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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
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038 機械化歩兵とゾンビ化歩兵

 

 「ネーヴよ、ココで少しの間……粘れるか?」

 元国王は地面にヘチャゲタ状態で尋ねる。


 「チョッとだけなら」

 何をする積もりかわからないのでそう答えたネーヴ。


 「なら、先にバイクを取って来い」

 元国王は今度はエレンとアンナにそう告げる。


 「元国王は?」

 「どうするの?」

 取って来ても良いと言われればそうするが……動けないのに何故? 

 

 「だからワシは奴らに運んで貰う」

 指を指した所にスピノサウルスが現れた。

 

 首を捻る三姉妹。

 スピノサウルスはサイズは確かに大きい馬並みだ。

 でも最中には硬いセビレが伸びているのでソコには乗れそうもない。

 でも……本人がそれでも出来ると言うので有ればと二人は頷いた。


 そして走る。

 ガソリンスタンドに一直線だ。

 と、後ろに気配を感じたエレン。

 振り向く間もなくに背中のランドセルに宙ぶらりんにぶら下げられる。

 なに?

 懸命に首を回すが背中は見えない。

 と、アンナの後ろにスピノサウルスが近付いて、そのランドセルを口で咥えて持ち上げる。

 あ! 私もあの状態か!

 納得のエレン。

 そして、咥えられて走るスピノサウルスの速度はエレン達の倍は有ろうかとの速さだった。

 たぶんこれでも遅い速度だと思われる。

 エレン達をぶら下げているので遠慮しているのだろう。

 「もっと速くても大丈夫よ」

 言葉が理解出来るのかはわからないけど、とにかくそう叫ぶ。


 するとスピノサウルスはイキナリに加速した。

 何時ものバイクでの速度を越えている体感。

 

 あっという間にガソリンスタンドだ。

 そこでポトリと……でも優しく下ろされる二人は一目散に自分のバイクに走って取り付き、素早く起こしてそのまま押して勢いを着けてアクセルを捻る。

 バイクを倒す時は何時も、キーはオンの状態でローギアに入れっぱなしだ、その理由は動き出しが早く出来るから。

 押してタイヤを回せばエンジンも回る、その状態でアクセルを捻ればオーケーだ。

 戦闘中にいちいち面倒で時間の掛かるキックなんかはしていられない。

 クラッチ付きなのでタイヤからエンジン迄の回転数の調整も楽に出来るし……そのまま飛び乗るか、いったんクラッチを切って跨ぎ直すかの選択も可能だ。

 そして今回はそのままの勢いで飛び乗る事を選択した。

 

 自力で動き出したバイクに引っ張られるそれを利用してヒラリと飛び乗る。

 シートに尻が付けば足は適当でもアクセルは全開で加速。

 ローギアでのエンジン回転数や速度の頭打ちはスグだが……適当に投げ出された足でタンクを挟むのもスグだ。

 後は何時もの通りにギアをドンドン上げていけばよい。

 エンジン回転数さえ落とさなければ速度のノリも上限一杯でイケる……スピードメーターの針も息付く暇もなくに右に上る。

 後は路面の状態……ここは雨とガソリンが混ざった状態で滑り安いが、バイクは小さくて軽いしエレンもアンナも小さくて軽い。

 多少の後輪の滑りもバイク自体が非力なので、それも押さえ込むのは簡単だ。


 エレンの先を走るアンナは右に左に滑らせて、倒れそうに成れば足の裏で平らに地面をパンと蹴っている。

 もちろんそれはエレンも同じ。


 「投げるよ!」

 二人の向かう先からネーヴの声が飛ぶ。

 持っているのはも、ちろん手榴弾、


 その声に反応した二人は少しだけ視線をズラしてサイドミラーを確認した。

 後ろからペンギンが猛烈な勢いで滑ってくるのが見えた。

 距離はまだ有るが、スピードの差は歴然なので追い付かれるのもスグだろう。

 だがこちらにも優位に立てるモノは有る。

 二人は進路を左右に別れた。

 道路の真ん中から端に極端な車線変更……滑る様にレーンを変えた。

 そこそこ広い道路で対向車線も気にしないでいい、間一杯に広がり真ん中を空ける。

 そこをペンギンが追い越していった。

 いくら速くても、一度滑り出せば曲がれない止まれないは明らかなデメリットだ。

 

 もう一度サイドミラーを確認した二人。

 攻撃してきたのが、今の1匹ならそのまま走れば良い。

 が、やはりか2激3激が来ている。

 エレンはアンナにアイコンタクト。

 アンナも頷いて……中央に戻る。

 先程と同じくアンナ少し先行の縦1列。

 ただ1つの違いは、二人の左手には手榴弾が握られていった。

 

