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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
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042  駅の在る街


 雨の中、一行は街に入った……たぶん入ったのだろう。

 街には境目が無く、草原を走る道路の脇にポツポツと家が並び初めた。

 最初は平屋の家や少し淋しい家だったが、奥にそのまま進むと瀟洒な家も見え始める。

 そして少しづつ隣家の距離が縮まり……密集し始めた。

 横が縮めば今度は縦だ。

 建物が2階建てに成り、3階建てにまで成る。

 それくらいに為ると人通りも増える……パラパラからゾロゾロと。

 人族や獣人にエルフも……亜人や擬人まで居る。

 雨なのに傘やポンチョで歩いている。


 先頭をユックリ進む元国王のシルバラードの前を進む車両やスレ違う車両も数が増えてくる。

 車両は小さめのトラックやバイクが多いが、たまには戦車も見掛けた。

 戦車は殆どが3号戦車か4号戦車……たまにマーダー2も有る感じだ。

 トラックやバイクは第二次世界大戦中のモノが大半に時代の進んだ軽トラックが混じる。

 後は自転車に人力荷車に馬車もだ。


 「人が沢山……」

 シルバラードの窓から覗くクリスティナはその人の多さに臆した様だ。

 ポツリと呟く。


 「活気が有りますね」

 ムーズもそのクリスティナの上に被さる様に外を眺めた。


 「もう少し進むともっと賑やかに為るぞ」

 元国王は車のサイズを気にしながらに運転している。

 道は広いのだが、戦車とスレ違う時に歩行者にも気を使わなければいけなく為ったからだ。

 「街の中心に近付けば、左右に商店が並ぶようになる」

 運転しながらに前を指差した。


 商店特有の深い軒が横に列なるのが見えてきた。

 そして人もドッと増える。

 街道から真っ直ぐなこの道が、メイン通りなのだろう。

 だからかこの賑やかさだ。


 「パン屋さん?」

 クリスティナが最初に見付けた店だ。

 そこから商店街が始まっていた。

 

 「ネーヴが吸い寄せられてますね」

 ムーズも見付けたその店に、フラフラとバイクで近付いて行くのも見えた。

 「お金は持っているのかしら?」

 と、心配していると……アンナに引き戻されている。

 「ヤッパリ……そうよね」 

 小さく頷いた。


 その商店街には他にも色々な店が並んでいた。

 肉屋に八百屋に果物屋。

 金物屋に鍛冶屋と服屋。

 それと……防具屋に武器屋かしら? 魔石屋とスキル屋らしきのも見付けた。

 今の時代に商売に成るのかしら? 首を傾げるムーズ。

 古式ゆかしい冒険者達の御用達の店。

 武器は銃が有れば剣は無用の長物……ただ長く重いだけの御荷物だ。

 魔石で造る道具は今でも使えるけど……スキルの大半は意味がない。

 体術や魔法はまだ使えるかもしれないけど……剣術? 槍術? それに意味は有るのだろうか?

 でも、店として在るのだし……何かは売れているのよね? たぶん。

 やはりかどうにも不思議だ。傾げた首が90度を越えてもまだ足りないくらいに不思議な事だった。




 商店街を抜けると大きな噴水が見える。

 その回りは広場だ。

 これはどこの街でもそうだ。

 治水が整っている証拠でも有るし……実際にこの噴水の水を汲んでも使う。

 だが水源は無い。

 噴水の根元に大きな魔石が埋められていてソレから水が吹き出しているのだ。

 一般家庭用の小さな水の魔石も有り……実際に建物の屋根にはそれらが設置されている。

 噴水に水を汲みに来ている者達は、その魔石が小さすぎるのか? それともそれ以上に水が必要に為ったかだ。

 水の魔石はそれなりの値段がするからだ。

 

