223 水中の敵
おおお!
84ポイントに成ってる。
嬉しい。
応援ありがとう。
槍を持って水中に潜ったオリジナル・ヴィーゼ。
そのまま一気に湖底にまで泳ぐ。
そこではゴーレム・ヴィーゼと魔物? が格闘していた。
相手は泳ぐのが上手い。
スピードも有り方向転換も早い。
見た目は……そのままイタチだった。
長い鼻先と牙に体は短い毛で被われている。
背丈は私よりも随分と小さい。
野生のイタチ?
それとも魔物のイタチ?
もしかすれば亜人のイタチか?
ゴーレム・ヴィーゼに体をくねらせてまとわり付く様に泳ぎ、掴まえようとする攻撃を避けて、牙を立てようと隙を伺っている。
土塊の体に牙は効かないだろうに……無駄な事をと思う。
それでも速さでは圧倒していた。
ゴーレムの体では柔軟性が足りないのか、水中ではやはり速さはそこまで出ない様だった。
泳いで近付くと、イタチの魔物はこちらにも気付いた様だ。
チラチラと見てくる。
ゴーレムと私とでドチラを相手にするかを考えている感じか?
動きはゴーレムの方が遅い……が、私が近付くなら二対一に為る。
ならゴーレムから離れれば一対一だ。
そう結論付けたのだろう……向かってきた。
相手にしていたゴーレム・ヴィーゼは一泳ぎで置き去りにされた。
重くて泳げないのだから仕方が無い。
私に向かってくるので、まずは槍を突いたのだが……体を捩りかわされた。
距離が有ったのでそれは想定内だ。
槍を引く勢いで短く持ち代えて、近距離戦に入る。
相手の攻撃は牙と爪。
こちらはもう少しだけリーチの有る槍。
速さは互角の様だ。
クルクルと回る様にお互いが攻撃を避けては反撃をする。
何度目かの突きを入れて……その印象を焼き付けた頃合いで、反対側の石附を払う様に回した。
虚を付けたのか胴に入ったが……水中で勢いが殺されたのか、払う攻撃ではダメージは薄い様だ。
やはり突かないとダメか?
槍は選択ミスだったかもしれない……ナイフの方が良かったか?
仕方が無いので戦略を変えた。
上半身を狙ってくるなら突く。
下半身を狙ってくるなら避けるだ。
こちらからは積極的に攻撃には行かない。
何度かそれを繰り返す。
しまいには足だけを狙うように為った。
狙われる先がわかれば避けるもの簡単。
ドルフィンキックでクルリと縦に回転……序でに上から槍を振る。
イタチの魔物もそれはわかっているので、下に潜り込む様に避ける……次の攻撃の準備の為にだろう。
だけど……わかっていない。
チラリとゴーレム・ヴィーゼを見た私。
上から下に槍を突いた。
もちろん下に逃げる筈だ……でも、もう随分と下に追い込んだ。
そこの位置なら固定を走るゴーレム・ヴィーゼにも手が届く。
だから、あからさまに隙を作って攻撃をさせた。
チャンスと見たのか牙を剥いて両足を跳ねる……その瞬間にゴーレム・ヴィーゼの手が届いた。
片足を掴まれて私の足先手前でガクンと止まる。
そのまま下まで引き摺り込まれて動ける範囲が狭まったところで、狙い済まして槍を突く。
肩から斜めに一突きで貫通。
イタチはゴボリと口から空気を吐き出した。
湖の水面を割る様に空気の泡が浮かび、弾けたか。
それまでは、静かで……多少の揺らぎが見えただけなのに、それはいきなりだ。
突然のそれは不穏に思えたのだろう。
「大丈夫なの?」
湖を見詰めていたオリジナル・バルタにアマルティアが聞いた。
「敵を仕留めたんでしょう?」
オリジナル・バルタは視線は水面そのままに返事を返す。
その後、暫くは変化がない。
水面もバルタの表情も……硬いままだ。
「出てこないよ?」
アマルティアはどうしても心配の様だ。
すると、水面からポコリと頭が浮かんだ。
オリジナル・ヴィーゼだった。
そのままで波を立てずに岸に寄ってくる。
「イタチの魔物だった」
顔は少し渋く成っている。
