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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
51/233

050 ストリート・ファイト

今日は大幅に遅れてしまった。


ついついff14のプロデューサーレターを見いってしまったのだ。

気付いたら……ウッワーな時間。


慌てて書いたから、少し自信がない。

ってか……今までも一度も自信が有ったわけでは無いのだけど。


でも、ポイント増えたので……もう少し頑張りをプラスせなばと反省。


明日も頑張る。

応援ヨロシクです。


 この街の子達と友達に成って数日が過ぎた。

 その間、雨は降ったり止んだりを繰り返している。


 バルタは雨の日は宿屋にこもったが、止めば外にも出てくる。

 そしてその度に……変な噂が広まった。

 何処かの盗賊の娘。

 何処かのマフィアの娘。

 何処かの組織の娘。

 ……あの時、チャボーをひっくり返したのを何処かで見ていた者が居た様だ。

 雨も止んでいるのに傘を差して、触れる事もなくに倒したと……それの理由がそれらしい。

 だけど、まだそれはいい。

 街を歩いていると、俺と勝負しろとガタイの良いお兄さん達が何処からか沸いてくる。

 最初は断って居たのだけど……流石にもう面倒くさくなったので、その場に転がしてやると……新しい噂が増える。

 悪魔だの幽霊だのだ。

 最近は魔王の娘……らしい。

 いい加減にしてほしいところだ。


 そして今は……。

 目の前で大人二人が口論している。

 「おい! バルタって奴は霊長類最強って聞いたぞ……それが何で小娘なんだ!」

 体のゴツイ方だ。

 こちらを指差している。


 「そうですよ、あれがバルタです」

 線の細い感じの……紳士のバッタ物みたいな奴もこちらを指差していた。


 「金を返せ!」

 上半身裸でムキムキだ。


 「やってみればわかりますって……」

 たぶん自称コーディネーターとか……自称マネージャーとかそんなヤツだ。


 そんなやり取りをもう何度も聞かされた。

 昨日もそんなのが出た。

 痩せたローブの男……と太っちょだ。

 片方は魔物遣いとか獣使いとか言ってた。

 それが天下の往来で口喧嘩を始めるものだから、ワラワラと人が集まり、私達を取り囲む様に成る。


 今も昨日と一緒。

 野次馬が集まり出した。

 最初は静かだが……そのうちに変なヤジを飛ばしてきて……そして勝負が着くと小さな紙束を千切って頭上に放り投げるのだ。 

 ……絶対にお金を賭けてる。

 とても腹が立つ。

 イライラする。

 だから昨日は瞬殺してやった。

 デカイ獣が3体も居たが、それは無視して大元のその獣を操るローブの男を直接に攻撃してやった。

 卑怯だ糞だと罵声は飛んだが……素手の女の子に獣をけしかける方がヨッポドだと思うんだけど。

 

 などと思い出していると……野次馬リングが完全に出来上がってしまった。

 私も逃げられない……ってか、動いても野次馬リングが着いてくる。常に真ん中に位置されるのだ。

 ああ……ヤッパリ鬱陶しい。


 それは向こうのオジサンも同じらしい。

 半信半疑で首を捻っては居るが、ヤジの早くヤレに押し出される格好で前に出る。

 なんだよコレって顔をしているが、あんたが金を払うから戦いたい何て言うからだ。

 元の元凶はオジサンなんだよ! と言ってやりたい。

 言っても意味は無いのだけど。

 決着が着くまでこのリングは壊れないのだし。

 やるならサッサとやろうと中央で待つ。


 と、自称コーディネーターが近付いてきた。

 雨も降っていないのに傘を渡してくる。

 ニコニコとした顔で、わかってるよねと押し付けるのだ。

 それもヤッパリ面倒臭い。

 別に傘を武器にしたことは今までも一度も無いのに……何故かコレが必要らしい。


 「傘使いのバルタか……」

 唸る半裸のオジサン。

 「俺は格闘術士のクレイン・ルラル」

 

 「クレインは鶴? ルラールは田園とか田舎……体も大きいしジャンボ・鶴田園?

 鶴田舎?」

 バルタの後ろのマリーがブツブツ呟いている。

 「アレは強いかもよ、関節技に気を付けて」

 

 「関節技?」

 嫌な顔に成る。

 「抱き付かれるの? アレに?」

 想像しただけでゾッとする。

 「セクハラ攻撃なんてサイテー」


 「そんな事はせん!」

 オジサンにも聞こえていたらしい。

 「ワシはロリコンでは断じて無い!」


 「ロリコンって何よ」

 ワードに引っ掛かったバルタはムッとした。

 子供だとでも思ってるの? もう16才よ私は。

 いや……それよりも子供だと思ってるのだとしたら、それを大の大人がイジメていいのか?

