3.白鳥玲音、という人物。
予約投稿で更新(*‘ω‘ *)
「えっと、玲音だっけ? ……悪いけど、弟子は取れないよ」
「ええええぇ!? なんでですか!!」
外で立ち話をするのもアレなので、ひとまず涼子も一緒に俺の自室へ。
そして白鳥玲音と名乗った美少年にそう告げると、彼は非常に不服そうな表情を浮かべた。どうしてか、と綺麗な顔で詰め寄られ、俺は思わず呼吸を止めてしまう。それほどまでに、この玲音という少年の顔立ちは整っていた。
左右で異なる瞳の色は、カラコンだろうか。
青色と金色、まるで宝石のように輝く彼の眼差しには魔力があるように思えた。それにどことなく、シャンプーの良い香りがして……。
「……って、そうじゃない! 駄目なものは駄目だ!!」
俺はとっさに玲音の細い肩を掴んで、自分から彼を遠ざけた。
そして、咳払いを一つしてからこう仕切り直す。
「そもそも、俺はまだ配信者として経験が浅い。そんな俺が弟子を取れるわけないし、何も教えることはできないんだよ」
「それで良いんです! 僕は師匠の傍にいられれば、それだけで!!」
「何がキミをそこまで思わせるんだ!?」
その上で至極尤もな理由を並べてみたが、パッションで押し切られた。
また迫ろうとする彼を手で制しつつ訊ねる。すると、白鳥玲音はやや膨れっ面になって言うのだった。
「僕は師匠の配信を見て、感動したんです。……師匠こそ、男の中の男だ、って」
「男の中の、男……?」
それに対して、俺は首を傾げるしかできない。
そんなこちらを見て、玲音は続ける。
「僕は昔から根気がなくて、よく馬鹿にされるんです。二十一歳にもなって定職に就いてないし、どうしても自分に自信が持てなくて」――と。
……二十一歳、だって?
俺は彼の年齢を聞いた瞬間に、己の耳を疑った。
そして、改めて玲音のことを観察する。華奢な身体つきに、小柄な背丈。どう見ても中学生くらいの男子だった。あるいは、他の可能性があるとすれば――。
「だから! 僕は師匠と一緒にダンジョンに行きたいんです!!」
――などと、硬直していると。
玲音はさらに距離を詰めながら、俺へとそう懇願してきた。
首に手を回してきて、それこそ吐息のかかるような距離感で。だから、
「分かった! 分かったから、離れてくれ!?」
俺はついに限界を迎え、そう認めてしまった。
すると少し驚いたような表情を浮かべ、玲音はこちらと距離を取る。そして、とても嬉しそうに微笑みながらこう言うのだった。
「はい……! ありがとうございます、師匠っ!」――と。
◆
「ねぇ、良かったの? たっちゃん」
「あー……でも、仕方ないだろ。あそこまで言われたら」
ぐったりとした達治に、涼子は不安げに声をかける。
彼は精魂尽き果てたかのような声で応え、しかしため息をつきながらそう言った。どうやら、言ったからには認めるしかない、ということらしい。
そういった律義さは昔から変わらないところだが、涼子はしばし考えた。
そして、少しだけムッとした表情を浮かべる。
「ふーん……?」
「え、どうした。……涼子?」
「なんでもないよー?」
「えぇ……?」
達治は困惑するが、従兄妹は取り合わなかった。
そして彼に背を向けて、誰にも聞こえない声量でこう言うのだ。
「たっちゃんの、ムッツリ……」――と。
どことなく、やきもちを焼くような口調で。
彼女は小さく唇を尖らせるのだった。
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