 距離を計り……それを同時に手離す。

 カランカランと地面を跳ねて後方に置き去りにされた手榴弾。

 それが爆発する前にまた左右に別れた。

 

 先に前方で爆発が起きる……ネーヴの投げたヤツだ。

 そして時間差で、今度は後方。


 目に入った前と後ろのペンギンが凍って、あらぬ方向へと転がっていくのを確認して。

 視線を前……目標地点に戻す。


 そこにはもうスピノサウルスが到達していた。

 元国王を咥えて持ち上げる1匹とそれを守る態勢の相方。

 あの二匹も兄弟だ……いざと成ればその連携は正確で速い筈。

 実際に元国王を咥えて走り出すのも早かった。

 相方は少しだけ遅れているのはネーヴへのサービスの積もりかな?

 バイクを起こして走り出すのを待っている様にも見えたのだ。

 

 そしてネーヴもエレンとアンナを待っていた。

 三姉妹が合流して、1列縦隊からY字縦隊に変化する。

 前の二人がポイントマンだ。


 ポイントマンとは……戦場で隊の先頭を行く者の事いう。

 進行方向その左右を警戒して敵またはトラップその他の障害物を確認する役目だ。

 そしてそれは必ず一番最初に敵と会敵し戦闘開始する役でも有るので危険度も断トツに成る。

 何時もは三姉妹が三人でやっている仕事だが……今回は三人しか居ないので、ネーヴとアンナの二人が立つ。

 前の右がアンナで左がネーヴ。

 元国王は今の状態はお荷物なので除外として、スピノサウルス二匹は入れたとしても5人だけど……スピノサウルスの戦闘能力はわからないのでこれも今のところは除外。

 適当に遊撃でもして貰うかそれとも元国王を運ぶだけの輸送部隊? 輜重兵?



 「コンタクト!」

 叫んだのはアンナ。

 首の向きは右。

 速度も姿勢も変化は無し。

 その意味は右側の敵にこちらも発見されていると成る。

 まだ見付かっていないのなら速度を落とすかそちらの影に動くのだ。

 ポイントマンの行動はそのまま隊への指示だ。


 後ろのアンナは素早くネーヴを確認した。

 ネーヴは少し減速してアンナの後ろに着いた。

 ネーヴの見ていた方向には敵が居ないとの判断だ。

 なので優先されたポイントマンのアンナの行動を見るそのための位置取りに変化した。

 今はポイントマンはアンナ一人となっているわけだ。


 アンナは手榴弾を準備した。

 すぐ後ろのネーヴもそれに倣う。

 少し離れた後方のエレンはstg44を構えた。

 それがペンギンに効かないのはわかっている……だが距離の空いたココからでは手榴弾は届かないだろうから、その牽制の為だ。

 効かなくったって撃たれるのは嫌な筈だ。

 敵が嫌がる事は積極的に遣るべき事だと教えられている。

 

 敵に弾を当てる必要は無い。

 敵に頭を出そうとする事を躊躇させられればそれで良い。

 その動きが敵の行動速度を落とす事に成るからだ。

 先手を取る事は、相手の動きを封じてそこにとどまらせる事に繋がる。


 しかし、エレンは手榴弾を投げなかった。

 投げる暇が無かった。

 それよりも先に元国王を咥えていない方のスピノサウルスが走ったのだ。

 今までとは走り方が違う……二足歩行で強烈な加速を見せた。

 咥えている方は相変わらずの馬の様な四足歩行のまま。

 

 警戒している時や……それ以外でも時たま二本足では立っていたのだけど。

 本気で走る時は走り方が変わる様だ。

 一気に近付いて急停止。

 その勢いで体を反転させて太く長い尻尾でペンギンを弾き飛ばした。

 一撃だ。


 そしてまた元の位置に戻る。

 元国王を守るその二匹は、米軍風に言えばバトル・バディってヤツだ。

 

 「私達……負けてない?」

 「声も掛けてないよね? あの二匹」

 前の二人は感心仕切り。

 

 後ろのエレンも驚いた。

 アイコンタクトや動作での指示も無かったからだ。

 そして勝手に動いたわけでも無いのもわかる。

 だって……動かない方は全く変化が無いのだから。

 普通なら勝手に動けば少しは驚くし……何かしらの変化をしてしまうモノなのに。

 ってことは……あの二匹は本物だ!


 輜重兵なんて言ってゴメン……心の中で謝るエレンだった。

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