092 人の定義
44ポイントだ!
上がってる。
久々のポイントは嬉しい!
よし!
まだまだガンバろう!
また明日!
「ねえ……あれって」
ヴィーゼはイタチ耳のゴーレムを、オズオズと指差した。
「そうみたいね……」
バルタは猫耳のゴーレムを見ていた。
「で?」
「どういう事?」
元国王に詰め寄るのはエルと狐耳ゴーレム。
「これって意識とか性格も……ってか、魂そのもがコピーされてない?」
マリーが呟く。
エルと狐耳ゴーレムが完璧にシンクロしているからだ。
「ヤッパリ……私かぁ」
大きく肩を落としたのはヴィーゼのコピーの方のゴーレムだった。
「ところで……これは」
横で見ていたペトラがポツリ。
「成功?」
一応はローザに聞いたらしい。
「成功とか……失敗とか……」
思いっ切りの苦笑いで答えたローザ。
「ソレ以前の問題だと思うよ……」
「なるほど……確かに」
頷いたペトラ。
「以前と以後の大問題……」
? な、顔でペトラを見たローザ。
自分の考えと……ちがう?
「以後?」
「ゴーレムがコピーだとすると……今の時点で同じ人間が二人居ると成らない?」
「人間? なの?」
ゴーレムを見るローザ。
「そもそも人の定義ってなに? ホモサピエンスってのの進化の系統? それなら猿も人間? 原人は?」
そのローザに問い直すペトラ。
「いや……高い知能と理性じゃないの?」
猿は違うと思う。
原人は……あやしい?
「だから獣人もエルフもドワーフも人間でしょう?」
ローザは小首を傾げてそう言った。
「ならさ……知能はオリジナルと同じで、もちろん理性も有るのでしょう?」
3体のゴーレムを指差して。
「形は違うけど……独立して考えて動いてるから……人間?」
「でも、バルタはバルタだし……エルはエルよね?」
混乱して来たローザ。
「ゴーレムはゴーレムじゃないの?」
「そのゴーレムが人間と同等の知能が有るよ」
ウームと唸るペトラ。
「知能で区別するなら……ゴーレムは人間で猿は人間じゃない。逆に遺伝子の情報なら……猿は98パーセント人間だって事に成るよ」
「その98パーセントとは?」
「原人を見た時にジュリアお婆さんに聞いたの……これは人間か? って。そしたら限り無く人間に近いモノと……チンパンジーは98パーセントの遺伝子が人間と同じだけど人では無いと言われた。でも、ゴーレムにはその遺伝子情報は無いって事は人では無い?」
もう一度、ゴーレムを指して。
「でも……言動は明らかに人だよね?」
「いや……コピーだから」
首を振るローザ。
「じゃあ」
元国王とマリーを指差して。
「転生者もコピーだよね……元の世界にはオリジナルが居て、そしてここにも居る」
「コピーが人か人で無いかは……関係無いのか」
唸るローザ。
「じゃあ……人間てナニ?」
諦めた様だ。
「ネクロマンサー的にはどうなの?」
ペトラは元国王に聞いてみた。
「魂はどちらも同じモノとして機能しているの」
シドロモドロに答える。
「ゾンビも死んでは居るが動くので……人だし」
首を捻って。
「ヤッパリ……ゴーレムでも人と同じ魂を持てば、人間?」
断言はしない様だ。
「あんた達……いい加減にしてよね」
エルのコピーのゴーレムが仁王立ち。
「私達を人間扱いは出来ないって言いたいわけ?」
「でも……元のオリジナルも獣人で人間扱いはされてなくない?」
ヴィーゼのコピーのゴーレムだ。
「ソレとコレとは意味が違うわよ」
ヴィーゼのコピーのゴーレムに怒鳴る、エルのコピーのゴーレム。
「ヤヤコシイ……」
その後ろで、バルタのコピーのゴーレムが呟いていた。
今度はゴーレム同士で揉め始めた。
「コレはチョッと」
コソコソと元国王の裾を引っ張るマリー。
「どうにもマズイわね」
「このゴーレム達を壊せば人殺しか?」
元国王もヒソヒソ。
「下手に仕事を指示すれば虐待?」
唸った二人は……その場を逃げ出した。
元国王とマリー……ほうほうのていで逃げ出した先は、ムーズ達の居るキャラバン。
「ちょうど良いところに」
そのムーズに捕まった元国王。
「馬を動くようにしてくれない?」
2頭の死んだ馬を指す。
「え! ゴーレム化?」
「そうそれ」
「いやいや……ソレは」
慌てた元国王は拒否をする。
「またヤヤコシク成るではないか」
?
