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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
57/233

056 古式冒険術ショー

おおお!

またポイントが増えた!


嬉しい……非常に嬉しい!

増えたのは2ポイントだけど……作者のとってはされど2ポイントなのだ。

とにかく嬉しいのだ!


さあ、明日も頑張ろう。


また明日!


 派手な色合いの豚の魔物の群れの真ん中で、爆発した火の玉の魔法。

 

 「おおお……スゴッ……」

 アマルティアは初めて見る大きな攻撃魔法に驚いて……感動した。

 流弾や手榴弾とは違う。

 地面が爆ぜるのとは違い、火その物が弾けた。


 「見た目は派手だけど、威力はイマイチな感じだね」

 横のネーヴは以前にも見た事があるのだろうか? 冷静か? と、チラリと横目で見れば思い出す。

 つい最近もガソリンスタンドの爆発を見ている。

 アレは遠くからでも火柱が見えたから、それを間近で見ればヤハリ規模が違うのだろう。

 それに戦場の経験も私よりも多い。

 それも有るのかも知れない。

 そう思えたのは、他の観戦客と子供達との温度差だ。

 ヴィーゼやバルタなんかは全く動じている風でも無い。

 もちろんワクワクして見ているのだろうけどそれが凄いとは見ていないようだ。

 魔法がどうだ? 火の玉がどうだ? のその威力に興味が有るとそんな感じ……横のネーヴと同じだと感じた。

 それに私自身も……普通の観客とは違うようだ。

 感動はしたがスグに冷静になれている。

 たぶん、戦場を知らない観客はいまだに多いに感動を隠せないで居る。

 順に顔を見てみても呆けたままが大半だ。 

 

 「次は弓の人だね」

 その言葉で冒険者の方を向くと、弓を構えたオジサンが仁王立ちになり……背中の矢筒から一本を取りつがえたその状態で暫く静止。

 

 「精神統一?」

 狙いを定めて居る風でもないが……張り詰めるモノは感じる。

 私もゴクリと唾を飲む。


 「違うんじゃない? たぶん見せる為の演出?」

 横のネーヴはシラケた解説をしてくれた。

 「あんなに時間を掛けたら、普通の狩りでも的に逃げられるよ」


 そうか?

 いや……そうなのだろう。

 ネーヴの言うことは正しいのだろう……でも、それを口にする事は正しくないと思う。

 まわりの観客を見てみても皆が固唾を飲んで次の動作を待っている。その緊張感が私でも感じられる。 

 私もそっち側で見ていたいのに……こっち側に引き摺り込まないでほしい。

 単純に楽しんでもいいじゃないの……古式冒険者ショーなんだし。

 演芸だよ……。

 楽しもうよ。

 楽しませて。

 と、恨みがましくネーヴをジト目で睨み付けていると……当の本人はズズズッと鬱陶しそうに鼻をすすった。

 ああ……鼻が効かなくてイライラしているのか。

 だから斜めに見ている? そんな感じだった。


 「ほら……さっきから豚は一歩も動いてない」

 ネーヴは魔物を指差している。

 確かに動いていない……魔法の爆発に驚いて呆けている? そんな感じだ。

 少し高等な生物は、驚くと四肢が突っ張って硬直する事がある……たぶんソレ。

 「動いていない的を狙うには時間を掛けすぎだ……ド素人でもモット早く射つよ」


 いや……ド素人は何も考えないからスグにブッパなすだけ。

 そんな突っ込みを入れようとした時。

 ヒュンと弓の鳴く音がした。

 遠くの豚が倒れる。

 そして間髪入れずに二の矢……三の矢。

 豚は次々と倒れた。


 「ほら……時間を掛けなくてもチャンと狙えるジャン……ズズズッ」

 

 ネーヴの言う通りだった。

 一匹の豚に矢を打ち込むならわかる。

 でも、違う豚に……それも、距離の離れている魔物に当てたのだ、その都度狙い直している筈だと考えれば、本来の狙う為の時間は二の矢と三の矢のその間の時間だ。

 ……興醒めである。

 

 「次は、盾の人かな? ズズズッ……魔物も随分と減ったし」

 

 正解だった。

 片手剣と盾の男が前に走り出た。

 胸と腰を鉄の鎧で囲み、下半身は厚手の革のズボン当てがぶら下がる、冒険者にしては重装備だ。

 兎に角、移動して動き回る冒険者にはソレでも過ぎるとも思える。

 それだけ体力に自信があるのだろう。

 たぶん……まさか列車で移動するから見映えで選んだって事は……無いよね?

