刺客あらわる
久しぶりにクロノが個人配信をしている。ゆるっと雑談枠と称してリスナーとゆるく好きな小説の話をしていたら、中島敦の『山月記』の話題になった。
「オレ、高二の二学期で中退したから山月記やってる間は高校生してたんだよ。文章かっこいいよな」
miroro「現代文得意だった?」
狐うどん「中島敦はガチ名文」
ごま団子「本読む人なの失礼だけど意外」
「現代文はわりと得意だったよ。感想文はダメな人だったけど。すげー頭悪い感想になっちゃうけど、中島敦は漢語がバシッと使えるとカッケーってことがよくわかる文章だよな。本読む人ってほど読まないよ〜。ほんと国語で習ったやつとか、たまに小説読むくらい。名作系はぜんぜん読んでないし。うちの中高、図書館は勉強するところでなんか本借りずらかったんだよね。ほら思春期って自意識過剰だからさ、お前がそんなん読むの? みたいな視線を勝手に感じてたというか」
miroro「ちょっとわかる」
りんご信者「そういや山月記も自意識の話ね」
「あ〜。なんだっけ、『臆病な自尊心と、尊大な羞恥心』? まあでもあの主人公は科挙を通って官吏になるほどのエリートっしょ? 官吏にも虎にもなれない一般人と一緒にすんのはかわいそうではあるけども。なんか現代文の先生が解説してた気がするわ」
狐うどん「李徴は頭いいくせに役人としても詩人としても中途半端で妻子ほっぽって虎になりやがった野郎だぞ」
「狐うどんさん、李徴にどんな恨みが? まあでも頭よくても妻子があっても、人間は自尊心と羞恥心に苦しめられるということだね。官吏《まともな社会人》にも詩人《つよつよVtuber》にもなりきれないオレと一緒だ」
miroro「お? よちよち待ちか?」
桜木マチ@個人勢「急に病むのやめて」
「誰がよちよち待ちだよ。ちょっと暗いこと言っただけじゃん。羞恥心が尊大だぞ〜」
ごま団子「意味不明で草」
和やかな配信に突如、こんなコメントがついた。
Kou「お前、佐藤おりおんだよな」
削除削除削除! 光の速さでコメントを消し、ユーザー非表示、通報、のコンボを決める。
サブアカウントでコメントしてくる可能性があるので警戒しつつ、クロノにチャットを飛ばし、一時的にコメントをチャンネル登録者のみのモードへ変更、コメントを低速モードにし、『佐藤』『三ツ星』『オリオン』など一般的な名詞も含め個人情報につながる言葉をリスト化し、その言葉を含むチャットは全て非表示になる設定に変更した。
miroro「急にどした?」
桜木マチ@個人勢「コメント低速になってる」
「あ、ごめんね〜。モデレーターさんが荒らし湧いてるよって教えてくれたからさ。別にコメントにぶちぎれたりしたわけじゃないから安心して」
狐うどん「コメントにぶちぎれは草。モデレーターついてたんだ」
「そりゃそうよ、一応は企業勢だからね」
ごま団子「この機会にチャンネル登録しました」
「お、ごま団子さんありがと〜。いやあ、最近ありがたいことにチャンネル登録者さん増えてきてるからね。荒らしにも負けず、頑張りたいところではあるよね」
miroro¥500「頑張れ! もうすぐ銀盾だよ」
「そだね。正直ぜ〜んぜん実感ないわ。でもこうやって登録者のみモードにしてもコメント流れるくらいには見てくれる人が増えたと思うと感慨深いよ。拾われづらくなった人とかいるかもしんないけど、オレはよっぽどのことしないかぎりリスナーを嫌ったりしないんで、単純に読めなかったんだなって思ってね」
桜木マチ@個人勢「ワイも感慨深いわぁ」
「桜木さん急にキャラ変わってるけど大丈夫そ? 」
配信はそんな和やかな空気で終えることができたのだが。同時刻、ツブヤイターに大変な投稿がされてしまった。
作中の山月記の描写は青空文庫様を参考、引用させていただいています。