 やはり、どう考えてもロクな大人じゃない。


 バルタは傘を上に放り投げた。

 広げられた傘は空気の抵抗を受けて余り高くには上がらないが落ちるもの遅い。

 その間に地面を蹴る。


 これはストリートファイトなので、スタートの合図は有って無い様なモノだ。

 だからそれを決めるのは本来なら挑戦者の権利なのだが……私が子供なら決めたって良いじゃない。

 そんな理屈で、オジサンの懐に飛び込んだ。

 

 そしてヤッパリ抱き付こうとしてくるオジサンにペッと唾を吐いて……屈んだ。

 腕はそれで空を切る。

 バルタの腕はオジサンの足首を掴んで、そのまま股の下を括って立ち上がる。

 足首は掴んだままだ。

 その結果は、もちろんオジサンが前に倒れた。


 「速いな……」

 ノソノソと起き上がったオジサンの戦意はまだまだ有りそうだ。

 「しかし唯一の武器を棄てるとは賢明では無いな」

 

 「武器って……傘の事?」


 「そうなのだろう? 傘使いの死神バルタと聞いたぞ」


 「なによそれ」

 てか、また変な名前に成ってるし。

 「私はただの戦車兵よ……今は砲手」


 「まあいい……次こそは掴まえてやる」

 ニヤリと笑ったオジサン。


 バルタにはその笑いは変態にしか見えない。

 とにかく気色悪いのだ。

 「イヤだ……キモすぎる」

 ブルブルと震えるモノが背中を駆け上がる。 

 

 もうやだ。

 サイテー。

 バルタは立ち上がったオジサンに近付き屈む。


 「同じ事は通用せんぞ」

 予想していたと下に腕と体を向ける。


 でも、バルタもバカではない。

 同じ事をする筈もない。

 今度は屈んだ勢いで上に飛んだ。

 オジサンの上でクルリと回って後頭部に踵で蹴りを入れる。

 そしてそのまま背中に回って、軸足の膝裏を蹴る。

 そう成れば、体を回転させながらに倒れるしかない。

 だから脇腹はがら空きだ。

 パンチを入れて。

 もう一度ジャンプで顎を膝で蹴り上げる。

 合計で4つの攻撃。

 脇腹以外は筋肉の鎧も意味は無い筈だし、その脇腹も倒れる体を支えようとすれば筋肉をパンプされる暇は無い筈。

 柔らかい腹なんて、ちょっとした衝撃でも内蔵に響くのだ。

 もちろんバルタの力は速さが元なのでヴィーゼのそれとはまた違う。

 一瞬の瞬発力でドンだ!


 白目を剥いて泡を吹くオジサンをその場に残して、スタスタと元の位置に戻る。

 別にオジサンの回復を待つワケではない。

 暫くは立て無い筈だし。

 審判は居ないのだけど勝負はもう着いたのだ。


 では、何を待つのかと言えば……。

 犬耳三姉妹がヘルメットを逆さに両手で持って、バルタの側に駆け寄る。

 中には小銭が入っていた。

 今回のお捻りはチョッとだけ多そうだ。

 ムフッと鼻息を出したバルタは勝ち名乗りの片手を上げた。

 

 面倒臭いし邪魔くさいけど……やれば小遣いは貰える。

 だから、最後だけはユックリとジックリとそして確実にポーズを決めるのだ。

 それにワーッと上がる歓声も実に気持ちがいいからも有る。


 今回はその歓声の途中で、掻き消す大きな音がした。

 汽車の汽笛だった。


 「列車が帰って来た様ね」

 マリーがバルタの側に寄り空を見上げる。


 「もうこの街も終わりか」

 犬耳三姉妹は少しだけ淋しそうだ。

 チャボーや街の子達と別れる時が来たのだと理解したらしい。


 バルタは余り遊んでは居ないが、他の子達は毎日一緒に居たらしいから尚更さみしいのだろう。

 

 ほんとはバルタも普通に遊んで居たかったのだが……外に出ればどうしても誰かに捕まってしまう。

 今回の様にだ。

 なのでバルタだけは他の子達とは思い出が違ってしまっていた。


 「やっと終わりよ」

 下唇が突き出しバルタだった。

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