3Dへの道
「ワンエンツーエンスリーエンフォー」
大輝が手を叩きながらカウントをとっている。
「猫背! 進む方向見るんじゃなくてもっと視界を広く!」
何をしているかというと、みっくんにゲキを飛ばしているのだ。
3Dモデルのお披露目が迫っていた。美宇が前々から進めていたモーションキャプチャの撮影ができるスタジオの買収がうまくいき、我が事務所は宇宙ラン、ギンガミキ、天河ゆんの順番で新3Dモデルをお披露目、最後に3D未実装の感情交差点をお披露目し、今後は積極的に3D配信に取り組んでいく予定だ。
少々イザコザはあったものの、無事3Dモデルは完成。本人たちも初めてモーキャプを使って、自分の動きに合わせてモデルが動く体験をし、特に大輝はかなりの本気モードになっている。
リアルライブをやった時も思ったけれど、大輝はたんにダンスができるとか小さい頃から習ってたとかそういうことじゃなくて、身体的な表現にこだわりも情熱もあるように思える。
「ちょっと休憩〜」
そう言ってみっくんがへばりこむのも、リアルライブの時と同じだ。
「前よりだいぶよくなりましたよ」
「そう? そんならもう少しお手柔らかに……」
「三ツ星ならもっとできる」
「うへぁ」
スタジオのスタッフさんと、事務所の3Dディレクターに就任した天河ゆんこと伊藤さんも、私と一緒に二人を見守っていた。
「クオリティ高いライブが作れそうでワクワクするよ。それにしてもハクトくんは本当にダンスうまいんだね。普段おとなしいからびっくりしたよ」
と伊藤さん。
「たしかにちょっと意外ですよね。あまり身体能力高そうに見えないのに。ゲームはアレだし」
「恋沼ちゃんサラッと毒吐くよね。ちょっと思ったんだけど、二人にはダンスレッスンとかボイトレとか受けてもらったら? 本腰据えて練習したらメジャーデビューも夢じゃないよ。せっかくモデル作ったからにはガンガン活用してもらいたいし」
「あ〜、そうですね。美宇に言ってみてもいいかもしれません」
Vtuberはその名前の通り、バーチャルな配信者が本業なわけだが、メジャーレーベルと契約して歌手として活躍している場合もある。
大手だと、デビューする前からダンスや歌の先生をつけ、練習を積ませることもあるらしいが、うちは感情交差点デビュー時はまだ規模も小さかったので、いくら資金的に余裕がある方とはいえ、どのぐらい活動を続けてくれるかもわからない新人にレッスンを受けさせる余力もなかった。今ならあるいは……。
美宇に話すのはもちろん、あきらさんにふわっとどんな感じか教えてもらえちゃったりしないだろうか。どういう先生がそういうレッスンをつけてくれるのか知りたい。
なんか売れっこVtuberみたいだ……。少々口元がゆるんでいるが許されて。前途洋洋、未来は明るい。そんな気がしてならない。
私もマネージャー業がんばるぞ!