 魔石は水以外にも、冷やすや暖めるも有る。

 暖めるは温めるにも成り、水を温水に変えてくれたりもする。

 もちろん冷やすは冷蔵庫だ……小さな小部屋か箱に設置すれば食品も冷やせる。

 風の魔石と合わせればクーラーとしても使える。

 魔石は組み合わせ次第で色々と便利なのだ。


 因みにだが、ルノーft-17軽戦車にも魔石は積んでいる。

 冷やすと暖めると風だ。

 砲を撃つとガスが発生する、それを吹き飛ばす為の風の魔石。

 エンジンが熱を持った時にもそれは使われる、冷やす魔石とセットでだ。

 冬場はエンジンを暖める為に魔石……暖気運転が必要なくなるのでスグに動ける、それは戦う戦車にはとても重要な事だった。


 この魔石は主に錬金術師が造る。

 マリーにも、もちろん造れる……材料さえ有ればだが。

 結局のところ、ソレが高価なのは材料が常に不足しているからだ。

 それ専門の採掘しも居るのだが、中々に堀当てるのは難しいらしい……見付かるのは運。

 彼ら山師でもだ。

 魔石の中でも、飛空石は別。

 あれは巨大な飛空島が浮いていて、その下には何処にでも転がっている。だから値段も安い。

 でも……使い道も殆どない。

 ただ軽いだけ。

 浮いてるだけだ。

 戦車や銃を軽くしても……撃てば反動が大きく成るだけ。

 1発撃つ度に暴れられては連射も出来ない。

 使うとしても重い荷物を軽くするだけ。

 ゴーレムの重さ調整用が1番の使い道だった。

 人の比重がほぼ水なので1前後。

 土塊ゴーレムの比重で3くらい。

 鉄のゴーレムだと7。

 それらを人並みの1にするためのモノだった。

 それ以外だと……あとは子供達の遊び道具もそうかも知れない。

 飛空石を紐で体に結んで跳び跳ねると、とても高くに跳べる……だが走る事は出来なく為る。

 地面を蹴れば上に跳ねるだけだからだ。

 同じく理屈で物流の馬車や荷車にも使えない……押し引きは軽くは成るけどスグに引っくり返るからだった。

 魔石のコントロール……一定の軽さを維持するだけなら簡単なのだが、重さ軽さを自由に動かすのが難しいのだ。

 キチンとコントロールをしようとすると大量の魔素が必要に成る。

 人が扱える魔素は各々の人の持っている魔素量に限られるので……燃費が悪いという事はスグに疲れると成れてしまう。

 荷物は軽く成っても余計に疲れたのでは意味がない。

 なのでどうしたって使えないのだ。




 噴水の向こう側には横に長い大きな建物が在る。

 飾り気の無いシンプルな造り。

 サイズの割に人の出入りはポツポツとだった。

 噴水のこちら側は賑やかなのに……あちら側寂しく見える程に人が疎ら。


 その建物の方からローザが歩いて来た。

 皆はココに車両を停めて待っていたのだ。


 「買ってきたよ」

 ローザが元国王に手渡したのは切符。

 大きな建物は駅だった。


 「ふむ……で、出発は?」

 元国王が受け取ったその切符は金属の板で出来ていた……カードだ。

 それを子供達が覗き込む。


 「10日後だってさ」

 両手を広げて首をすくませたローザ。


 「そんなに?」

 渋い顔に為ったのはマリー。


 「4日前に出たばっかりなんだって」


 「それって足せば2週間?」

 エルは眉を寄せる。

 「付きに2回の出発ってこと?」


 苦笑いのローザ。

 「仕方無いよ……線路は単線で動力の機関車は1両しかないし」

 駅の方を振り向いて。

 「片道が5日か6日掛かって点検と整備で1日……だいたい一週間は掛かるから、往復だとそうなるね」


 「まあ、仕方無いのう」

 頷いた元国王は。

 「宿でも探すかの」


 「10日も足留め……」

 顎に手を当てて下を向いたエルはブツブツと考え始めた。


 その後ろではムーズがクリスティナに声を掛けている。

 「街を見て歩くにはじゅうぶんよね」

 一緒に遊びに行こうとの御誘いだ。

 クリスティナはニコリと笑った。


 他の子供達も各々が何処に行きたいとか何をしたいとかをキャッキャと話始めている。

 10日も有れば街中の隅々まで遊尽くせそうだと嬉しそうだ。

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