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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
47/233

046 今度は駅に行ってみた


 マリー達やイナ達と合流したヴィーゼ達。

 合計で7人に為った。

 どうせ集まったのだからと一緒に遊ぶ事にする……ペン太とハム助は数の外だ。


 遊ぶとは言っても街の散策だ。

 買い物をするほどの小遣いは無い。

 随分と前のことだけど。少しのお菓子を買えるくらいはバルタに貰ったのだけど……無駄遣いはしないようにと注意は受けた。

 使えないじゃん……。

 まあぁあ……街でお菓子を買うよりもぉお……ダンジョン産のお菓子の方が美味しいけどぉお……。

 服とかも……お洒落じゃないし……それは全然買えないけどぉお。

 可愛い感じのシールとかも無いし……まあそれはダンジョンでイッパイ集めたからいいけどぉお。

 

 「なにブツブツ言ってるのよ……置いてくわよ」

 マリーの声が少し離れた所から飛んで来た。

 もう皆はワイワイと歩き始めている。


 「置いてかないでよ」

 慌てて走った。 


 「でも……アレは恥ずかしくないの?」

 アマルティアがイナとエノに聞いている。

 さっきの大人に変身した格好を言っているのだろう。

 今はもう子供に戻っていたのだが……確かにアレは恥ずかしいと思う。

 

 「仕方無いよ」

 本人も恥ずかしいとは思っているようだ。

 「服が追い付いてくれないんだからね……」


 「服まで変身出来たら良いのにね」

 クリスティナは無邪気に笑う。


 「無理だよ……変身って言っても体を成長させるだけだし」

 「それに疲れるんだよ、アレは」

 姉妹が同時に首を振る。


 「エノも変身出来たけど……耳と尻尾を見えなくするだけだもんね」

 それだけでもじゅうぶんに凄いし……羨ましいと思う。

 

 「変化のタイプが違うからね」

 イナは肩を竦めた。


 「どう違うの?」

 アマルティアが興味を持ったようだ。


 「エルのは認識阻害?」

 少し首を傾げたエノ。

 「エルフの相手に意識と繋がるってヤツを……外に向けてる感じ?」


 良くわからない説明だ。

 んん? と首を捻る。


 「要するに見る相手の意識に干渉して見えなくしてる? って感じか」

 マリーはそう解釈したみたいだが……それが正解のようだった。

 イナとエノも頷いている。

 「で……二人は物理的に成長させてる?」


 「そう、一時的にだけど」

 「たぶんプラス10才くらいで……それは動かない感じかな」

 指を顎に当ててシンクロした。


 「若くは成れないの?」

 マリーの質問には首を振る二人。


 「ふーん」

 それを見てかアマルティアは少し渋い顔。

 「今は良いけど……大人に成ったら意味無いね、それ」


 「ああ……確かにね」

 笑ったマリー。

 「30才とか40才とかで……プラス10才はねえ」


 「おばあちゃんに成ったら、変化しても誰にも気付かれないかも」

 そう言い放ったクリスティナを二人は睨んだ。


 「あれ? でもその認識阻害ってのは二人も使えたんじゃないの?」

 ムーズが何かを思い出しながら。

 「ほら、敵から見えなく成るとか見えにくく成るとか?」

 クリスティナを庇う為にも話を変えた感じだ。


 「パトが言ってたタヌキ寝入りってヤツだ」

 ヴィーゼも頷いた。


 「アレは戦場とか極端な場所でしか発動出来ないよ……相手が死に対して敏感な時?」 

 「戦場に転がる死体だと思わせるワザなんだけどね」


 「それも相手の意識に干渉してるわけ?」

 マリーは首を傾げた。

 「エルフの血は入って無いわよね?」


 「相手の意識には直接は触れないよ……」

 エノはうーんと唸り、考えて。

 「勘違いさせてる?」


 「パトは……戦場で寝転がっていても何となく生きてるか死んでるかがわかる時が有る、それは息吹きか気配が感じられるかどうかとか言ってた」

 頷いてイナ。

 「それを肉体的に変化させてる感じかな?」


 「成る程……」

 わかったようなわからないような顔に成ったマリー。

 

 「じゃあさ……マリーが戦場で寝てたら気付かれないよね」

 クリスティナの一言。

 

 今度はマリーに睨まれていた。


 「そう言えばエレン達は? エルとローザも」

 慌てる様にムーズがまた声を出す。


 「駅に行ったみたいだよ」

 「空の貨車台車に車両を積み込んどくんだって」

 イナとエノは身振りと手振りで。


 「列車はまだ来てないでしょうに?」

 マリーの視線がクリスティナから離れた。

 

