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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
220/233

219 洞窟の外


 洞窟の中の泉を週発した一行。

 もう中で2拍を過ごした3日目である。


 「体を洗えてサッパリ出来たけど……何時まで掛かるのかな?」

 ウンザリとした声を上げるアマルティア。

 ロバ車の馭者椅子? 後付けの前を向いたソファーに座っている。


 「ペトラ……どれくらい?」

 後ろでふんぞり返るマリーが向かいに座るペトラに聞いた。

 荷箱の側面に二人掛けのソファーを対面に備え付けて、人専用のロバ車に成っている。


 「そんなの……私に聞かれても」

 困った顔のペトラは呟いた。


 「記憶が無いんじゃ……仕方無いよね」

 アマルティアが助け船を出す。

 ペトラ遺跡でペトラの部屋という場所を探して移動していても、覚えてないんじゃ聞くだけ無駄だ。

 しかし、長い洞窟でもある。

 平均時速と掛けた時間を掛け合わせれば……千キロは優に越えていそうだ。

 マリーがイライラするのもわかる。

 私だって暗い洞窟で3日もだなんて、気が滅入るもの。


 「まあ……いいわ」

 マリーは大きな深呼吸をした。

 自分でもイラついている自覚が有るのだろう。

 「にしても、広いわね……遺跡の地下でしょう? 違うのかな?」

 首を捻って考え込んだ。

 マリーの落ち着けるルーチンに考えるでも有るのだろう。

 まあ、録な答えを導き出さないけどね。

 チラリと後ろに目線を送るアマルティア。

 ゴーレム造りの先生でも有るけど……最近は尊敬できなく成っている気がする。

 無茶苦茶過ぎる。


 「あ! 光が見えた! 出口かも」

 そこに無線から声がした。

 先頭を走るエレン達だ。


 ロバ車には大きな無線は積んでいない。

 聞こえたのは各々が持っている小型の省電力無線からだ。 

 

 「出口だって! アマルティア急いで」

 色めき立ったマリー。

 アマルティアの背中をパンパンと叩いた。


 「だめだよ……洞窟の出口は危ないんだから。待ち伏せされやすいし」


 「誰によ」


 「人は居なくても魔物は居るでしょう?」


 「あいつらにそんな頭はないわよ……きっと」


 「予測で焦って動くと録な事には成らないわよ」

 ビシリと告げたアマルティアだ。

 ほんとマリーは我慢が出来ないのだから。

 まるで子供だ。

 見た目がそうだからだろうか? でも実際は数百年に老婆……あ、老婆だから我が儘に為っているのか。

 人は年を取れば子供に返るって言うもんね……それかな?


 「大丈夫! 出口も問題ない」

 「外は荒野だ……遺跡の外の景色とおんなじ」

 「ちっ……魔物は居ないか、普通のヤツ」

 三姉妹の報告は続く。


 「ほら! 大丈夫だって」

 マリーは前に体を乗り出してアマルティアの肩を叩く。


 「ハイハイ」

 一応は返事を返すのだが……速度はそのまま。

 行軍している隊列を乱してどうする。

 そう言いたい。


 「でも……まだ部屋じゃないんだ」

 ペトラはボソリ。


 「あああ……ほんとだ」

 アマルティアは気のない返事を返した。

 横に顔を出しているマリーが煩すぎ。


 


 「外に出ちゃったのかな?」

 エレンが小首を傾げていた。


 「遺跡の外って事?」

 アンナがそれに返す。


 「この景色じゃあ区別つかないよね」

 ネーヴは苦笑い。


 「でもさ……洞窟って一本道だったよね?」


 「しかも真っ直ぐだった」


 「ならさ……この先のどこかに有るって事?」


 「そうなるよね……ドラゴンのゴーレムがこっちって行ったんだから」


 「うーん探すのは大変そう」

 アンナは首を巡らせる。

 「どう考えても広いよ」


 後ろを指差しているネーヴは。

 「でもさ、後ろは無いって事だよね?」

 洞窟の出口を反対側から見ると、壁だった。

 渓谷と同じ様な岩野壁は真っ直ぐ横に延びている。

 つまりは洞窟はその壁の壁面に有ったのだ。

 「この感じの壁面も……遺跡の外には無かったか」

 

 「見付けられて無いだけかもだけどね」

 エレンも同意した。


 「まあ……どっちにしろ、皆で相談かな?」

 アンナは洞窟から皆が出てくるのを待つ事にしたようだ。



 

