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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
185/233

184 下山

56ポイントだ!

久し振りに上がった!


ポイントは上がると嬉しいよね~。

応援有り難う。


また明日!


 プテラノドンはまだ空を舞っている。

 その数も多い。

 だが、こちらを気にしなく為ったのは有り難い。

 いま、奴等が気にしているのは同胞を啄んでいる始祖鳥と……その同胞の肉だ。


 「うわ! 凄いね」

 崖下を気にしていたパトの、服の裾を引っ張るクリスティナ。

 そして、パトが自分を見たのを確認して、前の上を指差した。

 「あれ……見て」


 「ん?」

 パトはニコニコとしているクリスティナを見て。

 指差す手を見て。

 上を見た。


 白い靄が丸く大きく広がっている。

 その中心……水?

 上から落ちてきている水が途中で霧散している様だ。

 あのトンネルから出た水だろう。

 それが高さでか、空気に壁でだかで小さく雨粒の様に成ってそれが広がっている。

 

 「滝の様だな……でも、水はあんな風に成るのか?」

 たしかに凄い光景だが、疑問が勝ったパトは首を捻った。

 「滝なんてそのまま真っ直ぐに落ちるもんだろう?」

 

 「でもさ……途中で雨に成ってるよ」

 差す指を動かして。

 「雲にも成ってる」


 「それだけ高い位置から落ちているって事か……気圧の都合?」


 「こっち側は砂漠だったしじゃないの?……途中で大雨だったけど」


 「大雨なら乾燥しているわけでも無さそうか」

 ふーん……唸るパト。

 「わからんな」


 「いいじゃん」

 肩を竦めて。

 「ここはこうなのでも良いと思う」

 パトを見て。

 「チョッと不思議な方が楽しいじゃん」


 「まあ……そうだな」

 パトも笑って。

 「クリスティナはヴィーゼに似てきたな」


 驚いた顔のクリスティナ。

 そして、すぐに膨れっ面に成った。

 「そんなことは無い!」

 力強い否定だ。

 



 そのヴィーゼはルノーftの運転席の上のハッチを開けて、口をパッカリと開いて真上を見ていた……オリジナルの方だ。

 

 「濡れるよ」

 後ろからオリジナル・バルタの声。

 「閉めてよ」


 「大丈夫でしょう? 砲塔の方まで雨はいかないよ」


 「湿気が凄いのよ」

 鼻をヒクヒクとさせて。

 「顔がムズムズする」


 「でも……凄いね」

 ヴィーゼはバルタの訴えを無視して続けた。

 「滝の下を潜るってさ……はじめての経験だ」


 「あああ……ハイハイ初めてだね」

 バルタは盛んに顔を拭い。

 ヴィーゼの事は諦めた様だ。

 まあ……楽しげにしているのを見ているのも、それも楽しい。

 濡れるのは嫌だけど。

 微妙な葛藤が見てとれる。


 「ねえ……滝だったらさ。魚とか落ちて来ないかな?」


 「上の湖に魚って居た?」


 少し考える素振りのあと。

 「居なかった」

 

 「ならさ……落ちて来ないんじゃない?」


 「そうだろうけど……うーん」

 チラリと後ろを振り返る。

 

 「何よ」

 

 「バルタはさ……夢がないと思う」


 それを言われてムッとしたバルタは。

 「早く閉めなさい」

 少し強めに発した。



 

 滝を越えて随分と経ち、壁面の傾斜も緩く成っている。

 もう上に被さる屋根の様な土は半分しかない。

 そう成るとモグラゴーレムの掘るスピードもまた一段、上がった。

 

 そして、下もハッキリと見えてくる。

 今までも見えては居たのだが、多少の靄でボンヤリだったのがなく為ったのだ。

 

 山の裾の広がり。

 まだまだ急斜面だが、もう壁では無い。

 足を踏み外すと落ちるから転がるに変わった感じだ。

 それが反比例的にマダマダ緩やかに為っていく。

 もう少し降りれば、天井も完全に無くなりそうだった。


 そして、もう1つ見えた。

 降りきった所に在る大きな泥の水溜まり。

 サイズは湖だが、泥水でしかも浅い……そして、水が有るのは今だけなのだからヤッパリ水溜まりだ。

 そう、これはあのデッカイ肺魚が居た場所だ。

 真ん中に見える真っ直ぐな筋は……道路。

 子供達が通った道だった。


 「このまま進んで高台に行く?」

 ペトラは誰とは無しに聞いた。

 無線でパトに聞かなかったのは、その先に見える道を経験していないからだ。

 

 「そうね……その方が楽かもね」

 答えたのはマリー。

 「道にさえ出てしまえば後は楽だし」


 「グルグル巻きにの肺漁の所ね」

 アマルティアも頷いた。


 「そこに出れるかはわかんないけど……まあ、真っ直ぐに向かわせるよ」

 ペトラも頷いてモグラゴーレムに指示を出す。

 