 「貨車は幾つか駅に置いて在るんだって。空で引っ張っても効率が悪いからとか言ってた」

 「置いて置けば、積み込むのに時間の節約にも成るって」


 「成る程……」

 頷いたマリー。

 「大きなモノならゴーレムに任せてヒョイっと積めるけど……細かいのを沢山なら人手でだからか」


 「そうそう」

 大きく頷くエノ。

 「いろんな駅に決まった数の貨車台車を置いとくんだってさ」


 「出す貨車台車と到着した貨車台車とで、数が合わなく成った分だけ空でも動かす感じかな?」

 アマルティアも合理的だと感心していた。


 「まあ、ドワーフが仕切ってるんだから……その辺は細かいよ。ローザと一緒で」

 ヴィーゼも納得してしまった。

 貸し借りも含めて細かいのだ……何時も。

 戦車の修理の時も、ネジ一本触っただけで怒るし。

 良いじゃん、戦車は大きいんだから小さなネジ一個はどうでもいいと思うんだけど……細かい。

 

 「でも……戦車はどうやって積むの?」

 クリスティナの疑問だ。


 「だからドワーフに持ち上げさせて……こう」

 イナとエノは片手で何かを掴む仕草で右に左に動かす。


 「でも列車の貨車台車って……大きいんじゃ無いの? 戦車が載るくらいだし」


 「うん大きいね」

 頷いたヴィーゼ。


 「そか……クリスティナは見た事無いのか」

 イナも頷いた。

 「駅にはデッカイ、ゴーレムが居るんだよ……それで持ち上げるの」

 エノがもう一度、動作で見せる。


 「へえ」

 

 「見に行く?」

 アマルティアもそれを見てみたいとそんな雰囲気だ。


 「行く!」





 駅の裏手。

 雨の中、幾つかの線路を跨いで歩くと見えてきた。

 列車の高さの2倍は有りそうなゴーレム2体がルノーft-17軽戦車を持ち上げていた。

 貨車台車には先にヴェスペは載せられている、その後ろに積まれる様だ。

 そして次の順番を待つシルバラード・ピックアップトラックと荷車そのままが載った牽引台車。

 

 「戦車は固いけど……トラックは普通の固さで柔らかいよね」

 アマルティアはその方向を指差す。

 「ゴーレムが握ったら、へこまない?」


 「ホントだね」

 ヴィーゼも頷いた。

 どうするんだろう?


 と、答えは近付けばわかった。


 平たい台の上に載せられていて四隅には大きな取手が着いている。

 まずは台の上に車、次にその台事を貨車台車の平たい面に載せる様だ。

 牽引台車の方も切り離されて別の平たい台の上に有る。

 別々で四両として載せる感じかな。


 「でも……載りきらないよね、アレは」

 傘を肩に掛けたアマルティアが首を傾げた。

 1人を除いて全員が傘を持つ。

 除いた1人がヴィーゼ。

 濡れて上等だからいいのだと言い切ったのでそのまま、もうびしょ濡れ。


 そのヴィーゼが濡れた頭を上下に振り。

 確かにそうだ、と頷いた。

 ヴェスペとルノーft-17でもスペースは余る……余るけどシルバラードや牽引台車は無理だ。

 そこまでの長さは無い。


 すると、線路の後ろから別の大ゴーレムが別の貨車台車を1輌押してくる。

 「あの2台はアッチか」


 「戦車の上に載っけないんだ」

 ふーんとクリスティナ。


 確かに戦車は固いけど……それは無理だと思うよ。

 出来ても不安定過ぎると思う。

 それに……ルノーft-17が下敷きは嫌だし。

 ヴィーゼはクリスティナを睨んだ。


 「私のAPトライクは……隙間に詰める感じかな?」

 

 「そう言えばアレはマリーか元国王しか動かせなかったっけか……」

 探してみたが見付からない。

 「あれ? 何処に?」


 「まだ宿屋のガレージに在るわよ……小さいから後でも良いって言われたからそのまま」


 「ふーん……まあ何処にでも載りそうよね」

 見た感じは後ろでも、なんなら戦車と戦車の間にでも入りそうだ。

 と、考えて1つ引っ掛かった。

 「でもスピノサウルスは? あれって客車じゃあ無理だよね?」

 

 「ああホントだね……どうするんだろう?」

 皆で首を捻る。


 と、後ろから声を掛けられた。

 「お前達か!」


 聞いたこともない声にナニと全員で振り返ると、そこには獣人の男の子が立っていた。

 丸こい体に短い手足。

 頭には柔らかそうな赤色の鶏冠。

 喉にも赤色の袋をぶら下げている。


 「鶏の獣人?」

 首を捻ったクリスティナ。


 「鶏だから獣人じゃあ無くて鳥人じゃないのかしら?」

 ムーズも首を捻る。


 「へえ……そんな分類が有るんだ」

 初めて聞いたヴィーゼは驚いた。


 「無いわよそんなの」

 が、マリーすぐに否定した。

 「鳥だけど獣人よ」


 その会話を黙って聞いていた鶏の獣人の男の子の顔がみるみると赤くなる。

 怒っている様だ。

 たぶん……馬鹿にされたと思ったのだろう。


 「マズイのかな?」

 ポツリと呟いたヴィーゼだった。

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