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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
224/233

223 水中の敵

おおお!

84ポイントに成ってる。


嬉しい。


応援ありがとう。



 槍を持って水中に潜ったオリジナル・ヴィーゼ。

 そのまま一気に湖底にまで泳ぐ。

 そこではゴーレム・ヴィーゼと魔物? が格闘していた。


 相手は泳ぐのが上手い。

 スピードも有り方向転換も早い。

 見た目は……そのままイタチだった。

 長い鼻先と牙に体は短い毛で被われている。

 背丈は私よりも随分と小さい。

 

 野生のイタチ?

 それとも魔物のイタチ?

 もしかすれば亜人のイタチか?

 

 ゴーレム・ヴィーゼに体をくねらせてまとわり付く様に泳ぎ、掴まえようとする攻撃を避けて、牙を立てようと隙を伺っている。

 土塊の体に牙は効かないだろうに……無駄な事をと思う。

 それでも速さでは圧倒していた。

 ゴーレムの体では柔軟性が足りないのか、水中ではやはり速さはそこまで出ない様だった。

 

 泳いで近付くと、イタチの魔物はこちらにも気付いた様だ。

 チラチラと見てくる。

 ゴーレムと私とでドチラを相手にするかを考えている感じか?

 動きはゴーレムの方が遅い……が、私が近付くなら二対一に為る。

 ならゴーレムから離れれば一対一だ。

 そう結論付けたのだろう……向かってきた。

 相手にしていたゴーレム・ヴィーゼは一泳ぎで置き去りにされた。

 重くて泳げないのだから仕方が無い。

 

 私に向かってくるので、まずは槍を突いたのだが……体を捩りかわされた。

 距離が有ったのでそれは想定内だ。

 槍を引く勢いで短く持ち代えて、近距離戦に入る。

 相手の攻撃は牙と爪。

 こちらはもう少しだけリーチの有る槍。

 速さは互角の様だ。

 クルクルと回る様にお互いが攻撃を避けては反撃をする。

 

 何度目かの突きを入れて……その印象を焼き付けた頃合いで、反対側の石附を払う様に回した。

 虚を付けたのか胴に入ったが……水中で勢いが殺されたのか、払う攻撃ではダメージは薄い様だ。

 やはり突かないとダメか?

 槍は選択ミスだったかもしれない……ナイフの方が良かったか?

 

 仕方が無いので戦略を変えた。

 上半身を狙ってくるなら突く。

 下半身を狙ってくるなら避けるだ。

 こちらからは積極的に攻撃には行かない。

 

 何度かそれを繰り返す。

 しまいには足だけを狙うように為った。

 狙われる先がわかれば避けるもの簡単。

 ドルフィンキックでクルリと縦に回転……序でに上から槍を振る。

 イタチの魔物もそれはわかっているので、下に潜り込む様に避ける……次の攻撃の準備の為にだろう。

 

 だけど……わかっていない。

 チラリとゴーレム・ヴィーゼを見た私。

 上から下に槍を突いた。

 もちろん下に逃げる筈だ……でも、もう随分と下に追い込んだ。

 そこの位置なら固定を走るゴーレム・ヴィーゼにも手が届く。

 だから、あからさまに隙を作って攻撃をさせた。

 

 チャンスと見たのか牙を剥いて両足を跳ねる……その瞬間にゴーレム・ヴィーゼの手が届いた。

 片足を掴まれて私の足先手前でガクンと止まる。

 そのまま下まで引き摺り込まれて動ける範囲が狭まったところで、狙い済まして槍を突く。

 肩から斜めに一突きで貫通。

 イタチはゴボリと口から空気を吐き出した。

 

 

  

 湖の水面を割る様に空気の泡が浮かび、弾けたか。   

 それまでは、静かで……多少の揺らぎが見えただけなのに、それはいきなりだ。

 突然のそれは不穏に思えたのだろう。

 「大丈夫なの?」

 湖を見詰めていたオリジナル・バルタにアマルティアが聞いた。

 

 「敵を仕留めたんでしょう?」

 オリジナル・バルタは視線は水面そのままに返事を返す。

 

 その後、暫くは変化がない。

 水面もバルタの表情も……硬いままだ。

 

 「出てこないよ?」

 アマルティアはどうしても心配の様だ。


 すると、水面からポコリと頭が浮かんだ。

 オリジナル・ヴィーゼだった。

 そのままで波を立てずに岸に寄ってくる。

 「イタチの魔物だった」

 顔は少し渋く成っている。


 「勝てたんでしょう?」

 オリジナル・バルタは静かに声を掛ける。


 「なんだろう……同族殺しみたいな気分に成った」


 「ヴィーゼはイタチの獣人で、魔物じゃ無いわよ」

 

