184 下山
56ポイントだ!
久し振りに上がった!
ポイントは上がると嬉しいよね~。
応援有り難う。
また明日!
プテラノドンはまだ空を舞っている。
その数も多い。
だが、こちらを気にしなく為ったのは有り難い。
いま、奴等が気にしているのは同胞を啄んでいる始祖鳥と……その同胞の肉だ。
「うわ! 凄いね」
崖下を気にしていたパトの、服の裾を引っ張るクリスティナ。
そして、パトが自分を見たのを確認して、前の上を指差した。
「あれ……見て」
「ん?」
パトはニコニコとしているクリスティナを見て。
指差す手を見て。
上を見た。
白い靄が丸く大きく広がっている。
その中心……水?
上から落ちてきている水が途中で霧散している様だ。
あのトンネルから出た水だろう。
それが高さでか、空気に壁でだかで小さく雨粒の様に成ってそれが広がっている。
「滝の様だな……でも、水はあんな風に成るのか?」
たしかに凄い光景だが、疑問が勝ったパトは首を捻った。
「滝なんてそのまま真っ直ぐに落ちるもんだろう?」
「でもさ……途中で雨に成ってるよ」
差す指を動かして。
「雲にも成ってる」
「それだけ高い位置から落ちているって事か……気圧の都合?」
「こっち側は砂漠だったしじゃないの?……途中で大雨だったけど」
「大雨なら乾燥しているわけでも無さそうか」
ふーん……唸るパト。
「わからんな」
「いいじゃん」
肩を竦めて。
「ここはこうなのでも良いと思う」
パトを見て。
「チョッと不思議な方が楽しいじゃん」
「まあ……そうだな」
パトも笑って。
「クリスティナはヴィーゼに似てきたな」
驚いた顔のクリスティナ。
そして、すぐに膨れっ面に成った。
「そんなことは無い!」
力強い否定だ。
そのヴィーゼはルノーftの運転席の上のハッチを開けて、口をパッカリと開いて真上を見ていた……オリジナルの方だ。
「濡れるよ」
後ろからオリジナル・バルタの声。
「閉めてよ」
「大丈夫でしょう? 砲塔の方まで雨はいかないよ」
「湿気が凄いのよ」
鼻をヒクヒクとさせて。
「顔がムズムズする」
「でも……凄いね」
ヴィーゼはバルタの訴えを無視して続けた。
「滝の下を潜るってさ……はじめての経験だ」
「あああ……ハイハイ初めてだね」
バルタは盛んに顔を拭い。
ヴィーゼの事は諦めた様だ。
まあ……楽しげにしているのを見ているのも、それも楽しい。
濡れるのは嫌だけど。
微妙な葛藤が見てとれる。
「ねえ……滝だったらさ。魚とか落ちて来ないかな?」
「上の湖に魚って居た?」
少し考える素振りのあと。
「居なかった」
「ならさ……落ちて来ないんじゃない?」
「そうだろうけど……うーん」
チラリと後ろを振り返る。
「何よ」
「バルタはさ……夢がないと思う」
それを言われてムッとしたバルタは。
「早く閉めなさい」
少し強めに発した。
滝を越えて随分と経ち、壁面の傾斜も緩く成っている。
もう上に被さる屋根の様な土は半分しかない。
そう成るとモグラゴーレムの掘るスピードもまた一段、上がった。
そして、下もハッキリと見えてくる。
今までも見えては居たのだが、多少の靄でボンヤリだったのがなく為ったのだ。
山の裾の広がり。
まだまだ急斜面だが、もう壁では無い。
足を踏み外すと落ちるから転がるに変わった感じだ。
それが反比例的にマダマダ緩やかに為っていく。
もう少し降りれば、天井も完全に無くなりそうだった。
そして、もう1つ見えた。
降りきった所に在る大きな泥の水溜まり。
サイズは湖だが、泥水でしかも浅い……そして、水が有るのは今だけなのだからヤッパリ水溜まりだ。
そう、これはあのデッカイ肺魚が居た場所だ。
真ん中に見える真っ直ぐな筋は……道路。
子供達が通った道だった。
「このまま進んで高台に行く?」
ペトラは誰とは無しに聞いた。
無線でパトに聞かなかったのは、その先に見える道を経験していないからだ。
「そうね……その方が楽かもね」
答えたのはマリー。
「道にさえ出てしまえば後は楽だし」
「グルグル巻きにの肺漁の所ね」
