1.揺らぐ心に、理由を求めて。
ぜぇ、はぁ……(頭痛、腰痛、眼精疲労)……_(:3 」∠)_
とまぁ、満身創痍ですが生きてます。明日もガンバルゾー!
※ここから第4章です。
「ちょっと達治!? アンタ、どこ行くがけ!!」
「二人を探しに行く! 母さんは俺が帰らなかったら、警察に連絡!!」
「そうじゃなくて、アンタ体調は――」
「俺のことは良いから! 頼んだぞ!?」
「待たんけ、達治!!」
俺は母さんの制止を振り切って、家を飛び出した。
そして一心不乱に、ダンジョンまでの農道を走り続ける。昼にモンスターから受けた毒が、身体を蝕んでいくのが感覚で分かった。気分はひたすらに悪いし、目眩が止まらない。
だけども、今ばかりは止まるわけにはいかなかった。
ダンジョン配信初心者の俺でも、一般常識として知っていたからだ。
「……くそ、どうして夜のダンジョンなんかに!!」
ダンジョンは昼と夜でその表情をガラッと変える。
モンスターは凶暴性と、その内に秘める魔力を増して探索者に襲い掛かるのだ。相当な実力者か、国の軍備レベルでないと手に負えないというそれに対して、涼子と玲音の二人では荷が勝ちすぎていた。だから、すぐにでも止めないと――。
「…………くそ、スマホの電源切ってやがる!」
走りながら二人に電話をかけようとする。
しかし、両者ともに繋がらなかった。
いったい、どうして二人はこんな無茶をしようと考えたのか。
俺の知識ではとても思いつかない。だけど、一つだけ分かっていた。根拠というものはないけれど、それでも確信に近い想像が……。
「……これは、配信の?」
そんなことを考えていた時だ。
手にしたスマホに、チャンネルアカウントから通知が届いたのは。
◆
「玲音ちゃん、本当にやるの?」
「……今からでも、涼子は帰って良いよ」
「ううん、放っておけないよ。たっちゃんも、玲音ちゃんも」
――達治のスマホに通知が届く、その少し遡って。
深夜の山林。いつものダンジョンを前にして、涼子と玲音がそんな会話をしていた。涼子の手には配信用のカメラと、玲音から預かった特殊な袋がある。
玲音の方は、あの時に取りだした日本刀を手にしていた。
「でも、信じて良いんですか? わたしは、二人を嵌めようとしていたのに」
「信じるよ。今の玲音ちゃんは、たっちゃんを助けようとしてるから……」
「……はは、本当に貴方たちって、そっくり」
涼子の迷いない返答に、玲音は少し困った声で笑う。
だけど、悪い気持ちではないのが本音だ。誰かに信じてもらう機会なんて、これまでなかったのだから。
「それじゃ、確認しますよ。……まず今回の目的は、あの毒蛇の毒液から血清を作り出すこと。そのための道具は、渡した袋の中に入っています」
「うん。でも、どうしてそれを配信するの……?」
「それは――」
確認すると、涼子にそう問われた。
その言葉を聞いてから、少し考えて玲音は答える。
「正直、分かりません……」――と。
どうして、わざわざ配信する必要があるのか。
その理由というのは、彼女自身でもハッキリ分からなかった。ただ、
「でも、たぶんこれは『禊』なんだと思います」
「み、そぎ……?」
そう玲音は口にする。
涼子が訊き返すと、彼女は微かに目を細めて続けた。
「わたしは達治さんの配信で、彼を出し抜いて力を示そうとした。自分の存在を証明したかった。ダンジョン配信者として、そして――『ミス・アルビレオ』として」
「玲音ちゃん……」
「なのに今からわたしは、自身の失態を晒して彼を助けようとしている。だから正直に言って、自分の中でも滅茶苦茶なんですよ」
「………………」
それを聞いた涼子は、しばし呼吸を止めて。
やがて、とても優しく微笑むのだった。そして玲音の手を取り――。
「うん! それで大丈夫だよ。だって――」
まるで妹を諭す姉のように、こう声をかけるのだ。
「いまの玲音ちゃん、とても優しい顔をしてるから!」――と。
それを聞いて、玲音は少しだけ呆気に取られていた。
だが、すぐに口角を緩めるとこう言う。
「本当に、貴方たちはそっくりです。……とても、羨ましいくらいに」
そして一度、大きく深呼吸をしてから。
彼女は表情を引き締め、こう宣言するのだった。
「行きますよ、涼子さん。……配信開始です!」――と。
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