 うん……それは無いと思う。

 見た目なら騎士軍団が装備するフルプレートアーマーにする筈だ。

 その方が誰が見ても格好いいから。


 騎士軍団と冒険者の違いは幾つか在るが、大きくは移動だ。

 冒険者は目的が魔物退治や希少性の高い物の採取、もしくは御使いなのでとにかく動く事が基本に成る、なので動きやすい格好がデフォらしい。

 なにか有ればその都度対処するから特にそうしておかなけらばいけないのだ。

 そして、騎士軍団の方はその移動を事前に計画された通りに行う。

 行軍途中でトラブルが有れば、騎士軍団を取り巻く軽装の軽歩兵が対処する……騎士軍団の本来の目的地に着くまでは兎に角移動に専念するのだ。

 だから重いフルプレートアーマーでもよいのだ。

 因みにだが、ソレならば目的地に着いてからフルプレートアーマーを装備すればよいのでは? そんな事を私も考えた。

 そんな重いものは馬か荷馬車にでも運ばせれば良いじゃない……と。

 だけど、その格好で移動する事にも意味があるとマリー先生は言っていた。

 それを見た民衆を安心させる為と……威圧する為らしい。

 国に反抗は無意味だと知らしめる意味合い。

 それを知識として知っているのは……私にはアンマリ関係が無いとは思うけど、歴史の授業も受けさせられたのだ。

 ゴーレム造りとどう絡む?

 それも聞いたけど……一般教養も必要だとそれだけだった。


 でだ、そのハリーだっけ? トニーだっけ? が豚にとりついた。

 盾を前にして豚を押し込む。

 豚も抵抗して互いの力比べか? 拮抗して見えた。

 いや、ジリジリと押されている。

 「見せるわね……苦戦している演出?」


 しかし、ネーヴの声音は今までとは違う。

 「あれは本気で焦ってる……マズイかも知れない」

 チラチラとバルタを確認していた。

 

 私もバルタを見たが、確かに眉をひそませている。

 しかし、動こうとはしていない。

 考えているのだろうか?


 と、両手剣使いと槍使いが加勢に入った。

 それも今までとは違う動き。

 名乗りとか前置きとかが無い……慌ててという感じだ。

 

 3人掛で豚を1・2匹は倒したであろうその時。

 いきなり後ろを振り返り逃げ出した。

 逃げる最中に後方を指差して魔法使いに指示を叫んでいる。


 「えええ……逃げるの?」

 私は驚いて……そしてガッカリした。

 「数が多すぎたの?」

 それくらいは見極めてほしかった。


 「違う見たいね……」

 ネーヴは豚のもっと奥を指差す。


 七色のパステルカラーの牛が突進して来ていた。

 「暴れ熱帯牛!」

 そんな名前かどうかは知らないけれど、派手な色合いの豚が熱帯豚なら牛もそうだろうと高を括ったのだ。

 暴れの方は見たまんまを付け足しただけだけど。


 その暴れ熱帯牛は見る間に前衛の冒険者達との距離を詰める。

 近づき過ぎたのか魔法使いは躊躇していた。

 弓使いは必死に弓を放つが一人で攻撃、一矢で一匹……豚しか倒せていない。

 暴れ熱帯牛にも何本かの矢が刺さってはいるが効いているのかいないのかがわからない状態だ。

 なので、まわりの雑魚……豚を先に排除しようとの判断だと思われる。


 そして、暴れ熱帯牛は盾の冒険者を後ろから突き飛ばした。

 顎をシャクリ首を捻って二本の角で冒険者を吹き飛ばす。

 その飛ばされた冒険者は運の悪い魔法使いに激突した。

 それぞれの手に持つ武器が吹き飛ばされる。

 軽い杖は真上に飛び。

 重い片手剣はスグそこの地面に突き刺さる。

 平たい盾は私の前にまで飛んできた。

 両手剣使いは……豚の群れに飲み込まれた。

 熱帯豚も暴れ熱帯牛の突進に感化された様な動きだった。

 

 その暴れ熱帯牛の方は、今度は槍使いに狙いを定めた用だ。

 槍使いもソレがわかったのか、逃げながらにも槍を構える。

 随分とへっぴり腰だが、逃げ腰ではそれも仕方無いのだろう。

 そして、案の定……弾き飛ばされている。

 今度は槍は勢い良く飛んで後ろの客車に突き刺さった。


 残ったのは弓使い。

 しかし、もう戦意は残されてはいない感じに見える。

 ブルブルと震えて下半身を濡らしていた。

 もちろん弓は握ってはいたが下を向いている。

 あれでは反撃どころか射つこともできそうにない。


 「うわ……どうすんのコレ」

 私は呻いてネーヴに尋ねる。


 ネーヴはまたバルタを見ていた。


 そしてバルタは後ろを探っている。

 客や列車を見て、なにかを確認しているそぶり。

 しかし、スグに首を降って……こちらに歩いてきた。

 ……。

 ちがった。

 途中に落ちていた片手剣を拾いに来たのだ。

 それを手にしたベルタが。

 「ヴィーゼ手伝って」

 大きくもない声だがはっきりと聞こえた。

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