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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
81/233

080 階段の攻防

昨日は1日休んでしまった。


モチベーションがヤバかったので、漫画を買い込んで一気読み。

スパイ×ファミリー……無茶苦茶面白かった。

あんな話が書けたら良いのになと思う。

設定が特に秀逸だよね。


もっと勉強しないと駄目だ。

修行だ。

頑張ろう。


 「2階を越えた!」

 アマルティアの背中に階段の上から声が浴びせられた。


 越えた?

 2階を制圧するのでは?

 アマルティアは頭の端っコで小さく疑問符を付けた……その頭の大部分は目の前の事で精一杯だったからだ。

 

 一階の階段前はハダカデバゴブリンでごった返していた。

 私達が倒した自分の仲間を気にもせずに踏みつけて、階段に群がろうとする。

 それを押さえて居るのがゼクスだ。

 そして、盾の上や横からmp40の9mmを流し込む、私とゴーレム兵。

 弾は2体のゴーレム兵が背中に担いでいるランドセルに満載だ……が、有限でも有る。

 アマルティアは弾の出ないマガジンを引き抜き、そのランドセルから幾つかを抜いて、1つは口に咥え、幾つかのポケットに順番にネジ込み、最後にmp40に差し込んだ。

 そしてまた、流し込む。

 

 「アマルティア! 早く上って」

 上からの声だ。

 もう、ここを抑える必要が無くなった様だ。

 とにかく2階を目指す事にする。

 銃を撃ちながら後ろ向きに階段を登る。

 ゴーレム達には多少の流れ弾も気には成らないようだ。

 もちろん当てない様には気を付けてはいるのだけども。


 その下では顔を覗かせたハダカデバゴブリンが順番に天国に昇っていた。

 「ゼクスも上って」

 一段二段を上がった所で叫んだ。

 

 広くはないが狭くもない階段。

 建物が8階か9階かのオフィスビルだ。

 その一階だけが、洋服屋がテナントとして入っている形。

 防火戸扉も備え付けられてはいるが……それを閉めるにはハダカデバゴブリンの死体が邪魔だった。

 なので、三体のゴーレムが横に並んでユックリと後退。

 

 階段の中腹の曲がった踊り場まで到達すると、迫るハダカデバゴブリンも階段を登ろうと足を掛けたモノだけを相手にすれば良くなる。

 私達は下に向かってほぼ一方向に撃つだけだ。

 

 そして、2階に到達した。

 成る程と理解する。

 防火扉が閉められている。

 その足元は血の水溜まり……もちろん誰かが怪我をしたとは聞かないのコレはハダカデバゴブリンの血なのだろう。

 それがこれだけ有る戸いう事とは……相当数の数がここを目指して襲ってきたと思われた。

 「もしかすると……別の場所に階段が有るのかも」

 2階を抑えて居た三姉妹の意見だ。

 「それとも……予想以上にこの建物にいたかだね」

 

 「それって……マズイんじゃないの?」

 アマルティアは階段の上を見た。

 「進んでいる先頭も魔物だらけ?」


 「だからフロアーの殲滅は諦めた感じ……」

 エレンがお話終わると同時に、また上からの声。


 「下! 気を付けて!」

 その一瞬後……ハダカデバゴブリンが階段を転げ落ちてきた。

 踊り場の壁に頭からブツカリ脳みそをぶちまけている。

 落ちる前にもう死んでいたのだろうと、想像は出来たがあまり気分の良い見た目では無かった。

 

 うわ……っと顔をシカメて居れば、最後尾のゴーレム達が追い付いた。

 私達は2階フロアーの踊り場をグルリと回って三階を目指す。

 三姉妹はそのまま上に先に上がっていった。

 シンガリは任せたとそう言う事なのだろう。

 私もそのつもりだったので下を気にしつつ、曲がりしなにM24柄付き手榴弾を投げ込んだ。

 カンカンカンカンと壁や階段に跳ねて転がり落ちていき……ドカン爆発。

 爆風が昇って来るが、曲がった踊り場のおかげでそれ程出もない。

 


 そんな感じで3階4階と越えて行き……5階6階まで来ると、足元にはハダカデバゴブリンの死体が折り重なって、足の踏ん張りが効かなく為ってきていた。

 下手に死体を踏めばグラグラだし……踏まなくてもその血でツルツルと滑る。

 まだ私達は運動靴を履いているからマシだけど、ゴーレム達は固く成った粘土というか土塊の足裏だ、相当に滑るらしくヨタヨタとしていた。

 「これは、改良の余地有りだね」

 ここの様なダンジョンもだけど、泥寧地や濡れた岩場等では動きに制限が掛かりそうだ。

 「まあ、それも後でだけど……」

 また、手榴弾を投げ込んだ。

 「それに下はモット酷そうだし」

 と、また掛け上がる。

 

