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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
231/233

230 エルフの起源


 進化の本は……そのまま種の進化についてが書かれていた。

 ただし、その理屈はおかしい。

 自然に進化と淘汰が繰り返してのモノでは無い、そこに魔法が絡んだこの異世界だけのモノだった。

 人の起源は……猿だった。

 類人猿ではない……あの、リンゴの木下に居たモノ達だ。

 そして、その近くに居た犬やその他の獣は、獣人達の材料だった。

 「ここまでの……幾つかのフィールドは実験場?」

 猿をベースに魔法で遺伝子を操作して人に変える……異世界人。

 その人の遺伝子にほんのスーパーセントの獣の遺伝子を混ぜ込んだモノが獣人。

 遺伝子的には……その差は僅かだ、だからその間にも子供が出来る。

 ロバと馬とで……ラバが出来る様にだ。

 

 そして、その出来上がった異世界人の獣人にもう少し獣に寄せる事もしている。

 混ぜる遺伝子をどこまで増やせるかの実験。

 つまり、もっと獣っぽくだ。

 それが……猫やイタチ。

 なぜそんな事が必要なのかは……魔物の存在。

 異世界に魔素の供給は必要不可欠。

 それは常に死が必要なのだが、人に戦争をする様に仕向けても必要量は得られない。

 だいいち、それでは人が絶滅してしまう。

 だから異世界から魔物……もしくは普通の獣を魔法で魔物に変えて召喚する。

 この召喚はコピーなので、いくらでも可能だし。

 高度な人を造るよりかは簡単だ。


 だったら、人も召喚人で良かったのでは? と、考えるのだが……。

 ページをパラパラと捲ったマリー。

 「最初の頃は、魔素の有るこちらの世界に馴染め無かったのね」

 寿命が極端に短くなっている。

 一代目で子供が産めたとしても、その子供……二代目は成人、子供が産めるまで成長できない。

 ……つまりは、私が造ったクローンと同じだ。

 10才が限界。

 それが初期の転生コピーの限界。

 ……。

 だから、より強い人間を現地で造る必要が有った。

 肉体のみで魔物に打ち勝てる者……それが獣人達、だ。

 そのうちに、スキルとかを与える実験を経て、人は魔法で魔物を倒せる様に成ったので。そうなれば、もう獣人を強化する必要は無くなったのだが。

 なので、人の強化……獣人の研究はここで終わり。


 以後は人を増やす事に注力されている。

 が、最初の頃の争いを好む性質が抜けきれない。

 だから、直ぐに戦争を起こして人は減る。

 それは、文化や文明を与えても……変わらなかった様だ。


 なら……と、今度は人そのものを作り直そうと考えた。

 目指したのは究極の社会性。

 蟻を元に人を造った……だが、集団として固まり過ぎてバラけない。

 広がらないのだ……それは増えにくい。


 トカゲとかも試している。


 「あ!」

 思わず声を上げたマリー。


 「なに? どうしたの?」

 横で別の本を読んでいたオリジナル・エルがマリーを見た。


 「いえ……ごめんなさい。気にしないで」

 本を開いたまま胸に隠そうと押し当てる様にしてマリー。

 そして横のエルを見た、狐の獣人でエルフの血も入っている。

 もしかすると人の血もかも知れない。

 ……もう一度、本に視線を落とす。

 エルフの起源が書かれていた。

 エルフはハダカデバゴブリンだった。

 驚きの事実だ。

 ハダカデバゴブリンはテレパシーに様な繋がる能力が有ったのだ。

 それは集団そのものが個人として成立させる。

 複数いても、考える事も感じる事も纏めて一つ。

 だから、物の取り合いも起こらない。

 財産も総てが共用なのだから……究極の社会性だ。

 それは進化をした先のエルフでも同じ。


 「だから、穴を掘って地下に住みたがるのね」

 

 マリーは驚いた。

 顔を上げて声の主を見る……と、エルだった。

 マリーの持つ本を上から覗き込んでいたのだ。


 「大丈夫よ……そんなの気にしないから」

 エルは肩を竦める。

 「でも、エルフも上手くいかなかったのね」

 指を本の先を指す。

 

 指された所には、エルフの問題点が書かれていた。

 繋がる力は、繋がった者だけにしか認めなくなる。

 繋がらない物は理解出来ない者として排除の対象だ。

 簡単にわかり合える事に慣れてしまった者に、複雑な人間関係……相手の考えや心を推し量るなんて不可能だ。

 つまり……結果は排他的で他者に攻撃的な人間に成ってしまった。

 

 「戦争とか……争いとか……無くならないわけね」

 エルはそう呟いて、自分の本に戻る。

 

 見ればスキルについての本だった。

 特殊な能力の解説本?