 「さて……どうする?」

 洞窟の出口前で集まった皆。

 エレンが代表して、聞いた。


 「クリスティナ……索敵を頼める?」

 オリジナル・バルタはルノーftの砲塔後ろに腰かけて左右を見る。

 「右は……真っ直ぐな壁が続く感じで」

 首を反対に向ける。

 「左も同じ感じ」

 肩を軽く竦めて。

 「どこまで続いているかはわかんないけど」


 「真っ正面と斜め左右を真っ直ぐで良い?」

 クリスティナが聞いてはいるのだが、もう既に鳥達は飛び立った後。

 正面に飛んで行ったのはコノハチャン。

 斜め左右の45度? は、マガモ兄弟だ。


 「じゃあ……私達は昼食でも用意しとく?」

 鳥が飛んで行ったのを見送ったペトラが言った。

 こんな何も無い場所は目標が無いと、迷いそうだ。


 「そうだね、少し早いけどお昼にしようか」

 アマルティアも同意。

 

 「火を着ける程でも無さそうだし……サンドイッチかなにかを注文するけどそれで良い?」

 皆に同意を求めたのはマリーだ。

 いつもの感じで、天性魔方陣での発注だ。


 「サンドイッチか……肉が欲しいな」

 さらに注文を着けたのはネーヴ。

 「ガッツリしたやつ」


 「はいはい……カツサンドね」

 マリーはメモの付け足す。


 「あ! ならフィッシュチップスも」

 オリジナル・ヴィーゼも手を上げる。


 「イモと魚ね」

 カキカキっと。

 そして皆の顔を見回して。

 「他にない?」


 「それで良いよ」

 オリジナル・バルタが閉める。


 頷いたマリーはメモを送った。


 「あ!」

 クリスティナが声を上げる。


 「なに? 今更だよ。もうメモは送ったし」

 少し強めの口調でクリスティナを睨むマリー。


 「ちがうの、魔物を見付けたの」

 真っ直ぐを呼び指したクリスティナ。

 その方向はコノハチャンだ。


 「肉?」

 ネーヴがすかさず確認。


 「虫? みたいな感じかな……でも二本足で歩いてる」

 目を瞑って……眉間にシワを寄せて。

 「アリっぽいよ……黒いし」


 「距離は?」

 オリジナル・バルタが聞いた。

 ネーヴは虫だとわかると興味を失ったようだ。


 「5kmくらいかな?」


 「数は?」


 「ウジャウジャ居る」

 少し唸り。

 「槍みたいな武器も持ってる」


 「知的生命体?」

 アマルティアはマリーに聞いた。


 「さあ?」

 そんなのわから無いとそんな顔で返す。


 「ふーん」

 困った顔のオリジナル・バルタ。

 「ここからなら、ヴェスペ自走砲でドカンドカンとやれば殲滅は可能だけれど……どうする?」

 アマルティアの知的生命体かと聞いた言葉が気になったのだ。

 「敵意の確認が必要かな?」


 「一応はしといた方が良くない?」

 マリーも首を捻っている。

 ハダカデバホブゴブリンは敵意を示したから殲滅はしたけど……他の魔物? はわからない。

 二本足だし、そもそも魔物か?


 「あれ?」

 クリスティナがまた声を上げた。

 

 「今度はなに?」

 「こちらに気付いた?」

 「アリが襲ってくる?」

 バイクに股がり直した三姉妹。


 「ちがうのマガモ兄弟の方……岩の壁が左右に出てきたって」

 

 「こいつ?」

 オリジナル・バルタは洞窟の左右に延びている岩壁を指す。


 「それと同じなんだけど、角度が」


 左右を見て。

 「どっち?」


 「どっちも同じ感じ……鏡に写した見たい。真っ直ぐなの」


 「ふーん……壁に沿って鋭角に戻ってきて見て」

 オリジナル・エルが指示を出した。

 「斜めに飛んだのだから、壁と壁が繋がっているか……それとも切れ目があるのかが知りたい」

 左右でまったく同じってのが気になったようだ。


 「わかった」

 頷いたクリスティナ。


 それを見届けて。

 オリジナル・エルはヴェスペ自走砲の砲弾を差し替える。

 「広いから榴弾に変えとく……一応ね」

 アリと戦闘に成るならだ。


 「あああ……90度だ」

 クリスティナの返事は早かった。

 

 「やっぱり」

 オリジナル・エルも頷いた。


 「やっぱりって何?」

 マリーが聞いた。

 他のみんなも注目。


 「この場所って、たぶん造られた空間なんじゃないかな? 今までの洞窟もおかしかったし」

 

 「空間?」

 マリーは考えて。

 「ダンジョン見たいな感じ?」

 いつもの転生ダンジョンでは無くてだ。


 「ダンジョンかどうかはわかんないけど、洞窟が異状に長かったでしょう? トンネルみたいだったし」

 オリジナル・エルは小首を傾げていた。


 「そうね……たしかに作り物っぽかったわね」

 大きく頷くマリー。

 「ここも、もう既にペトラの部屋だったりして」


 「そうか……部屋って聞いて普通の部屋を想像したけど、死んでから行く所だもんね。普通じゃないかもだね」

 イナとエノも頷いていた。

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