表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/65

4.玲音の事情と、忍び寄る危険。

スマホから投稿。

明日の分、今から書きまーす。








「さて、そろそろ配信を開始するけど……二人とも、準備は良いか?」

「はい! 師匠!」

「うん、いいよー」



 いつものダンジョンの中にて俺は安全を確認した後、二人に確認した。すると彼らからは元気の良い返答があり、準備は万全であることが分かる。今回の配信で、撮影を担当するのはリョウだ。そして演者は俺と、にこにこ笑顔の玲音。

 手招きすると、彼は小走りにこちらへやってきた。

 そこで、ふと俺はあることに気付く。



「あれ、玲音……その袋は何だ?」

「これですか? これは、後のお楽しみです!!」

「ほー……」



 彼の手には小さな袋が握られていた。

 道中のゴミでも拾うのか、とも思ったが理由もないし小さすぎる。あるいは先日の鉱石を採掘して、持って帰るのが目的なのだろうか。いいや、そもそも採掘に必要な道具自体がないのだから、その線もあり得なかった。

 だから俺は、あえて訊かないなりにも首を傾げて考える。

 あと思い返してみれば、彼の素性も詳しくは聞いていなかったような……。



「まぁ、今はいいか。それじゃ――」



 などと考え、しかし俺は首を左右に振った。

 そして、景気よく発声するのだ。




「今日も元気に、配信開始だ!!」








「改めて、憧れの師匠と一緒に配信できるなんて! 僕、感激です!!」

「今更だけどさ、その師匠呼び、やめない……?」



 そんな感じで、俺たちは軽い雑談をしてからダンジョンを探索開始する。

 もっとも以前行った場所まで、危険らしい危険はない。ダンジョンによるそうだが、一度倒したモンスターが再出現するまでは、相当の日数を要するとのことだった。

 だからドラゴンもアークデイモンも、いまはまだ出てこない。

 俺はこの機会に、玲音について訊いてみることにした。



「そういえば、玲音はどうして配信者になりたかったんだ?」

「僕、ですか……?」



 それは何気のない問いかけ。

 しかし、彼にとっては思った以上に虚を突かれた様子だった。

 少しばかり視線を伏せてから、撮影カメラに乗らないような大きさで答える。




「認めて、もらいたいんです」――と。




 その言葉に、思わず声を詰まらせた。

 すると玲音はなにかスイッチが入ったらしく、こう話を続ける。




「僕の父は会社を経営してるんですけど、最近になってそこが凄く大きくなったんです。業績も何もかも右肩上がりで、世界的にも有名になってきて……」




 俺はそれに黙って耳を傾けて、あえて邪魔はしなかった。

 何故なら、きっとそこに玲音という少年の思いの核があると思ったから。そしてその予測は正しかったらしく、彼はだんだんと強い声で話し始めるのだ。




「そのうちに、父は僕になにも期待しなくなった。僕のことなんかよりも、会社の用事を最優先に考えるようになって、家族が次第に離れ離れになっていった」




 悲痛にも思えるその声に、今度はこちらが辛くなってくる。

 いったい、この少年の背後にはどんな過去があったのか。俺がそう考えていると、話し過ぎたことに気付いたらしく、玲音は苦笑いを浮かべながら最後を締めくくった。




「あ、あはは……! だから僕は少しでも、自分の力を見せたいんです!」

「それは、親父さんに振り向いてほしいからか……?」

「………………」




 だけど、逃げようとする彼を俺は呼び止める。

 一つの質問を投げかけると、玲音は不意に立ち止まってうつむいた。俺も同じように歩みを止めて、自分なりの言葉を伝える。



「でも、危険な配信者になることを親父さんは望んでいるのか……?」――と。



 普通の親御さんだったら、きっと実の息子に危険な道を歩ませたくはないはず。それに大前提として、玲音の論理には穴があるように思えた。

 認めてもらいたいから強さを示すなんてのは、あまりに飛躍が過ぎている。

 そう思っていると、彼は小さく拳を震わせて小さく言った。




「貴方には――」




 ゆっくり歩きだして、すれ違う瞬間に。




「貴方には、何も分からないですよ……!」――と。









『うわー、新人の子マジ美少年』

『こんなに可愛い子が女の子のはずがない!』

『玲音きゅんhshs』




 コメント欄は、新たに現れた美少年に魅了されていた。

 涼子はその書き込みをどこか、一歩引いた気持ちで眺めている。そして時折に声が乗らないよう気を付けながら、ため息を重ねるのだった。



「むぅ……」



 そんな中で彼女は頬を膨らせる。

 理由は単純、原因は視線の先にいる達治と玲音だった。

 涼子は楽しげに話しているような彼らを見ながら、思わずこう漏らすのだ。



「たっちゃん、鼻の下伸ばしちゃってさぁ……」――と。



 すると、配信に声が乗ってしまったらしい。

 コメント欄が一気に、涼子に向けた書き込みで溢れ返った。



『お、リョウちゃん嫉妬? 嫉妬かな?』

『可愛いねぇ、初々しいねぇ……!』

『もう、俺にしなよ』



 なんとも暴走気味な彼らのそれに、涼子は思わず赤面する。

 そして、こう声を上げた。




「ア、アタシはたっちゃんのこと、なんとも思ってないんだからね!」




 ――火に油である。

 コメント欄には『ツンデレキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』という文字が飛び交い、いよいよ収拾がつかなくなってしまう。涼子も気恥ずかしさから言い返すので、周囲へ意識が及ばなくなっていった。だから、気付かない。




『アレ? いま、何か横切らなかった?』




 高速で流れるコメントの中。

 何かに気付いた冷静なリスナーが発した危険信号にも……。



 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