けた様子を見ながら笑うと、少年は首を大きく左右に振って叫ぶのだった。彼の言いたいことは分かるが、しかし今はそれどころではない。
手で待ったをかけながら、俺は玲音にこう訊ねた。
「色々と話したいことはあるけど、相手はそんな悠長に待ってくれるわけじゃなさそうだ。これまでのことはいったん置いておいて、玲音は戦えそうか……?」
「え……?」
すると少年は、驚いたように沈黙。
だがすぐに息を整えて、ゆっくりと立ち上がって言った。
「えぇ、もちろんです。……師匠!」――と。
彼の答えを聞いて、俺は口角を上げた。
そうでないと、ここまで必死に走った甲斐がないというものだ。俺はそう考えながら、もう一方の手に持っていたナイフを玲音に手渡す。
あの小さな袋の中にあった武器の一つだった。
おそらくは、玲音が涼子のために護身用として入れていたのだろう。
「こっちより心許ないと思うけど、陽動を任せられるか……?」
「大丈夫ですよ。僕の取り柄は、身軽なことくらいですから」
「そっか……それなら、頼んだぞ!」
「はい!!」
互いの役割を確認し合うと、俺たちは目配せし合って行動を開始した。
これが自分にとっての初コラボであり、師弟で初の共闘。俺は玲音が先に行ったのを確認し、日本刀へ意識を集中させるのだった。
◆
『すげぇ、頑張れ!!』
『いけ、たっちゃん!!』
涼子は現場に到着するとすぐ、カメラで配信を再開する。
そして、スマホの電源を入れてコメントの確認。多くのリスナーが二人のことを応援しているのを見て、ホッと胸を撫で下ろすのだった。
ここまできたら、きっと大丈夫。
根拠はまったくないけれど、彼女はそう思うのだった。そして、
「いっけぇぇぇぇぇぇ!! たっちゃあああああああああああああん!!」
ここぞとばかり、声を張り上げて声援を送る。
その声は、力強く空洞内に響き渡って――。
「――今です、師匠!!」
二人の背を押す。
彼らの完璧な連携は、毒蛇の姿勢を崩した。そして、
「うらああああああああああああああああああああああああああああ!!」
達治の渾身の一振りが巨大毒蛇の胴部を切り裂く。
両断された絶望そのものは、金切り音に似た悲鳴を上げて絶命した。紫の霧が周囲を包み込むが、しかしそれも次第に晴れていく。
そして最後に残されたのは、希望を胸に抱いて戦った三人だった。
◆
コメント欄は歓喜に包まれて。
涼子は膝から力が抜けて、その場にへたり込んだ。
そんな中で達治はゆっくりと玲音に歩み寄ると、その頭に優しく手を乗せて笑う。玲音はそんな彼をしばし見上げてから、無意識のうちに大粒の涙を流した。
「師匠……本当に、ごめんなさい……!」
そうして、泣きじゃくりながら彼の胸に飛び込む。
何度も何度も、謝罪の言葉を口にして。そんな彼女の頭を達治はまるで、父親のような眼差しを向けながら撫で続けていた。
だが、ふとした拍子に表情が強張る。
「……え、師匠? どうしたんですか」
「あ、いやー……え?」
「…………はい?」
それは感情そのままに、玲音が達治に密着した時だった。
彼は何かしらの違和感を覚えたらしく、途端に頬を赤らめ始める。涼子やコメント欄、そしてスレ住人たちもみな一様に、首を傾げて達治の言葉を待った。
そして、待つこと十数秒。
達治は非常に申し訳なさそうに、玲音にこう確認するのだった。
「玲音、って……女の子だったのか」
瞬間、感動的な雰囲気はぶち壊し。
玲音はどこか冷めた視線を達治に向け、涼子は呆れて、リスナーたちはみな異口同音にツッコミを入れるのだった。
『最悪のタイミングだよ!!』――と。
前回のカッコよさを台無しにしていくスタイル。
次回くらいで、この章終わりかな?
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