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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
225/233

224 森の迷路


 湖を離れて、道を戻る。

 そして十字路だ。

 今回は二択。

 湖に行ける道と、洞窟からここまで来た道は除外だ。


 「右? 左?」

 ゴーレム・バルタが首を傾げる。

 

 子供達は顔を見合わせて、右を指す者と左を指す者と……わからないと首を捻る者にわかれた。

 方向を指した者達は、明らかに適当。

 だって、誰もその答えを知らないのだし。


 「考えたって無駄だよ」

 ゴーレム・ヴィーゼが槍をゴーレム・バルタに渡した。


 「なに? これ?」

 槍を受け取ったのだけど……首を傾げるゴーレム・バルタ。


 「それで決めたら?」

 わらったゴーレム・ヴィーゼ。


 ん? 少し考えたゴーレム・バルタ。

 「もしかして……立てて倒れた方向って事?」

 

 「そそ」

 頷いた。

 「誰かに決めさせる依りも、間違いっだった時は槍のせいに出来るじゃん」


 「まあ……いいか」

 わからない答えは運任せにしよう。

 

 パタン。

 槍は微妙な方向に倒れた。

 基本は湖の道に向いているのだが。

 「これって……どっち?」

 ゴーレム・エルが地面に倒れた槍を覗き込んで尋ねた。


 「槍の先は、微妙だけど右を向いているよ」

 ゴーレム・ヴィーゼが答える。

 

 「でも、倒れる時に左に転がったよね?」

 実際に槍は道の真ん中から左に大きくズレていた。

 道の中心に線を引くなら、左側となる。

 ゴーレム・エルは譲らない。

 

 「じゃんけんで決めたら?」

 イナが苦笑い。

 「多数決でもいいよ」

 エノも呆れていた。

 

 「それだと、棒倒しの意味がないじゃん」

 抗議の声はゴーレム・ヴィーゼとゴーレム・エルが同時。


 「じゃあ……もう一度やり直しでは?」

 エレンが早く決めてよ……と、そんな顔で。


 「でも、穂先は右だし」

 「転がった先は左よ」

 二人は意見を引っ込める積もりは無いようだ。


 なぜにそこまでムキに為る。

 どっちだって良いじゃない、行き止まれば戻ればいいだけだし。と、バルタはもう一度槍を掴む。

 

 ゴーレム・エルとゴーレム・ヴィーゼはそのゴーレム・バルタに掴み掛かった。

 「だめよ! 真剣勝負だったのにやり直しは無しよ」

 「やめてー」

 

 どんな真剣勝負だ、そんなのに意味は無いでしょう?

 くだらない。

 ゴーレム・バルタは二人を弾き飛ばして、棒を立てて手を放す。

 パタリと倒れた棒は今度はハッキリと右を指した。

 「こっちね」

 クモゴーレムに飛び乗り、そちらの道を進む。

 勝ち誇った顔のゴーレム・ヴィーゼも続いた。

 悔しがるゴーレム・エルも……やっぱり続く。


 でも、実は少しばかりズルをしたゴーレム・バルタだった。

 喧嘩に成ったのはゴーレム・ヴィーゼがイライラしていたからだ。

 その原因は、イタチの魔物を殺したからだろう。

 自分とは関係ないとはいえ、ルーツにはイタチが関わっているのは、たぶん間違っていない。

 同族殺しではないけれど……近い何かを感じたのだ。

 オリジナル・ヴィーゼもそうだった。

 体がゴーレムなので、そこまでのショックは見せないけれど、多少は有るようだ。

 だからイライラした?

 それに敏感に反応したのがゴーレム・エル?

 エルも半分がエルフなので、意識と感情の共有……この場合はゴーレム・ヴィーゼの感情の共有を受けたのだろう。

 イライラが移った?

 まあ、そんなところだろうと、微妙に傾く方向をズラしたのだ。

 本気で喧嘩に為る前に。

 

 

 暫く進むと橋が見えた。

 今度は木の橋だ。


 「これは……渡れないね」

 皆の視線を向けられたローザが肩を竦める。

 「川は深くは無いし川幅もそんなにだから……渡河する?」

 

 「面倒そうね」

 考え始めたゴーレム・バルタ。

 

