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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
93/233

092 人の定義

44ポイントだ!

上がってる。


久々のポイントは嬉しい!


よし!

まだまだガンバろう!



また明日!


 「ねえ……あれって」

 ヴィーゼはイタチ耳のゴーレムを、オズオズと指差した。

 

 「そうみたいね……」

 バルタは猫耳のゴーレムを見ていた。


 「で?」

 「どういう事?」

 元国王に詰め寄るのはエルと狐耳ゴーレム。

 

 「これって意識とか性格も……ってか、魂そのもがコピーされてない?」

 マリーが呟く。

 エルと狐耳ゴーレムが完璧にシンクロしているからだ。


 「ヤッパリ……私かぁ」

 大きく肩を落としたのはヴィーゼのコピーの方のゴーレムだった。


 「ところで……これは」

 横で見ていたペトラがポツリ。

 「成功?」

 一応はローザに聞いたらしい。


 「成功とか……失敗とか……」

 思いっ切りの苦笑いで答えたローザ。

 「ソレ以前の問題だと思うよ……」

 

 「なるほど……確かに」

 頷いたペトラ。

 「以前と以後の大問題……」


 ? な、顔でペトラを見たローザ。

 自分の考えと……ちがう?

 「以後?」


 「ゴーレムがコピーだとすると……今の時点で同じ人間が二人居ると成らない?」


 「人間? なの?」

 ゴーレムを見るローザ。

 

 「そもそも人の定義ってなに? ホモサピエンスってのの進化の系統? それなら猿も人間? 原人は?」

 そのローザに問い直すペトラ。


 「いや……高い知能と理性じゃないの?」

 猿は違うと思う。

 原人は……あやしい?

 「だから獣人もエルフもドワーフも人間でしょう?」

 ローザは小首を傾げてそう言った。


 「ならさ……知能はオリジナルと同じで、もちろん理性も有るのでしょう?」

 3体のゴーレムを指差して。

 「形は違うけど……独立して考えて動いてるから……人間?」

 

 「でも、バルタはバルタだし……エルはエルよね?」

 混乱して来たローザ。

 「ゴーレムはゴーレムじゃないの?」


 「そのゴーレムが人間と同等の知能が有るよ」

 ウームと唸るペトラ。

 「知能で区別するなら……ゴーレムは人間で猿は人間じゃない。逆に遺伝子の情報なら……猿は98パーセント人間だって事に成るよ」


 「その98パーセントとは?」


 「原人を見た時にジュリアお婆さんに聞いたの……これは人間か? って。そしたら限り無く人間に近いモノと……チンパンジーは98パーセントの遺伝子が人間と同じだけど人では無いと言われた。でも、ゴーレムにはその遺伝子情報は無いって事は人では無い?」

 もう一度、ゴーレムを指して。

 「でも……言動は明らかに人だよね?」


 「いや……コピーだから」

 首を振るローザ。


 「じゃあ」

 元国王とマリーを指差して。

 「転生者もコピーだよね……元の世界にはオリジナルが居て、そしてここにも居る」

 

 「コピーが人か人で無いかは……関係無いのか」

 唸るローザ。

 「じゃあ……人間てナニ?」

 諦めた様だ。


 「ネクロマンサー的にはどうなの?」

 ペトラは元国王に聞いてみた。


 「魂はどちらも同じモノとして機能しているの」

 シドロモドロに答える。

 「ゾンビも死んでは居るが動くので……人だし」

 首を捻って。

 「ヤッパリ……ゴーレムでも人と同じ魂を持てば、人間?」

 断言はしない様だ。


 「あんた達……いい加減にしてよね」

 エルのコピーのゴーレムが仁王立ち。

 「私達を人間扱いは出来ないって言いたいわけ?」


 「でも……元のオリジナルも獣人で人間扱いはされてなくない?」

 ヴィーゼのコピーのゴーレムだ。


 「ソレとコレとは意味が違うわよ」

 ヴィーゼのコピーのゴーレムに怒鳴る、エルのコピーのゴーレム。


 「ヤヤコシイ……」

 その後ろで、バルタのコピーのゴーレムが呟いていた。

 

 今度はゴーレム同士で揉め始めた。


 「コレはチョッと」

 コソコソと元国王の裾を引っ張るマリー。

 「どうにもマズイわね」


 「このゴーレム達を壊せば人殺しか?」

 元国王もヒソヒソ。

 「下手に仕事を指示すれば虐待?」


 唸った二人は……その場を逃げ出した。



 

 元国王とマリー……ほうほうのていで逃げ出した先は、ムーズ達の居るキャラバン。

 

 「ちょうど良いところに」

 そのムーズに捕まった元国王。

 「馬を動くようにしてくれない?」

 2頭の死んだ馬を指す。


 「え! ゴーレム化?」

 

 「そうそれ」

 

 「いやいや……ソレは」

 慌てた元国王は拒否をする。

 「またヤヤコシク成るではないか」


 ?

