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3.仮面不要の舞踏会。

弱さを直視できない人が、大半なんですよ……(自戒









 ――今日で自分が生きる理由は、終わりを迎える。

 玲音はそう考えながら、慎重に歩みを進めていった。父の視界に少しでも入るべく始めた配信活動は、いつの間にか自己顕示欲と絡まって歪んでしまったけど、それでも今はおかしなことに迷いがない。

 ずっと一人だと思っていた。

 自分を支える人は、みんな自分の後ろにいる父を見ているから。



「………………」



 だから白鳥玲音は孤独だ、と。

 アルビレオという名の仮面を被らなければ、と。

 そう思ってきた。そう思わなければ、生きられなかった。強がっていないと泣き出してしまいそうなほどに、本当の自分は弱かったから。

 父に憧れ、父を恨んで、そして父の影に怯えてきたから。



「本当に、わたしは馬鹿です。……師匠」



 そのことを自覚して、ただの子供に戻った玲音はそう呟いた。

 達治の優しさと、強さと、前向きさを知って。彼のことを大概な馬鹿だと思ってきたが、自分の方がいかに馬鹿だったのかを知った。

 正確にいえば、彼と自分の環境は異なっている。

 父親の愛を失ったことは同じ。だが、決定的に異なっている部分があった。



「わたしの父はまだ、この世界のどこかで生きている。だから――」



 そう、彼女の父――白鳥恒星は、生きている。

 そのことに、玲音はようやく目を向けられたのだった。



「まだ、やり直しの『可能性』がある。……そんな『希望』がまだ、残ってる」



 そんな単純なことに気付くまで、どれだけ時間がかかったのか。

 大勢の人に迷惑をかけ、勝手に捻くれて、意地を張って戻れなくなって。そんな自分の愚かさに、気付かせてくれたのは達治だった。嫌味のように何度も『師匠』と呼んだけれど、今となっては心の底からそう呼べる。

 馬鹿で単純で向こう見ずで、それでも底抜けに前向きな彼を尊敬できた。



 だから、玲音は『今までの理由アルビレオ』を失うことに抵抗はない。

 そんなものは、最初から必要なかったのだから……。




「……いたよ! アルビレオちゃん!」

「えぇ、そうですね。リョウさん」




 以前に達治がアークデイモンを討伐した場所に、毒蛇を見つける。

 涼子の声に対して、静かに頷いた玲音は日本刀を構えた。

 そして、ゆっくりと深呼吸をしてから――。




「さようなら、馬鹿で弱虫なわたし……!」




 そう口にして、戦闘を開始するのだった。




 




『ミス・アルビレオって、こんなに強かったっけ』

『……いや、どうだろう?』

『強い武器を使ってるだけだと思ってたけど』




 そして、そんな玲音の戦闘を目の当たりにしたリスナーは驚く。

 彼女の今までにない気迫と、動きの軽快さに。




 ――夜のダンジョン。

 そこに潜むモンスターの強さは別格だ。

 しかも彼女が相手にしているのは、平均的な難易度のダンジョンではない。達治が規格外の活躍をするから忘れられがちだが、序盤でドラゴンが出没するなんて普通ではなかった。すなわち高難易度以上の『超高難易度』に分類されるダンジョンだ。

 だが、そこで『ミス・アルビレオ』は躍動する。

 今まで以上の実力を発揮して、食らいつく毒蛇を押し返していた。



『これなら、勝てるんじゃないか!?』

『いけ、頑張れ!!』

『たっちゃんを助けるんだ!!』



 玲音の叫びが響き渡る様を見て、リスナーたちも声を上げる。

 そして、彼女の刀が毒蛇を切り裂いた瞬間だ。




『おい、嘘だろ……?』




 歓喜よりも先に、絶望が姿を現したのは……。






面白かった

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