「勝てたんでしょう?」
オリジナル・バルタは静かに声を掛ける。
「なんだろう……同族殺しみたいな気分に成った」
「ヴィーゼはイタチの獣人で、魔物じゃ無いわよ」
「そうなんだけどね……」
岸に近付き、足が底を捉えたのだろう、水面上の頭はドンドンと上に出る。
「見た目もそうだけど、動きも同じだったのが……なんかね」
近付くにつれ。
胸が出て。
腰が出て。
手に引き摺ったイタチの魔物も出てきた。
「全然……違うじゃない」
その魔物を見たバルタは肩を竦めた。
「毛むくじゃらの獣よ、それ」
「ははは……そうだね」
オリジナル・ヴィーゼは岸に上がり、力なく笑う。
「それはもう良いから、早く服を着なさい」
そして戦車を指す。
「中でノンビリしていればいいわ」
「そうする」
そのままセーラーワンピを被って着て、靴は手に持ちルノーftの運転席に潜り込む。
「寝ててもいいわよ」
ヴィーゼに声を掛けて……また湖に視線を戻す。
「後始末はやっとく」
そういいながら、M24柄付き手榴弾を取り出して投げた。
水面が爆発して大きな水柱を作った。
「え? まだゴーレム・ヴィーゼが居るのに」
ペトラは慌てた。
「大丈夫よゴーレムだから」
もう一度、投げる。
今度は三姉妹もそれに参加した。
至る所でドッカンドッカン。
「ゴーレムは耳は聞こえているけど、それは物理的にじゃないし……内臓も無い。だから爆発の衝撃波は受けないのよ」
アマルティアが心配気なペトラに説明。
自身もM24柄付き手榴弾を手に取る。
「ペトラも手隙なら投げて」
そして、湖に投げ込んだ。
一通りの爆発が止んだ頃。
プカリと浮かんでくるイタチの魔物の背中。
それが次々と幾つもだ。
「結構……居たのね」
マリーは驚いて居た。
「陸にも居るようだから、警戒はよろしくね」
オリジナル・バルタはアマルティアに言った。
ゴーレム兵を森にと、そういう事だ。
「近付かない様だったら無視して良いから」
イタチは群れる獣では無いのだけれど……それでもここらには沢山いるようだ。
湖が条件が良いのだろうか?
「あと、派手に音がしたからか……小動物の気配も感じるわ」
ネズミ?
リス?
ウサギ?
そんな感じの補食される方だ。
それらが逃げ惑っている。
「それは……食べられそう?」
M24柄付き手榴弾からstg44突撃銃に持ち代えたネーヴだった。
「普通の野生っぽい獣だから……食べられるんじゃない?」
ウサギなら美味しい。
でも湖の側だからヌートリアとかだと……どうだろう?
ネズミの大きいヤツだ。
「じゃあ」
姿勢を低くしてキョロキョロと始めた。
「でもさ、もういい加減移動しない?」
イナが提案。
「先に進まないとね」
エノも被せる。
え? って顔に為るネーヴ。
「ゴーレム・ヴィーゼが湖から出てくるまでならいいでしょう?」
「まあ、動く準備も必要ないし」
頷いたオリジナル・バルタ。
テントを広げているわけでもない。
せいぜい魚を焼く為に焚き火に火を着けたくらいだ。
その魚も数匹しか無いので……別段、今でなくても構わない。
おやつ程度の一口か二口の回し食べ程度だ。
今はしまっておこう……とマリーに指示を出す。
と、そこに湖からゴーレム・ヴィーゼが出てきた。
「お? 終わり?」
ネーヴが露骨にガッカリとする。
「もう少し潜っててもよかったのに」
とても小さく呟いた。
「じゃあ揃ったし、移動ね」
ネーヴの呟きも聞こえていたオリジナル・バルタだが、それは無視して宣言した。
誰かの希望をいちいち聞いていたら、一向に進まなくなる。
やりたい事が終わっても、次の誰かが手を上げるのだ。
余裕の有る時でないと、それは聞けない。
「出発!」
その事もわかっているゴーレム・バルタが声を上げた。
そして、返事も聞かずに先頭を進みだした。
いい加減、洞窟を目指さねば……だ。