 「なにかしたの?」

 両眉を下げて元国王を見たムーズ。


 「別に……大した事じゃないわよ」

 マリーも挙動不審だ。


 「しかし、ゴーレム化はマズイぞ」

 ウンウンと頷いて。

 「ロクな事に為らん」


 その二人が気にしているであろう方向。

 そちらをチラリと見たムーズ。

 確かに騒がしい。

 バルタやヴィーゼやエルが揉めている。

 それもゴーレム達を使っての騒ぎだ……なにごと?

 少し首を捻るが、それは今はいい。

 ソレよりもだ。

 「何時もの様に……ゾンビ化は駄目なの?」

 元国王の耳元に小声で囁く。


 「ああ……ゾンビ化か」

 フムフムふむと。

 「それなら大丈夫じゃ」

 急ぎ適当に魔方陣を発動させた。


 「それと……こっちのコ」

 もう1頭の横たわった馬を指す。

 「まだ生きてはいるのだけど、心臓がパンクしているみたいで……」

 可哀想だけど……と、そんな顔。


 「ああ、それなら」

 マリーを見た元国王。

 そして手を出す。


 「え?」

 なに? と顔をしたマリーだが……すぐに理解したようで、小さな鞄から不釣り合いな長い剣を抜いて出した。

 それを元国王に渡す。


 剣を受け取った元国王。

 馬の胸にブスリと刺した。

 それを何度か……。


 「治療で済むなら、その方が良いじゃろう」

 

 「そうね、出来るだけシンプルな方法を選ぶべきよね」

 マリーはそれに同意した。

 「余計な事を考えると……ヤヤコシクなるし」

 

 そんな二人を訝しむムーズだったが……取り敢えずの追求はしなかった。

 何かしたの? は、もう既に聞いている。

 答えは無かったのだから……素直に答える積もりは無いのだろう。

 それは後で、あの子達に聞けばいい。


 ムーズは起き上がった三頭の馬を引いて、キャラバンのリーダーの所に連れて行った。

 「こっちの1頭は返さなくていいけど……この2頭は返してね」

 治療した方とゾンビの方だ。

 

 リーダーは頷いて3頭を引き取る。

 そして馬車に繋いで。

 「早速だが……移動したい」

 目線は燃えているアメリカ戦車を見ていた。


 「そうね」

 頷いたムーズ。

 「他にも仲間がやって来るかも知れないわね」

 進行方向に目をやり。

 「少なくとも隠れやすい森の中の方が良いかもね」

 少し先には森が見えていた。


 「出来ればもう少し、ここから離れたいのだが……」

 

 「それは後で相談しましょう。移動しながらでも話は出来るのだし」

 ムーズはそれを告げて、タヌキ耳姉妹のAPトライクへと足を進めた。


 「動くの?」

 イナが聞く。

 

 頷いたムーズ。

 無線機を取って。

 「みんな、移動するよ」




 揉めていた方のグループ。

 無線機からのムーズの号令で、一時休戦を確かめ合う。

 

「ルノーちゃん……来て」

 ヴィーゼが戦車を呼んだ……ゴーレムの方。

 

 「呼んで来るの?」

 オリジナルのヴィーゼが驚いた。


 「ゴーレム化したんでしょう? ヴェスペも来て」

 エルのゴーレムも戦車を呼ぶ。

 

 「ちょっと、あれは私の戦車よ……ヴェスペ、来て」

 オリジナルのエルが対抗。


 「ヤッパ……ヤヤコシイね」

 ローザが大きな溜め息を吐き出した。


 「そうね……せめて呼び名を考えないとね」

 ペトラも溜め息だ。

 「どう呼んで良いのかわからないから……声も掛けられないし」


 「エルとエルGとか?」

 くすりと笑うローザ。


 「バルタGにヴィーゼGね」

 釣られてペトラも笑う。


 「それだと……ジジイみたいじゃないの」

 「私達は女の子よ」

 「それに若いし」

 3体のゴーレムが二人に食って掛かった。


 「いや……ほら」

 「例えだし」

 ローザとペトラはシドロモドロだった。

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