 「例え渡っても、何も無いかもしれないしね」

 ローザも否定的な感じ。

 「戦車を河に沈めると、色々と面倒なトラブルの原因にも為るからね……出来るなら避けたい」


 「わかった、戻ろう」

 ゴーレム・バルタが決断した。


 全員でユーターン。

 勝ち誇った顔に為るゴーレム・エル。

 下唇を突き出してブー垂れるゴーレム・ヴィーゼ。

 ゴーレムの土塊の顔でその表情は器用だと思う他のみんな。


 さて、件の十字路を抜けて……すぐに橋。

 今度も木だ。

 

 「さっきとおんなじだね」

 ローザは首を左右に振った。


 「結局は渡河か」

 ふーんと唸るゴーレム・バルタ。

 チラリとゴーレム・ヴィーゼを見て。

 「水深を計ってくれない?」

 

 「川に潜れって事?」

 ブチブチと言いながらも準備。

 識別の為? のセーラー服の上だけを脱ぐ。

 服はそれだけしか着ていない。

 靴も無いのでポイッと脱げば終わりだ。

 あ、ランドセルも有ったか……それは先に下ろしていた。

 

 バシャバシャと川に入るゴーレム・ヴィーゼ。

 入ってすぐは腰くらいまでの深さ。

 川岸との段差は普通のゴーレム為りでも担げば問題無さそうだ。

 そのまま真ん中、目指して進む。

 三分の一くらいの所で、頭が水面の下に潜った。

 上、水面を見ながら川底を歩く。

 横から受ける川の流れの圧はそれなりだ。

 急な流れでも無いので、まあこんなもん。

 また、歩くと水面が近付いて来た。

 最深部は2.5mくらい?

 これなら、ゴーレム達で担げばわたれるか?

 ゴーレムの身長が1.5mで手を上に伸ばせば1.7mか1.8mか?

 1m弱は水に浸かる計算だ。

 大丈夫そうだな。

 それらを確かめつつ更に進むと頭が水面から出た。

 ここも岸から三分の一ほど。

 一応はそのまま対岸まで歩く。

 「ゴーレムに担がせれば行けるよ」

 声を大きくして、結論を叫んだ。


 

 戦車以外の車両は橋を渡ればいい。

 そしてヴェスペ自走砲が先に渡ってきた。

 こちらはもちろん水の中をだ。

 岸に上がれば水がジャバジャバと流れ出していた。


 「水が入ったの?」

 ゴーレム・ヴィーゼは服とランドセルをゴーレム・エルから受け取りながらに、ヴェスペ自走砲のローザに聞いた。


 「中は大丈夫だよ」

 ローザは笑って。

 「それでも水が入る場所は其なりに有るからね」

 人が乗る部分、機関部、その他の濡れてはいけない所は問題ないらしい。

 「1m迄なら、ここまで水は入らないよ」

 

 中戦車とか重戦車ならもっと深くまで潜れる様には出来ている。

 その重さで渡れる橋に限度が有るからだ。

 渡河能力も戦車の大事な機能の一つだ。

 でも、軽戦車はそこまでの渡河能力は必要としない。

 軽いからだ、コンクリートや鉄の橋だと耐荷重が10トン以上が当たり前。

 それ以下の橋が掛かる場所は、基本は小川だ。

 そんなに深くもない。

 が、それは戦車を造った国の話。

 このヴェスペ自走砲は第二次世界対戦中のドイツ……つまりはこことは違う異世界で作られたモノ。

 微妙に合わない所が有る。

 こちらの世界では、今までは鉄道以外は重くても馬車どまり……だからそれが通れるなら橋の強度はせれ以上はいらないのだ。

 鉄道は、それ専用だしね。

 

 次に渡ってきたルノーft軽戦車も、水をジャバジャバさせている。

 これだけ水が出てくれば、心配に為るのだけれど……それでも問題無いらしい。


 「メンテはするの?」

 ローザに一応は聞いてみた。

 ヴェスペ自走砲の運転席から出ようとしていないので、たぶんしないなとは思いながらだ。


 「今夜の野営の時にでも見てみるよ」

 

 やっぱりしないらしい。

 エンジンが掛かった状態なら動くと考えているのだろうか?

 そんなんでいいの? とも思うけど……専門家が言うのだからそうなのだろう。

 どうにも不安で納得できないゴーレム・ヴィーゼだった。


 「さあ……すすむよ!」

 先頭のゴーレム・バルタが叫ぶ。

 視線はゴーレム・ヴィーゼを見ていた。

 クモゴーレムの三人が先頭を切るのだから……早くしなさいって目が訴えている。

 慌てて先頭に参加した。


 そしてまた……十字路。

 ゴーレム・ヴィーゼとゴーレム・エルが二人して顔を見合わせる。

 今度はどっちだ?

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