 七階まで来ると、三姉妹がシンガリの応援に入ってくれた。

 「もう上は大丈夫らしいから」

 「あと8階も閉じたし」

 「もう屋上だけだって」

 

 「その……屋上は大丈夫なの?」

 

 「あのイタチのオバサン……スッゴい魔法使いだから平気だと思うよ」

 「氷の魔法とか連発してたし」

 「ハダカデバゴブリンも穴だらけ」

 

 「そうなの? 魔法使いだったんだ」

 少し余裕が出てきたのそんな話もできる。

 

 「でも、それ言っちゃあダメらしいけどね」

 笑った得れん。

 「あのコツメさん……イタチ耳のオバサンの名前なんだけど、若い頃に忍者を目指してたんだって」

 アンナもクスリと笑う。

 「忍者も極めると魔法使いに成るらしいよ、マリーが笑ってた」


 「コツメさんって言うのか……でも、忍者と魔法使いって全然違うよね」


 「違うよね」

 三姉妹は見事にハモっていた。

 

 「それに、クリスティナのギュウ太も強いし……屋上の広い所に出ればモット強いよ」

 「イナ達も居るし」

 「ローザもお婆さんも十分に戦力だしね」


 成る程、上は相当に充実しているのか。

 

 と、8階に到着。

 次の屋上への階段は極端に狭く成っていた。

 もう、ゴーレム兵単独でも横は通さないだろう幅だ。

 なので、登る速度もその分だけ増した。


 最後の扉を潜って屋上にでる。

 太陽は雲に隠れてはいるが、眩しい昼間の明かりだ。

 シンガリのゼクスを引き出す様にして、扉を閉める。

 その閉まる隙間から手榴弾を投げ込むのは忘れずにだ。

 

 下の方でドンと音がしていた。

 その一発で何匹が死んだのだろうか……たぶんイッパイだ。

 ギチギチに犇めき合って、しかも下からドンドンと押されて居るのだ、逃げる余裕も無いだろう。


 その鉄扉……ご丁寧にローザが数ヵ所を溶接して開かなくしていた。

 小さな魔方陣でバチバチと一瞬でだ。

 たぶん途中の階の扉もやっていたのだろう。

 いまそれを見るまでは気が付かなかったが……もうスッカリ手慣れていた。


 そして、改めて確認した屋上。

 そこも相当に犇めいている。

 次から次へと湧いて出ているようだ。

 その大元は……外に剥き出しの非常階段だった。

 その幅は狭く、人一人が精一杯なのだけど……一匹づつ上って出てくる。

 たぶん上から覗けば一列渋滞……縦隊? あれ? どっちだ? 等と笑っていられるのは、上ってくるのは一匹だけど上で倒しているのは10匹とか20匹の単位だ。

 殲滅するのはすぐだろう。


 と、後ろの扉がガンガンと音を立て始めた。

 扉を棍棒で殴っている?

 今更そこを開けるわけにもいかないが……さてどうしたものか?

 何時かは壊される可能性だってあるのだ。


 そこにローザがやって来た。

 手には鉄のパイプで作ったのであろうイビツな形のつるはし? を持っている。

 そして、それをゼクスに渡して私に。

 「ゼクスをその階段の上の天井に上げてやってくれない?」

 指は2体のゴーレム兵を指す。


 持ち上げろって事か……と、上を見れば大きな給水タンクが見える。

 「何するの?」


 「階段の掃除……水洗トイレみたいな感じ?」

 笑っていた。


 天井に穴を空けて……上の水で押し流す?

 成る程……掃除だ。

 水洗いだ。

 頷いたアマルティアはゴーレム兵でゼクスを持ち上げた。


 さて、屋上はと見れば……もう粗方終わっていた。

 ギュウ太が走り回って撥ね飛ばし……屋上から突き落とす。

 シルバは非常階段の出口で仁王立ち……叩かれようが押されようがビクともしない。

 それはそうだろうゴーレムなのだから、なんなら戦車も持ち上げるのだ。

 その力に逆らえるとも思えない。

 ただ、立っているだけで下から押されてかハダカデバゴブリンは階段の手摺から溢れ落ちていた。

 

 出入りの制限を掛ければ、所詮はハダカデバゴブリン。

 呆気なく終わってしまいそうだ……ただし、この屋上だけの話だが。

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