 チラリと目線を本棚にやると。

 魔法や魔方陣の本も有る。

 それらも気になる……とても気になるのだが。今はクローンの問題をどう解決するかだ。

 こちらに来た転生者は、長く生きる者も居る。

 期限が10年って事は無い筈だ。

 それは、魔素の問題を解決したからだろう。

 

 マリーはパラパラと本を飛ばし読む。

 どこかに有る筈だ。

 と、転生者の血の利用法……そんなページに行き着いた。

 猿からの進化の現地人と、転生者を混ぜ合わせる。

 それを自然にさせる方法は遺伝子の情報が近いので簡単だったようだ。

 そもそも此方の人間も猿をベースに遺伝子の情報を転生者の人間……モデルはパトか? に、合わせたのだから。

 放っといても勝手に繁殖するわけだ。

 方や遺伝子組み替え猿でも、見た目も内容も全くの同じ造りの人間なのだから……気付く事もない。

 

 そう言えばアンは純潔のロンバルディア人だと言っていた。

 つまりはアンは……猿の進化先か。

 そう考えれば、全くの人だ。

 見分けはつかない。

 

 そして、混ざって今のこの世界の人間に成る。

 猿と人との混血。

 それに依って繁殖力が爆発的に上がった。

 戦争も争いも無くならないなら、それ以上に増やせば良い……って感じか。

 

 でも、転生者の血でどうして繁殖力が上がるのだろうか?

 そこは首を傾げる所だ。

 私の経験では、日本での事だけど……確かに子供は多かった。

 二人の両親に二人以上の子供が居た。

 兄弟の居ない一人っ子がとても珍しかったのだが、それは時代だかららしい。

 もう少し後の時代の日本人の元国王は、子供が減って少子化の問題が社会問題に成りつつあるとか言っていた。

 日本人だからと言って、それが繁殖力には直結しないのでは?

 戦後の近い時代の私の時代だから子供が多かっただけでは?

 傾げた首が戻らない。

 と、答えに辿り着いた。

 ってか……ペトラの呆れた書きなぐり。

 それまで印刷されたように綺麗に書かれた文字が、突然に荒れている。

 ソコを読めば。


 ……。

 転生者ってどうしてハーレムを作りたがる?

 繁殖行動にしか興味がないのか?

 奴隷って……なんでそんなモノをつくる?

 婚約破棄? やるだけやってポイってか?

 男も女もそんなんばっかだ……。

 まあ、いいけど……結果的に増えるのだし。

 

 まだ、初期の頃の事らしい。

 そんなことばかりやっていたから……今は転生者が迫害される様に成ったのだろう。

 「猿よりも……猿だ」

 マリーも呆れてしまった。


 しかし、このページでは転生者も普通に扱われている。

 先にいきすぎた?

 ページも捲り直して戻る。


 転生者のコピーの際の魔方陣が出てきた。

 言葉の問題は、言語を頭に焼き付ける感じか? 殆どは日本語ベースなので少しの方言を直すだけ? 言葉を最初に持ち込んだのが日本人のパトだからか?

 外国語にも対応しているのは、パトが博識だったからだろうか?

 それとも、違う言語が有るとわかってそれにも合わせた?

 まあ……いまいちわからない。

 そこの記述はなかった。

 そして、相手や自分に対しての死に対する感情の希薄か……これは、魔物を殺せる様にだろう。

 魔物は強力だから……躊躇していては先に殺されるだけだ。

 あとは……魔素耐性。

 ……。

 これか?

 マリーは眉をしかめて睨み付ける様に読む。

 コピーの時に魔素を浴びせる様にして体に混ぜ込める。

 このコピー……転送の魔方陣に似ている。

 一度バラバラにして、転送先で組み立て直す……そのバラバラの間に魔素に曝す感じ……だ。

 ……。

 成る程……クローンも細胞分裂を始めた時にそれをすれば良いのか。

 タイミングは生命に成った直後が最適の様だ。


 マリーはパタンと本を閉じて立ち上がり、大きな声を出した。

 「見付けたわ! パトを生き返らせるわよ」

 胸を反らしての宣言だった。

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