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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
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077 ダンジョン進撃


 アマルティアの目の前には廃墟が広がっていた。

 ダンジョンだ。

 時間凍結のせいでか朽ちてはいない……しかし、外圧でか所々は崩れていた。

 

 「時間は止まってても……叩けば壊れるし」

 側の車を指差したマリー。

 「魔物に凹まされもするのよ」


 アマルティアはその車を見て。

 次に途中で折れ曲がった鉄で出来た街灯も見た。

 どちらも新品ではないけれど……錆び1つも無いのにただ凹み曲がっている。

 だが、時間経過が相当なのも確かだ、塵や埃が降り積もった雪の様にも分厚い。


 そして、後ろを振り返ればソコは大きな病院。

 なぜそれが病院とわかるのかは簡単、建物に大きく看板が書かれて居たからだ。

 私達はそこから出てきた。

 マリーの実験場は、ダンジョンの中の端に有るその病院だったのだ。

 

 「さて、今回はこのダンジョンを完全攻略する必要は無いからね」

 マリーが皆にそう伝える。

 「車かバイクをゴーレム化して持って帰るだけで良いのよ……それ以上は必要ないのは覚えておいて」

 

 「何台くらい必要なの?」

 エルが聞いた。


 「出来れば十台か……簡単に済むようならもう少しプラスかな?」

 簡単では無い場合は数のマイナスも有ると含みも有る様だ。


 「その中の1台にリクエストをしてもよい?」

 エルはマリーにお願い事をした。


 「なにか、欲しいモノでもあるの? このダンジョンの時代にそれが有れば良いけど」


 「馬力の有るエンジンが欲しいの……出来ればオートマで」

 エルは説明をする。

 「私のヴェスペのエンジンを載せ換えたいのよ……ルノーftみたいに」


 「ああ、車種には拘らないのね……」

 フムと考えたマリー。

 「アッチにはトラック会社が有るし」

 右を指す。

 「こっちには、中古の外車屋」

 左を指す。

 「後は少し遠くなるけど……日本車のディーラーが何件か連なってる街道が有るわよ」

 真っ直ぐに真ん中の道を行くようだ。


 エルは後ろに控えている元国王をチラリと見た。

 側にはローザも居る。

 エルには車の事は詳しくはわからない、だからどう判断して良いのかは、その二人に任せるしかないようだ。


 「トラックはディーゼルでしょう? それはダメね燃料が面倒臭いから」

 ローザは右を否定した。


 「日本車も排気量が小さいからのう……馬力は出せてもトルクが無理じゃろう」

 頷いた元国王。

 「左じゃな」

 

 「まあ、途中で良さげなのを見付けたら……それも順次ね」

 ローザはそう言って笑う。

 良さげとは……儲けに成りそうなモノの事か? それとも趣味を満足させるモノかの判断は着かない。

 でも、ワクワクはしている様だった。

 ダンジョン・サルベージは何度やっても楽しいのだろう。


 そんな理由なので、三姉妹は今回は徒歩だ。

 車なりバイクなりを運ぶのだから、都度都度の運転手に成る。

 手順としては、まず元国王がゴーレム化。

 その後、アマルティアのゴーレムの為の使い切り魂捕縛疑似結晶でゴーレム化を解除。

 それでもう普通に運転できる。


 それに道路に降り積もった、土埃でバイクの機動性も発揮できそうに無いのも有った。

 車両としては、ヴィーゼとバルタのルノーftだけ。

 それは、流石にダンジョンの魔物対策としての保険の意味だった。

 徒歩に成る皆の為のバリケード代わり。

 

 その徒歩に成る者も、もちろん武装はしている。

 三姉妹はいつのもstg44とM24柄付き手榴弾だ。

 タヌキ耳姉妹はkar98kと手榴弾。

 エルはカンプピストルと、自分専用の五体のミスリルゴーレムに2cm戦車砲、mg34軽機関銃、8cm,sgrw34迫撃砲と予備の弾薬を担がせていた。

 クリスティナは魔物軍団で。

 ペトラとムーズは無線機を手に持っている。

 そして私はmp40、ゴーレム兵にも同じモノを持たせていた。

 