 「そうなんだけどね……」

 岸に近付き、足が底を捉えたのだろう、水面上の頭はドンドンと上に出る。

 「見た目もそうだけど、動きも同じだったのが……なんかね」

 近付くにつれ。

 胸が出て。

 腰が出て。

 手に引き摺ったイタチの魔物も出てきた。


 「全然……違うじゃない」

 その魔物を見たバルタは肩を竦めた。

 「毛むくじゃらの獣よ、それ」


 「ははは……そうだね」

 オリジナル・ヴィーゼは岸に上がり、力なく笑う。

 

 「それはもう良いから、早く服を着なさい」

 そして戦車を指す。

 「中でノンビリしていればいいわ」


 「そうする」

 そのままセーラーワンピを被って着て、靴は手に持ちルノーftの運転席に潜り込む。


 「寝ててもいいわよ」

 ヴィーゼに声を掛けて……また湖に視線を戻す。

 「後始末はやっとく」

 そういいながら、M24柄付き手榴弾を取り出して投げた。


 水面が爆発して大きな水柱を作った。


 「え? まだゴーレム・ヴィーゼが居るのに」

 ペトラは慌てた。


 「大丈夫よゴーレムだから」

 もう一度、投げる。

 今度は三姉妹もそれに参加した。


 至る所でドッカンドッカン。

 

 「ゴーレムは耳は聞こえているけど、それは物理的にじゃないし……内臓も無い。だから爆発の衝撃波は受けないのよ」

 アマルティアが心配気なペトラに説明。

 自身もM24柄付き手榴弾を手に取る。

 「ペトラも手隙なら投げて」

 そして、湖に投げ込んだ。


 一通りの爆発が止んだ頃。

 プカリと浮かんでくるイタチの魔物の背中。

 それが次々と幾つもだ。


 「結構……居たのね」

 マリーは驚いて居た。


 「陸にも居るようだから、警戒はよろしくね」

 オリジナル・バルタはアマルティアに言った。

 ゴーレム兵を森にと、そういう事だ。

 「近付かない様だったら無視して良いから」

 イタチは群れる獣では無いのだけれど……それでもここらには沢山いるようだ。

 湖が条件が良いのだろうか?

 「あと、派手に音がしたからか……小動物の気配も感じるわ」

 ネズミ?

 リス?

 ウサギ?

 そんな感じの補食される方だ。

 それらが逃げ惑っている。


 「それは……食べられそう?」

 M24柄付き手榴弾からstg44突撃銃に持ち代えたネーヴだった。


 「普通の野生っぽい獣だから……食べられるんじゃない?」

 ウサギなら美味しい。

 でも湖の側だからヌートリアとかだと……どうだろう?

 ネズミの大きいヤツだ。

 

 「じゃあ」

 姿勢を低くしてキョロキョロと始めた。

 

 「でもさ、もういい加減移動しない?」

 イナが提案。

 「先に進まないとね」

 エノも被せる。


 え? って顔に為るネーヴ。

 「ゴーレム・ヴィーゼが湖から出てくるまでならいいでしょう?」


 「まあ、動く準備も必要ないし」

 頷いたオリジナル・バルタ。

 テントを広げているわけでもない。 

 せいぜい魚を焼く為に焚き火に火を着けたくらいだ。

 その魚も数匹しか無いので……別段、今でなくても構わない。

 おやつ程度の一口か二口の回し食べ程度だ。

 今はしまっておこう……とマリーに指示を出す。


 と、そこに湖からゴーレム・ヴィーゼが出てきた。

 

 「お? 終わり?」

 ネーヴが露骨にガッカリとする。

 「もう少し潜っててもよかったのに」

 とても小さく呟いた。


 「じゃあ揃ったし、移動ね」

 ネーヴの呟きも聞こえていたオリジナル・バルタだが、それは無視して宣言した。

 誰かの希望をいちいち聞いていたら、一向に進まなくなる。

 やりたい事が終わっても、次の誰かが手を上げるのだ。

 余裕の有る時でないと、それは聞けない。


 「出発!」

 その事もわかっているゴーレム・バルタが声を上げた。

 そして、返事も聞かずに先頭を進みだした。

 

 いい加減、洞窟を目指さねば……だ。

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