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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
71/233

070 ゼクスと名乗るゴーレム

なんだろう……ムチャクチャ重い。

エラーばかりで、小説が上げられない。

こんな日も有るのか?



困った



 翌日の昼前には目的地についた。

 

 マリーが大の字で両手を広げて。

 「ようこそ私のラボへ」

 そうニコヤカに大層に宣言して見せたのだが……。

 その後ろには普通の洞窟? 洞穴? ただの横穴? が、見えるだけだった。

 

 困惑した……元国王を除くその他大勢。

 子供達に足す事のローザだ。


 「……ラボってなに?」

 ヴィーゼが首を傾げている。

 困惑の度合いは人各々の様だ。


 今、ヴィーゼを見た者は……きっとラボの意味を知っている。

 同じ様に首を傾げた数名は……わかっていない。

 どうでもよい事だけど、面白いとペトラはほくそ笑んだ。

 と、そこで……皆がこちらを見ている事に気が付いた。

 その皆の顔がニヤケ面だ。

 口許に手を当てている者も居た。

 私がキョロキョロとしていたから……ヴィーゼの同類と思われた?

 「ち、違うから!」

 そう叫んで説明をしようとした時に。

 先に元国王が口を開いた。


 「え……」

 その一言目にマリーの蹴りが入った。


 おふっと呻いてしゃがみ込む元国王。

 「何をするんじゃイキナリ」

 片手を上げて抗議をした。


 「あんたがスケベな事を教えようとしたからよ…… ”え” から始まる言葉なんてエロしか無いでしょう」

 

 「そんなわけ有るか!」


 「あんたの頭の中なんてお見透視よ! ラブホとかそんな事でしょう? 私が言ったのはラボ」


 「いわんわ! ”ええっと” ……これって話始めに言うじゃろうが! それじゃ」


 元国王をジトリと見たマリー。

 

 「お主も言うじゃろう? ”ええっと” は」


 「言わない」

 プイッとソッポを向く。

 「誤魔化した……」

 そして……ブツブツと。


 「もう夫婦漫才は終わった?」

 ローザが声を掛ける。


 元国王とマリーは同時に叫んだ。

 「夫婦じゃない!」

 息ピッタリ。

 

 ハイハイと肩を竦めたローザは。

 「漫才をやってる間に説明しといたから……先に進みましょう」

 洞窟の穴を指差した。

 



 洞窟の中はジメッと薄暗く……でも、思った依りも広かった。

 人が横に並んで立ったままでも歩ける、そんな感じだ。

 そして、不思議なのは明かり。

 奥へと進んでも、一定の薄暗さを保っている。

 その光源に成るものは何も無いのにだ。


 「不思議な感じだけど……なにも無いね」

 鼻の詰まった妙な声。

 エレンが自分の鼻を摘まんでいた。


 「それはなに?」

 マリーがエレンに確かめる様にエレンの鼻先を指差した。


 「いや……だって、イモリとか毒草とかを鍋でグツグツ煮てるんでしょう?」

 アンナも鼻を摘まんでいた。


 「イキナリ臭いのはやだし」

 ネーヴもだった。

 「錬金術士のラボって……そういうトコよね?」


 チロリとローザを睨んで。

 「誰情報よ……私は魔女じゃない」

 ブツッブツと文句を言っていると。


 「あれー?」

 何処からかスットンキョな声がした。

 「マリー様じゃないですか」 

 洞窟の奥から、ゴーレムが歩いて来た。

 背中には丸く小さい盾を背負い。

 腰には少し短めの片手剣をぶら下げていた。


 「ゼクス?」

 マリーが返事を返す。

 「変わり無い様ね」


 「はい、お陰さまで」

 少し頭を下げて。

 「マリー様も相変わらずのチンチクリンで変わり有りませんね」


 マリーに様を付けているのに……チンチクリンとは。

 知り合いのゴーレムなのはわかるのだけど……いったい何者?