 

 それから丸二日を掛けて、やっとこさに高台の道路に出た。

 斜面が緩くなってモグラゴーレムの進むスピードも早くは為っていても、流石に距離が有ったのだ。

 そして、斜面が緩くなる程……標高が下がる程に暑く成る。

 こちら側は雨季が終わって、完全に夏に成っていた。

 太陽はギラギラと容赦無く照りつける。

 元はガレ場の砂漠なので本来の姿だ。

 

 「いったん……休憩にしよう」

 パトは汗を拭いながら車列を止めた。

 

 「どれくらい休む?」

 聞いて来たのはゴーレム・ヴィーゼ。

 「明日の朝まで休む積もりなら……魚を捕って来るけど?」

 

 「デッカイのが居るのよ」

 ゴーレム・エルも泥水の池の方を指差した。


 「ふむ……腹の足しには成るか」

 回りを確認したパト。

 「この人数ではオヤツ程度だろうけどな」

 

 「わかった行ってくる」

 ゴーレム娘達三人はクモゴーレムで走り去る。


 「元気よね」

 クリスティナはバテ気味で唸っていた。

 「体がゴーレムなのは羨ましいわ」




 暫く後。

 パトの無線に連絡が来た。

 「パト……テントとか張ってる?」


 「いや……まだだ」

 みんなは完全に暑さにやられて、少しでも涼しい所を探してヘタリ込んでいたのだ。

 

 「じゃあ……チョッとだけ移動出来ない? 泥の湖の横に迄とか」


 「何でだ?」


 「魚を採りすぎちゃって……運べそうも無いの」


 「そうか……」

 少し考えたパト。

 皆を見て。

 空を見た。

 太陽はまだ高い位置に在る。

 「水辺の方がまだ……涼しいか」

 よし! と、立ち上がり。

 「みんな少しだけ移動だ!」

 大きく声を張り上げた。


 


 移動は一時間も掛からなかった。

 平らな高台から、緩い斜面で……泥の水面。

 その水際にゴーレム娘達と大漁の魚。

 その魚も一匹がやたらとデカイ。

 それを見た獣人達も大喜びだ。

 

 「魚の切り身のステーキが食えるぞ!」

 「もう水っぽいスープは飽きた!」

 口々に叫んで、ゴーレム娘達の元へと走っていった。


 「捌くのは適当にやってね」

 ゴーレム・ヴィーゼもニコニコと叫んでいる。

 「足りないなら、また採ってくるから」

 泥の湖を指差していた。


 そして、宴会が始まった。

 

 「オーイ……こいつも焼け」

 何処からか捕まえて来たプテラノドンを引きずる獣人のグループ。

 

 それを見た別の獣人の男達も。

 「俺達も行こう!」

 銃を手に狩りに出掛ける。

 

 獣人の女達は料理だ。

 マリーに出して貰った蒔きと、火の魔石に直接火を着けての即席コンロ。

 風避けはそこらに転がっている岩を組んだだけ。

 鍋や鉄板は適当に拾った鉱石をマンセルとローザが造った。

 どうも鉄鉱石が普通にゴロゴロと転がっているらしい。

 乾いた土が茶色っぽいのはその為らしかった。

 もちろんそれでも足りない分はマリーだ。


 そして、飲み水もマリー。

 なんやかやとマリーの転送魔方陣の風呂敷が大活躍。

 その風呂敷の向こうの人は……たぶん大忙しだろうけど。

 見えないとそんな事も気にならなく成るようだ。

 

 「なあ……酒を頼んでもいいか?」

 そんなマリーに近付いたのはマンセル。

 その手にはダンジョン産の酒瓶が握られている。

 ウイスキーだろうか?

 「もうこれで最後なんだ」


 「戦車に大量に積み込んでなかった?」

 横から口を挟んで来たのはローザ。


 「もう無いよ……」

 目線を伏せる。


 「そうなの?」

 ヤレヤレと首を振って笑うローザ。


 「まあ……いいけど」

 マリーはメモを風呂敷に投げた。

 そして、クスリと笑う。


 「なんだよ」

 それが気になったマンセルはポツリ。


 「いえ……ローザって名前に覚えが有ってね」

 クスクスと笑っているマリー。

 すぐに酒が送り返されてきた。

 そしてメモも。

 「やっぱり……ローザって商業ギルドの元会長の娘の名前よね?」


 ウッっと言葉を詰まらせたマンセル。

 ローザは興味を持ったのかナニナニ? っと聞いてくる。


 「あんたのローザって名前は、マンセルの初恋の人の名前なんだってさ」

 メモをヒラヒラさせたマリーだった。

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