 私のゴーレム兵は区別の為にドイツ式鉄帽とイナとエノに貰った半袖のセーラー服の上だけを着せていた。

 身長が低く手足が短いので、袖は七分袖に成りお尻まで隠れているのだが、ポッテリとした胴体はサイズが丁度でダブつきは無い。


 区別する対象はエルのミスリルゴーレムとでは無くて、他にも居るからだ。

 何時ものルノーftの後ろに乗って居る土塊ゴーレム……これは普通の市販品だから能力もたかがしれていた。

 ジャッキ代わりか荷物持ちの雑用で戦闘に全くの役立たず。


 そして、マリーのラボに居たゼクスとシルバーのラインが入ったヤツ……名前はそのままシルバだそうだ。

 この2体はパッと見は土塊ゴーレムなので区別が必要。

 まあ、装備を見れば一目瞭然なのだけど、盾と片手剣にデカイ両手剣だからだ。

 あと、不思議な鎧も居た……アルマと言うらしいソレ、ミスリル製のフルプレートアーマーなのだが、妙に小さい。

 サイズはゴーレム達と一緒。

 ソレだと中の人間は幼児となるが、普通に話している。

 何よりおかしいのは……歩く音が軽すぎる。

 まるで空っぽのの様に響くのだ。

 たぶん、この鎧も魔物かなにかなのだろうとは思った。

 ソレ以外に説明が出来ない気がする。

 そのアルマの武器は傘を閉じた様な形の槍だった。

 

 そして、お婆さんは銃……モシン・ナガンだろうかソ連式のボルトアクション式小銃に尖ったスパイク型の銃剣を着剣されていた。

 持つ姿を見れば、たぶん相当に使い馴れているようだ。

 

 その横のイタチっぽいオバサンは手ぶらだ。

 クリスティナに色々と教えて居た姿を思い出せば……たぶん魔法使い?

 もう一人、手ぶらなのは元国王……これは何時もの事なのでまあいい。

 わからないのはマリーだった。

 てには短い棒……たぶんスリコギ棒?

 それが武器のつもりなのだろうか?

 明らかに役に立たない者が二名程まぎれて居る気がした。


 あ、いや……ペトラとムーズを含めれば四名だ。訂正。


 

 

 さて、動き出した一行。

 戦闘はルノーft。

 その横に広がる様にアマルティアのゴーレム兵。

 戦車の後ろはアマルティア本人と犬耳三姉妹が歩く。

 少し離れて、最後尾にはエルとミスゴーレムだ。

 中間に、その他の子とマリー達と古式武器のゴーレム達だった。


 

 アマルティアは意識の本の少しをゴーレム達に分けた。

 索敵の主体はゴーレムに任せたのだ。

 なにかの異変を見付ければ即座に返答をよこす段取りだ。

 今回の特別なゴーレムを使った初めての実戦。

 意識の半分も渡せば、いざ敵を見逃した時には自分の動きに影響が出る、それは避けたいからだった。

 そして、ゴーレム達もソレに答えた動きをしている。

 銃を腰だかに構えて、視界を広く保って移動していた。

 この銃、mp40も渡せばすぐに理解した。

 アマルティアの記憶の一部を共有している様だった。

 そして、撃てる……使えるとハッキリと口にしたのだ。

 安い市販品とは違う。

 だが、完全に独立していたわけでもないようだ。

 そこは、マリーの連れているゼクスとシルバの2体とを比べれば違いが見てとれる。

 その2体は誰の指示も受けずに自分の頭で考えて動いていた。

 一見同じようだがその差は大きい。

 一瞬の判断を迫られた時にその動きに差が出る筈だ。

 

 それでも、本の少しの事なのだが……と、自分のゴーレムを擁護する。

 私のゴーレム兵は、意識で繋がったエルフと同じだと思う。

 逆にそれは利点でもある。

 一人が敵を見付ければ、即座に繋がった全員で共有出来るのだから。

 差し引きで考えても、私のゴーレム兵は負けてはいないのだ。

 各々に利点と欠点が有るだけだ。

 人なら個性の範疇だ。


 「なにか動いた! 右!」

 アマルティアが叫んだ。

 右に立つゴーレム兵が見付けたのだ。

 それを、そのまま口に出した。

 

 「どこ?」

 前と左右に居た犬耳姉妹が動き出す。

 「埃っぽくて鼻が効かない」

 「先を越された!」

 三姉妹は口々に愚痴をこぼした。

 

 「建物の中」

 2体のゴーレム兵がユックリと確実にソコに全身する。

 アマルティアは高揚した。

 鼻の三姉妹に勝った。

 そして、耳のバルタもなにも言ってない。

 後ろの目のタヌキ耳姉妹も遠かったのだろう。

 その誰よりも先に見付けたのだ。

 その理由は、誰よりも敵に近付けたからだと思う。

 多少の攻撃は気にしないで済むゴーレム兵の利点が生きたのだ。

 多少は鼻が高く成っても許されるだろうと、ほくそ笑む。


 パパパパんっと軽い銃声が響いた。

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