アマルティアも頷いた。
「そこに出れるかはわかんないけど……まあ、真っ直ぐに向かわせるよ」
ペトラも頷いてモグラゴーレムに指示を出す。
それから丸二日を掛けて、やっとこさに高台の道路に出た。
斜面が緩くなってモグラゴーレムの進むスピードも早くは為っていても、流石に距離が有ったのだ。
そして、斜面が緩くなる程……標高が下がる程に暑く成る。
こちら側は雨季が終わって、完全に夏に成っていた。
太陽はギラギラと容赦無く照りつける。
元はガレ場の砂漠なので本来の姿だ。
「いったん……休憩にしよう」
パトは汗を拭いながら車列を止めた。
「どれくらい休む?」
聞いて来たのはゴーレム・ヴィーゼ。
「明日の朝まで休む積もりなら……魚を捕って来るけど?」
「デッカイのが居るのよ」
ゴーレム・エルも泥水の池の方を指差した。
「ふむ……腹の足しには成るか」
回りを確認したパト。
「この人数ではオヤツ程度だろうけどな」
「わかった行ってくる」
ゴーレム娘達三人はクモゴーレムで走り去る。
「元気よね」
クリスティナはバテ気味で唸っていた。
「体がゴーレムなのは羨ましいわ」
暫く後。
パトの無線に連絡が来た。
「パト……テントとか張ってる?」
「いや……まだだ」
みんなは完全に暑さにやられて、少しでも涼しい所を探してヘタリ込んでいたのだ。
「じゃあ……チョッとだけ移動出来ない? 泥の湖の横に迄とか」
「何でだ?」
「魚を採りすぎちゃって……運べそうも無いの」
「そうか……」
少し考えたパト。
皆を見て。
空を見た。
太陽はまだ高い位置に在る。
「水辺の方がまだ……涼しいか」
よし! と、立ち上がり。
「みんな少しだけ移動だ!」
大きく声を張り上げた。
移動は一時間も掛からなかった。
平らな高台から、緩い斜面で……泥の水面。
その水際にゴーレム娘達と大漁の魚。
その魚も一匹がやたらとデカイ。
それを見た獣人達も大喜びだ。
「魚の切り身のステーキが食えるぞ!」
「もう水っぽいスープは飽きた!」
口々に叫んで、ゴーレム娘達の元へと走っていった。
「捌くのは適当にやってね」
ゴーレム・ヴィーゼもニコニコと叫んでいる。
「足りないなら、また採ってくるから」
泥の湖を指差していた。
そして、宴会が始まった。
「オーイ……こいつも焼け」
何処からか捕まえて来たプテラノドンを引きずる獣人のグループ。
それを見た別の獣人の男達も。
「俺達も行こう!」
銃を手に狩りに出掛ける。
獣人の女達は料理だ。
マリーに出して貰った蒔きと、火の魔石に直接火を着けての即席コンロ。
風避けはそこらに転がっている岩を組んだだけ。
鍋や鉄板は適当に拾った鉱石をマンセルとローザが造った。
どうも鉄鉱石が普通にゴロゴロと転がっているらしい。
乾いた土が茶色っぽいのはその為らしかった。
もちろんそれでも足りない分はマリーだ。
そして、飲み水もマリー。
なんやかやとマリーの転送魔方陣の風呂敷が大活躍。
その風呂敷の向こうの人は……たぶん大忙しだろうけど。
見えないとそんな事も気にならなく成るようだ。
「なあ……酒を頼んでもいいか?」
そんなマリーに近付いたのはマンセル。
その手にはダンジョン産の酒瓶が握られている。
ウイスキーだろうか?
「もうこれで最後なんだ」
「戦車に大量に積み込んでなかった?」
横から口を挟んで来たのはローザ。
「もう無いよ……」
目線を伏せる。
「そうなの?」
ヤレヤレと首を振って笑うローザ。
「まあ……いいけど」
マリーはメモを風呂敷に投げた。
そして、クスリと笑う。
「なんだよ」
それが気になったマンセルはポツリ。
「いえ……ローザって名前に覚えが有ってね」
クスクスと笑っているマリー。
すぐに酒が送り返されてきた。
そしてメモも。
「やっぱり……ローザって商業ギルドの元会長の娘の名前よね?」
ウッっと言葉を詰まらせたマンセル。
ローザは興味を持ったのかナニナニ? っと聞いてくる。
「あんたのローザって名前は、マンセルの初恋の人の名前なんだってさ」
メモをヒラヒラさせたマリーだった。