 チラリとマリーを見たペトラ。

 別段、ムッとした素振りもない。

 これが普段なのか……。


 「で、今日は何を?」

 ゼクスと呼ばれたゴーレムはトテトテと近付いてきた。

 

 「チョッと……進捗を確認しにね」


 「ああ……中に入られるのですね?」


 「まあ、そうね……ここまで来て帰ったんでは、マヌケ過ぎるものね」

 言葉にトゲが出てはきたけど……それでもムッとした顔には成らない。

 「で、入り口を開けてくれる?」


 「いいですよ」

 プイッと後ろを向いて歩き出した。

 「仕方無いですね」

 

 「口が悪い」

 思わず口に出してしまったペトラ。

 

 「でも……凄いわねあのゴーレム」

 驚いた様子のアマルティア。

 「喋って、キチンと受け答えしている……しかも、盾や剣を持っているって事はそれを使えるって事よね……完全に自立しているっていうか、ほぼ人間?」


 成る程……確かにそうか。

 この口の悪いゴーレムはアマルティアが目指していたゴーレムの更に上をいっている様に見える。

 

 「これが元国王のゴーレムなのか」

 アマルティアは複雑そうな顔をした。

 目指すコレを造れる自信が持て無いのだろう。

 

 「でも、マリーのゴーレムじゃあ無いのね……様って付けてるのに」

 あれ? って思う。


 「元はマリーのゴーレムじゃが、壊れていてなそれをワシが治したからワシのゴーレムに成ったんじゃ」

 元国王も話を聞いていたらしい。

 「だから、性能も数段アップじゃ」


 「成る程」

 その場の子供達が全員で頷いた。

 性能アップの言葉にでは無くて……口の悪い失礼なところに納得したのだ。

 「元国王が造るとこうなるのか!」


 「凄いじゃろう」

 鼻高々に笑う元国王。


 と、T字路に出た。

 真っ直ぐ向かって右と左だ。

 どっちに向かうのだろうかと見ていると、ゴーレムはどちらにも行かずに進んで壁に面と向かう。


 「あれ?」

 左右の行く道に迷ったのだろうか?

 成る程ゴーレムらしい……。

 フムフムと観察を続けていると、ゴーレムはその壁をノックした。

 すると、そこの壁が左右に開いて十字路に変わった。


 ゼクスと言われたゴーレムはチラリと後ろを向いてニヤリ。

 まるで、私の考えを見透かした様な笑みだ。

 やはり知能の方はチョッと……とか思ってたでしょう? そんな顔に見えた。

 ゴーレムなのに表情まで有る……すこし微妙だけどわかるのだからそれは表情だ。



 十字路の先を進むゼクス。

 後ろを着いていく皆。

 途中に石の大きな一本橋と洞窟なのに滝まで有った。

 滝の水飛沫に嫌な顔をしていたバルタだが、それでも文句も言わずに着いて来ている。

 そして、違和感の有る扉。


 洞窟の自然な岩肌に人工的なソレ。

 それも、普段目にするでもない……ダンジョン産の扉に見えた。

 ピシッと縦横の角。

 素材は金属とプラスチック?

 それを押し開けて中にと進む。


 やはり、ダンジョンのビルか何かの廊下だった。

 床は少し柔らかい感触でツルツルで鈍く光っている。

 天井は細長い電気が連なって煌々と照らす。

 横の左右の壁には手摺が付いていた。

 全体的には白く清潔感の感じられる明るい雰囲気だ。

 

 「イモリと毒草の鍋は……無さそうね」

 エルが三姉妹に笑っていた。


 三姉妹も頷いて、やっと摘まんだ鼻から手を離す。


 そこに、白い服を着て頭に白い帽子を乗っけた骸骨がスレ違う……。

 骸骨……スケルトンだ!

 そして、スカートだから……女性のスケルトン!

 そのスケルトンはマリーを見てお辞儀をしている。

 知り合いなのか?


 そうなのだろう。

 マリーも元国王もゼクスと呼ばれたゴーレムでさえ気にせずに歩いている。

 私は驚いて、空いた口が塞がらないので声には出ないが叫んでいた。

 スケルトンだよ!

 アンデッドだよ!

 しかも性別あったよ!


 「流石ゾンビのマリーの知り合いね」

 後ろに居たエルが呟いている。

 驚いている様だが慌てた風ではない声音。

 

 そして、私はポンと手を打った。

 そうか、マリーもアンデッドだった。

 なにも慌てる事は無いのだ。

 アンデッドなんて普通……普通か?

 ……いや待て、今の私達だと14にん中1人がアンデッド……ゾンビのマリーだ。

 魔物も入れればペン太とタロとジロもゾンビだ。

 足せば……18分の4、つまり22.2222222……パーセントって事?

 あれ? 計算あってる?

 間違っててもそんなに変わらない筈と首を降る。


 兎に角ゾンビの比率は結構あるのだ。

 そうだ……やっぱり普通なのだ?

 ……。

 「普通か?」


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