「なにかしたの?」
両眉を下げて元国王を見たムーズ。
「別に……大した事じゃないわよ」
マリーも挙動不審だ。
「しかし、ゴーレム化はマズイぞ」
ウンウンと頷いて。
「ロクな事に為らん」
その二人が気にしているであろう方向。
そちらをチラリと見たムーズ。
確かに騒がしい。
バルタやヴィーゼやエルが揉めている。
それもゴーレム達を使っての騒ぎだ……なにごと?
少し首を捻るが、それは今はいい。
ソレよりもだ。
「何時もの様に……ゾンビ化は駄目なの?」
元国王の耳元に小声で囁く。
「ああ……ゾンビ化か」
フムフムふむと。
「それなら大丈夫じゃ」
急ぎ適当に魔方陣を発動させた。
「それと……こっちのコ」
もう1頭の横たわった馬を指す。
「まだ生きてはいるのだけど、心臓がパンクしているみたいで……」
可哀想だけど……と、そんな顔。
「ああ、それなら」
マリーを見た元国王。
そして手を出す。
「え?」
なに? と顔をしたマリーだが……すぐに理解したようで、小さな鞄から不釣り合いな長い剣を抜いて出した。
それを元国王に渡す。
剣を受け取った元国王。
馬の胸にブスリと刺した。
それを何度か……。
「治療で済むなら、その方が良いじゃろう」
「そうね、出来るだけシンプルな方法を選ぶべきよね」
マリーはそれに同意した。
「余計な事を考えると……ヤヤコシクなるし」
そんな二人を訝しむムーズだったが……取り敢えずの追求はしなかった。
何かしたの? は、もう既に聞いている。
答えは無かったのだから……素直に答える積もりは無いのだろう。
それは後で、あの子達に聞けばいい。
ムーズは起き上がった三頭の馬を引いて、キャラバンのリーダーの所に連れて行った。
「こっちの1頭は返さなくていいけど……この2頭は返してね」
治療した方とゾンビの方だ。
リーダーは頷いて3頭を引き取る。
そして馬車に繋いで。
「早速だが……移動したい」
目線は燃えているアメリカ戦車を見ていた。
「そうね」
頷いたムーズ。
「他にも仲間がやって来るかも知れないわね」
進行方向に目をやり。
「少なくとも隠れやすい森の中の方が良いかもね」
少し先には森が見えていた。
「出来ればもう少し、ここから離れたいのだが……」
「それは後で相談しましょう。移動しながらでも話は出来るのだし」
ムーズはそれを告げて、タヌキ耳姉妹のAPトライクへと足を進めた。
「動くの?」
イナが聞く。
頷いたムーズ。
無線機を取って。
「みんな、移動するよ」
揉めていた方のグループ。
無線機からのムーズの号令で、一時休戦を確かめ合う。
「ルノーちゃん……来て」
ヴィーゼが戦車を呼んだ……ゴーレムの方。
「呼んで来るの?」
オリジナルのヴィーゼが驚いた。
「ゴーレム化したんでしょう? ヴェスペも来て」
エルのゴーレムも戦車を呼ぶ。
「ちょっと、あれは私の戦車よ……ヴェスペ、来て」
オリジナルのエルが対抗。
「ヤッパ……ヤヤコシイね」
ローザが大きな溜め息を吐き出した。
「そうね……せめて呼び名を考えないとね」
ペトラも溜め息だ。
「どう呼んで良いのかわからないから……声も掛けられないし」
「エルとエルGとか?」
くすりと笑うローザ。
「バルタGにヴィーゼGね」
釣られてペトラも笑う。
「それだと……ジジイみたいじゃないの」
「私達は女の子よ」
「それに若いし」
3体のゴーレムが二人に食って掛かった。
「いや……ほら」
「例えだし」
ローザとペトラはシドロモドロだった。




